パナソニック自らのデジタルトランスフォーメーションを推進
さらに、パナソニックは、Blue Yonderが持つAIやMLの最新技術や、サプライチェーンのパッケージソフトウェアビジネス、リカーリングビジネスのノウハウを獲得して、自社のサプライチェーンにおけるオペレーション力強化を図るとともに、アジャイルな企業文化を取り入れることで、自社のトランスフォーメーションを加速しくことも狙う。
楠見CEOは、「今回の投資には、パナソニック自らのデジタルトランスフォーメーションを推進することで、現場力、オペレーション力を強化する狙いもある。経営スピードの向上にも貢献するだろう。グループ全体の競争力強化に向けた有効な手段として徹底的に活用したい」と語る。
樋口社長も、「Blue Yonderは近代的な経営をしており、働き方、ダイバーシティ、コンプライアンスなども学ぶことができる」と異口同音に語る。
リカーリング型ビジネスの定着へ
71億ドルという巨額な買収金額をかけて、パナソニックがBlue Yonderを買収する狙いはどこにあるのか。
ひとつは、サプライチェーンの上流から下流まで、全体をカバーするユニークな特徴を生かしたビジネスが展開できるという点だ。Blue Yonderは、業界をまたいで提供可能な豊富なソフトウェア群に加えて、AIやML(機械学習)といった機能を取り入れた需要予測ソリューションを持つ。これに、パナソニックが製造現場で培ってきたモノづくりのノウハウや、センシング技術やAIを組み合わせた現場を最適化する現場プロセスイノベーションを組み合わせることで、これまでにないサプライチェーンソリューションを提供できるようになる。
また、Blue Yonderは、各業界における主要顧客と緊密な関係を築いており、それをもとにした改善を行うなど、顧客基盤の強さが、商品、サービスの強さに直結しているのも魅力だ。
「日本では、サプライチェーンパッケージソフトウェアの導入はこれからであり、そこには、パナソニックのフットプリントも生かせる」(樋口社長)という狙いもある。
2つめは、強固なリカーリングビジネスを得られることだ。
Blue Yonderのリカーリング比率は67%に達しており、今後もこれを引き上げる計画だ。
樋口社長は、「サプライチェーンというミッションクリティカルな領域では、一度導入されたシステムは、代替されにくく、参入障壁を築くことができる。リカーリングにより、安定的で、高収益を得るビジネスを展開できる」と語るほか、「リカーリングビジネスの仕組みをパナソニックのなかに取り込みたい」とする。
ソニーが過去最高益を更新し続けているのは、リカーリング型ビジネスの定着が見逃せない。事業領域は異なるが、パナソニックの今後の成長において、ソニーと同じように、リカーリング型ビジネスの仕組み広げるきっかけになることが期待される。
パナソニックは、Blue Yonderの全株式取得によって、サプライチェーンマネジメント分野において、先進技術を活用したソリューションビジネスが可能になるほか、強固な顧客基盤を築くことができるとともに、リカーリング型ビジネスの手法を取り入れ、経営体質を改善。さらに、パナソニック自らの体質改革や、デジタル変革のドライバーにも位置づけようとしている。
その成果は長期的視点で見なくてはいけないだろう。「世界のサプライチェーンに革命を起こす」(楠見CEO)という、パナソニックの新たな挑戦が始まった。
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