いざ、動作確認へ!
ソケットに入るかどうかが最初のハードル
横から見てもピンのズレがほとんどなくなったら、修正作業は終了だ。ソケットにそっと載せ、ピンが入っていくか確認しよう。
新品のように素直に入っていかないことがほとんどなので、真っすぐだけでなく、少し傾けた状態で挿す、左右に軽く動かすといったことを試してみるのもアリだ。
どうやっても入らない場合は、ピンの傾きを再度チェックすること。ここで焦って押し込もうとすると、せっかく戻したピンが再び曲がってしまう危険があるからだ。
ソケットに無理なく入ることが確認できたら、CPUクーラーを装着して最小限の構成で動作確認へ。無事に起動したら、CPUのピン曲がり修正は完了だ。
修復に失敗してピンが折れてしまった……
しかし、一縷の望みがないわけではない
金属にはある程度の延性や展性があり、多少曲げたくらいでは折れたりしない。しかし、何度も曲げ伸ばしを繰り返した場合はいわゆる金属疲労が起こり、ついには折れてしまう。
次の写真は、今回修正したCPUとは別のもので、Ryzen 9 5950Xより前に持ち込まれたもの。この時は曲がったピンを直そうと、何人かでいじくったそうだ。
ペンの先や尖ったものでつつき、なんとか戻したという話だったのだが……。
実体顕微鏡を使って観察したところ、ペンでつついたときについた汚れか、曲がったピンが黒く汚れていた。また、よく見るとピンが真っすぐになっているわけではなく、根元が曲がったまま先端だけが上を向いている状態となっていた。
この角度からではわかりづらいが、もう少し斜めから見ると根元が怪しく浮いており、首の皮1枚で繋がっているような状態だった。そのためピンセットで押したところグラグラと動き、ポロっと取れてしまった。
基本的に、ピンが折れてしまうとCPUは動かない。ただし、ピンによっては動くこともある。
これは、電源やGNDなどに多くのピンが割かれていることによる。折れたピンが代替のきかない重要な信号ではなく、こういった複数あるピンの1つだった場合、動作する可能性があるわけだ。ピンが折れてしまった時でも、念のため、動作確認してみるというのは悪くないだろう。
ただし、マザーボードやメモリーなど周辺のパーツを壊してしまうリスクもゼロではないので、それ相応の覚悟をした上での動作確認となる。
また、意味なくピンが複数使われているわけではないため、たとえ動いたとしても、高負荷で落ちる、マザーボードによっては動かないなど、動作が不安定になる可能性は否定できない。運良く動いた場合はストレステストなどを実行し、安定動作するかしっかり確認しておきたい。
ちなみに、CPUのピンが折れそうになっているときは、絶対にソケットに挿さないこと。最悪ソケット内でピンが折れ、抜けなくなってしまうからだ。こうなるとマザーボードまで交換しなくてはならなくなる。
曲がったピンの修正は自己責任で!
今回、ピンの曲がりがかなり急だったこともあり、折れてしまわないか心配していたのだが、何とか最後までもってくれた。一応修正できたとはいえ、ピンの根元は弱っているはずなので、可能な限りCPUの着脱は控えた方が賢明だろう。
ピンの修正は自己責任となるものの、諦めて買い替える前に試してみる価値はある。この記事が、そんなチャレンジの一助となってくれれば幸いだ。
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