最新の「倒産確率」は15%まで低下
星野リゾートといえば、2020年5月に星野 佳路氏が「38.5%」という倒産確率を発表して、世間を賑わせた。この数字は財務状況や、宿泊施設の予約数から導き出したもの。経営状況を明らかにすることで、社員ひとりひとりが経営に対してコミットし、倒産確率を下げる方法を考えて動く状況を作る=企業としての力を向上させることを狙っている。
記者会見の終盤には代表取締役社長の星野 佳路氏が登壇し、この倒産確率にも触れた。同氏によれば、2020年5月に38.5%だった倒産確率は、2021年4月には15%まで低下したという。
この理由として、星野 佳路氏は「経営状態を透明性を持って社員に伝えたことで、現場のスタッフが倒産確率を下げようとする動きを見せた」と語ったほか、いくつかの要因を話した。そのうちのひとつは、経営に優先事項を設定し、中でも「現金を掴んで離さない」を最優先とした戦略をとってきたことだという。
「この1年で、私たちは感染の拡大には波があるということを発見した。波と波のあいだ(新規感染者数が落ち着いている状態)に、需要をしっかりと取り込むことで、売り上げを確保するという作戦をとった」(星野 佳路氏)
もうひとつは、厚生労働省による「雇用調整助成金」の影響だ。星野 佳路氏は「私たちは、雇用調整助成金を単なる助成金ではなく、経営を考える上での資金に加味した。雇用調整助成金によって、(人件費による)固定費が変動費に変化した。損益分岐点を下げることができ、新たな損益分岐点に向かったマーケティング戦略が立てられるようになった」と話した。
そして、英国などではワクチンの普及により、旅行需要が拡大していることにも触れた。
「第3波、第4波は、私が想定したいた以上に長引いているが、ワクチンの普及が進んでいる英国などでは、旅行需要が回復し、先々までの旅行の予約が入り始めている。ワクチンの接種が、今年のキーになると考えている」(星野 佳路氏)
このほかにも星野 佳路氏は、コロナ禍の中で、地域別の特設サイトを作成した上で、地域に根ざしたメディアに積極的に出稿し、マイクロツーリズム(自宅から1〜2時間程度の距離で行ける観光地を対象とした小旅行)の需要を取り込めたことについても触れた。
新型コロナウイルス感染拡大の第4波が深刻な状況になりつつあるのは、私たちが日々ニュースで目にしている通りだ。しかし星野 佳路氏は「2021年にはインバウンド需要の回復は限定的になるが、2022年には、なんとか50%まで持っていき、2023年は、100%に戻すことに挑戦できる年になると期待している。そのためには、ちょうどいま、準備をはじめるための大事な時期に差し掛かっていると考えている」とも話す。
観光業界にとっても依然として厳しい状況が続くが、星野 佳路氏は過去にも巨額の負債を抱えて経営破綻した大型リゾートや宿泊施設の再生を手掛けてきた人物だ。今回の記者会見で発表されたOMOブランドホテルの急速な拡大や、新宿泊施設の開業計画にも、コロナ禍を逆手に取り、将来的な旅行需要の回復を見据えた攻めの姿勢がうかがえる。
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