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既存のSIerに頼らず作った巨大キャンパスネットワーク構築の舞台裏

AS運用やWiFi構築まで徹底的に内製化したところざわサクラタウンのネットワーク

2021年09月03日 09時00分更新

苦労したのはまだ見ぬネットワークの要件定義 最後までチューニング

 今回苦労したのはKADOKAWA側との要件のすりあわせだった。民間企業が構築する大型複合施設のネットワークということで、具体的な要件をつかみきれなかったKADOKAWA Connectedは、とにかくKADOKAWA側が想定したユースケースからスペックを積み上げ、ネットワークを設計した。動画配信も4Kや8Kを前提にしたら、インターネット側への帯域も10Gbpsは必要。eスポーツでの利用や配信を考えると、遅延も5ミリ秒を切らなければならない。こうして積み上げていったスペックをKADOKAWAのリクエストに応じて時間をかけて調整していったという。

 その結果、基本的なネットワーク設計は2019年1月に出したものの、KADOKAWA側との調整は何度も続き、実はオープン直前まで行なっていた。要件ヒアリングと詳細設計、そして工事業者への指示出しや作業のクオリティチェックまでKADOKAWA Connectedが担当した。

 当然、納期にも影響があったが、設計工程においては、既存のデータセンターやオフィスネットワークの構築ノウハウを横展開したため、工数を大幅に短縮できた。KADOKAWA Connectedの簗瀬慶一氏は、「7割くらいまで基本設計で進め、残りは現地でブラッシュアップしました。得意なメンバーによって、フロアスイッチに関しては、徹底的にコンフィグの自動化をはかることができました」とコメントする。

KADOKAWA Connected Infra Architect部 簗瀬慶一氏

 最後までチューニングを重ねた新ネットワークは2020年4月に無事完成。IP電話や決済用端末と無線LANの相性問題はあったものの、性能やコストは申し分ない仕上がりになった。「とにかく納期に間に合ってよかった」と簗瀬氏はコメント。東松氏も、「やはりASから含めて一気通貫でできたことはよかったし、その労力に見合う結果も戻ってきている。いったんつながってしまえば、遅いと言われたことはないですね」と振り返る。神武氏も、「オフィスネットワークの設計や組み上げをゼロから関われたのは本当に面白かったです」と振り返る。

 コストに関しては具体的に言えないものの、「SIerに発注するのに比べて、ざっくり1/10と言っても問題ないと思います」(東松氏)とのこと。KADOKAWA Connectedとしてはところざわサクラタウンで標準化したものをグループ全体に拡げていき、外販化まで視野に入れていくという。コロナ渦において、オフィスの再定義が進む中、こうした新しいインフラの構築需要にマッチしていくかもしれない。

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