週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

アニメの門DUO「IMART実行委員会共同代表・土居伸彰氏インタビュー」

マンガとアニメの知恵が合体する「IMART」という祭

2021年04月17日 18時00分更新

IMARTに込める思いとは

まつもと 最後に、土居さんはIMARTという枠組みにどういったことを望んでいるのかお聞かせいただけますか?

土居 原点は、とりわけアニメーション界においてプロデューサー的な視点というものが、かなり不足してきていると感じたことです。

まつもと それは、商業アニメもインディペンデントアニメもですか?

土居 どちらもです。僕が所属しているインディペンデントの分野で言うと、やはり作り手ばかりがいる状況のなかで、クリエイターの才能をいかに紹介していくのか、そして産業につなげていくのか、という観点が抜けているところがありました。逆に商業分野の方々と話していくなかでも、ある種自然発生的に出来上がっていく産業としか捉えていない姿が見えてきました。

まつもと 「自然発生的」というのは?

土居 たとえば日本では、マンガとアニメは産業として当たり前のように成立していますが、海外では公的に助成の対象になるようなものであって、自然に発生する「産業」として成立するような国はほとんどありません。

まつもと その点では日本が異常ですよね。

土居 自然発生可能であること自体は良いことだと思うのですが、一方で人口も減っていて経済的にも尻すぼみになりつつある日本で、このままでいいのか? という疑問が生まれました。

 お金の回り方も考え直さなきゃいけないと思いますし、そのためには海外のお金の回り方を学ぶべきでしょう。また、NetflixやCrunchyrollのようなアニメの作り方が定番化していくなかで、どうやって企画を進めていくかと言うことはもっと全世界的視点で考えるべきでしょう。

 これはアニメに限らずマンガについても同様だと思います。これまで惰性的に作り上げられてきた業界の慣習に乗っかっていくだけではもうどうにもならなくなってくる時代が来ていると思っています。

 IMARTのようなイベントが重要なのは、こういう時代に、それぞれの分野のなかで感じられる「行き詰まり感」のようななものを打破する活動をする人たちが集まることです。これによってそういう人たちが集まってこれから何か新しい動きを作れるようになってほしい、何か新しいことが起こってほしい、と思っているのです。

 インディペンデント分野で活動している僕からすると、僕と一緒にやっている人たちはちゃんとお金を稼げていますよ、というような話をもっと知らしめていきたいとも思っています。それこそ新海誠さんは個人作家から始めて成功した人ですし、今だったら『PUIPUIモルカー』がめちゃめちゃ話題になっていますよね。あれは、見里朝希くんという芸大出身の個人作家が、非常にとんがった、けれども刺さるコンテンツの作成に成功した例です。

まつもと 商業という枠組みのなかでも、かつての『ポプテピピック』のような、ムーブメントを起こして産業として確立するような動きが一歩進んだのかもしれませんね。

土居 そうですね。

まつもと 今回も「個人作家のキャリアデザイン2」というセッションがありますね。土居さんがモデレーターとなって、アニメーション作家の山村浩二さんや、プロデューサーの岡本美津子さんが登壇されます。

 お二人ともなかなかこういったイベントに登壇する方々ではないので贅沢ですよね。こういったインディペンデントの作家が、いわゆるメジャーどんなふうに接点/交点を作っていけばいいのか……という話が展開されるのでは。

土居 そうですね、はい。

まつもと 非常に楽しみにしたいと思いました。そして、実行委員長として土居さんが非常に力を込めていらっしゃるということも良く伝わってきました。ありがとうございます。

土居 それでは皆さん、IMARTでお会いしましょう。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この連載の記事