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経済産業省「Startup Factory構築事業」

量産から社会実装へ ハードウェア開発の壁を突き破る「Startup Factory構築事業」

2021年03月17日 18時00分更新

 スタートアップが独自のハードウェア開発、量産化など立ちふさがる壁を乗り越えるために、経済産業省が押し進める支援事業が「Startup Factory構築事業」だ。ハードウェアスタートアップを応援するASCII STARTUPも本誌でこれまで、何度かにわたり、その取り組みの内容を掲載してきた。改めて支援の内容、また近況に触れていきたい。

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プロダクト量産の支援拠点「Startup Factory」

 モノづくり、ハードウェア産業以外にもあらゆる分野でAIやXR、IoT機器などの導入が進み、いわゆるX-TECHが注目されている。IoTはもちろん、あらゆるものにAIが組み込まれるようになったことから、これまでソフトウェア開発をメインとしていた会社がハードウェアを手掛けるケースが出てきた。

 しかし、これまでのスタートアップのエコシステムは、ソフトウェア系が中心で、ハードウェア系スタートアップを支援する取り組みは比較的少ないのが現状。ハードウェアを製品化して社会実装するには、試作や実験を繰り返すための資金力や、量産のノウハウが必要でスタートアップにはハードルが高い。また、試作機の製作や量産には、外部の工場を頼ることになるが、中小の製造事業者のほとんどは大企業からの受託加工が中心のため、新規や小ロットの注文は受け付けていないなど連携が難しかった。

 「Startup Factory構築事業」は、スタートアップと全国の設計・製造事業者をつなぎ、設計・試作、量産、市場投入までの支援拠点を構築する取り組みだ。 Startup Factory構築事業のサイトからは、全国の支援事業者(Startup Factory)をステージやテクノロジー別に検索して、自社に合ったパートナーが探せる。また、事業者との交渉・契約時に役立つ「ものづくりスタートアップのための契約書ガイドライン」および「契約書フォーマット」や、ものづくりスタートアップの事業化に向けたポイントをまとめた「連携ケーススタディ」など、役立つ情報が公開されているので、ぜひチェックしてみよう。

DX促進に向けて、ソフトとハードの融合スタートアップを支援

 繰り返しになるがハードウェアの製作は製造設備などの場所や材料などのコストがかかる。また、ソフトウェアは不具合が起きてもアップデートで対処できるが、ハードウェアの故障は大きな事故につながる可能性があるため、段階的に何度も試作とテストを繰り返さなくてはならない。時間と資金の少ないベンチャーにとってハードウェア製作はハードルが高く、世界的に見ても成功事例は少ない。

 そんなスタートアップのハードウェア開発を支援する政府の取り組みが始まったの2018年度のこと、スタートアップを支援する工場など支援機関を集めたStartup Factoryを構築した。翌年の2019年度からは、ハードウェアスタートアップの成功事例をつくるため、「グローバル・スタートアップ・エコシステム強化事業費補助金(ものづくりスタートアップ・エコシステム構築事業)」を実施。製造業者と連携してものづくりに取り組むAI・IoTスタートアップを公募し、平成31年度は8事業者、令和2年度は9事業者を支援。社会実装するための量産化設計や実証実験費用などの一部を補助するものだが、単に採択企業に対して補助金を出すだけではなく、実証実験などを行なう過程を追跡調査し、課題やノウハウを抽出してハードベンチャーのモデルケースとしてほかのプレーヤーに展開していく活動を続けている。 

製品開発・量産から、社会実装のステージへ

 当初の2年間は、事業者と連携した設計・開発と量産化といった課題にフォーカス。採択スタートアップなどからの調査をもとに作成されたのが、製造事業者との連携時に起こりやすいトラブルや、量産化のノウハウをまとめた「連携ケーススタディ集」と、協業をスムーズに進めるための「契約ガイドライン」だ。

 しかし、製品が完成し、量産化の目途が立っても、すぐに販売、とはならないのがハードの難しさだ。社会実装へ向けた、実証実験を行なうための自治体との交渉、行間団体とのルールのすり合わせ、販路の開拓といった、また別のプレーヤーとの連携が必要になる。

 2021年度の事業では、社会実装を目指した「社会実装ガイドライン」を作成。これまでの採択事業者からヒアリングした事例を掲載している。また、別冊として「エコシステムの実現に向けた連携のポイント」を作成。スタートアップや共創パートナーへのインタビューをもとに、ファイナンス、ルール作り、知財戦略など、理想的なエコシステムの実現に向けたポイントを紹介している。

 今はものづくりをしていないAI系スタートアップやソフトエンジニアも、世の中のデジタル活用が進むにつれて、ハード開発に迫られるときがくるかもしれない。転ばぬ先の杖として、ケーススタディやガイドラインを参考にしてほしい。

 ASCII STARTUPが主催する「JAPAN INNOVATION DAY 2021」(2021年3月19日開催)では、Startup Factory事業に関するセッション「現役医師起業家が語る、ヘルスケア領域でのハードウェア販路開拓 ~3Dプリンタ製オーダーメイドインソール“HOCOH”の社会実装プロセス~」を13時に実施する。ヘルスケアスタートアップのジャパンヘルスケアの販路開拓の事例とともにハードウェアの社会実装における課題についてディスカッションする。

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