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HDリマスター化した「シルバー事件」と「シルバー事件25区」を収録

須田剛一氏のすべてが詰まったADV「シルバー2425」に秘められた、狂気的な凄み

2021年03月13日 16時30分更新

長年待ち続けていた続編!
「シルバー事件25区」をプレイしてみた

 今回の試遊で1番楽しみにしていたのは、シルバー事件25区だ。冒頭でも述べたが、シルバー事件25区は携帯電話アプリでしか遊べなかった幻の続編である。大学生の頃にシルバー事件デビューした際、続編はすでに配信を終了していたため、家庭用ゲーム機かPCでプレイできる日を長いこと待ち望んでいた。続編をプレイできずにこのまま一生を終えるのかと嘆いていた矢先、シルバー2425という奇跡が舞い降りたというわけだ。

新たな管理社会「カントウ25区」にある高層マンション「ベイサイドタワーランド」で、奇妙な殺人事件が発生する

 さて、シルバー事件25区に触れよう。前作のシルバー事件から5年後、新たな管理社会「カントウ25区」にある高層マンション「ベイサイドタワーランド」で謎の殺人事件が発生する。この事件を皮切りに、中央警察機構「凶悪犯罪課」、郵政事業組織「地域調整課」、そして前作にも登場していたモリシマトキオの物語が同時に動き出す……。

中央警察機構「凶悪犯罪課」の視点で描く「Correctness」

郵政事業組織「地域調整課」の視点で描く「Matchmaker」

シルバー事件に登場していたモリシマトキオの視点で描く「Placebo」

 シルバー事件25区は前作を踏襲した作りとなっているが、登場人物とストーリーは記憶に残るほどに強烈だった。前作は純粋な狂気だったのに対し、今作はポップな狂気といった具合だ。奇抜なビジュアルに、独特すぎるギャグ、そして脳裏に焼き付くバイオレンス描写など、須田剛一氏の真骨頂というべき演出が冴え渡っていた。むしろぶっ飛んでいるといっていいかもしれない。

 一方、シルバー事件を象徴するフィルム・ウィンドウの印象は薄まっているが、その分ウィンドウ内で展開される情報(イラストやオブジェクトなど)の質は前作以上といえる。

ぶっ飛んだビジュアルが炸裂するシルバー事件25区。笑いととるか、狂気ととるかはプレイヤー次第だ

前作よりもユーモア度が向上しているように感じた。独特なセリフ回しとネタに何度も吹いてしまった

 テキスト進行がメインだった前作と比べると、本作はパスワードを入力する謎解き要素や、迷路を探索するダンジョンの要素といったパズル的な遊びが増えている。その遊びには須田剛一氏ならではのユーモアも含まれており、時々見せるぶっ飛んだ内容に何度も笑ってしまった。ある意味、前作よりも衝撃的だった。

パスワードを入力する暗号解読の要素。ヒントがあるので難易度はそこまで高くないが、記憶力が求められる。ヒントを見ながらの入力ができないため、暗記に自信がない場合はパスワードをメモするといいだろう

ダンジョンを探索……?

 ストーリーの本筋は、次々と人が死ぬ高層マンションに隠された謎を究明することだが、それだけで済まないのがシルバー事件というもの。前作と同様、未知なる謎を追い求めるだけでなく、未知なる謎に翻弄される展開も健在だった。シルバー事件を体験したことのある人は、故郷に帰ってきたような感覚に浸れるだろう(もちろん私もその1人だ)。

不可解ながらもどこか惹きつけられる謎の数々

さまざまな組織との対立や陰謀なども描かれる

 加えて、シルバー2425には新規シナリオが多数追加されている。シルバー事件2作品を掘り下げたシナリオや新たな人物によるシナリオなどを用意。ネタばれになるので詳細は控えるが、いずれもシルバー事件に魅了されたプレイヤーの心を掴む内容に仕上がっていると感じた。

2つの事件を目撃する面白さがここに

 しつこいようだが、シルバー2425はただのテキストアドベンチャーゲームではない。数十年前にリリースされたタイトルだが、リマスター化したことで見映えが鮮明になったほか、さまざまなプラットフォームで名作を堪能できるのは実にうれしいポイントだ。

須田剛一氏の原点というべきシルバー事件

携帯電話アプリでしか遊べなかったシルバー事件25区

 もちろん、ストーリーを読み進んで提示された謎を深く考察するというアドベンチャーゲームならではの面白さもある。一味違うアドベンチャーゲームを体験したいという需要に応えてくれるはずだ。

 それから、シルバー事件2作品には須田剛一氏のすべてが詰まっている点にも注目してほしい。確かに人を選ぶゲームではあるが、須田剛一氏の世界に足を踏み入れてみたい人や、シルバー事件という故郷に戻りたい人にオススメだ。

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