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パナソニックが、フランスのTexcellとの共同実験の結果を公表

今年の花粉やウイルス対策はどうする? 注目技術「帯電微粒子水」とは

2021年02月19日 19時00分更新

帯電微粒子水「ナノイーX」のメカニズム(パナソニック公式サイトより)

ウイルスだけでなく、花粉も気になりはじめるこの季節

 新型コロナウイルス感染症に対する心配が、依然として拭えない日々が続く。さらにこの時期は、花粉症持ちには厳しい季節のはじまりでもある。ウイルスや菌、花粉などのアレルギー物質が、衣服などに付着していないかと不安になりながら過ごす日々は辛いものだ。

 そんな悩みを緩和してくれる可能性を持つ、注目の技術が「帯電微粒子水」というものだ。

帯電微粒子水によるウイルス抑制効果

 パナソニックがこの度、フランスのTexcell(※)と共同で、帯電微粒子水「ナノイーX」の、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する抑制効果を検証したことを明らかにした

 検証方法は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を対象に、帯電微粒子水「ナノイーX」を曝露した場合と、曝露しない場合での比較だ。

 具体的には、およそ45リットルの密閉空間内で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のウイルス液を垂らしたガーゼをシャーレに設置。その上で、床面からおよそ15cmの位置に、帯電微粒子水「ナノイーX」発生装置を設置。その状態で2時間曝露させ、ウイルス感染価を測定した。

 結果、帯電微粒子水「ナノイーX」を発生させるデバイスを動作した場合に、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を2時間で99.99%も抑制するという結果が得られたのだという。

これまでにも、さまざまな研究機関と協業して、ウイルス抑制効果を検証している(パナソニック公式サイトより)

 今回の実験では、シャーレ内のガーゼに垂らした新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の液に対する抑制効果を検証しているが、帯電微粒子水は、付着ウイルスだけでなく、浮遊ウイルスにも効果があるという。同社が公式サイトで公表しているこれまでの実験の抑制効果によれば、インフルエンザウイルス(H1N1型)やポリオウイルス、大腸菌ファージなど、さまざまな付着ウイルス/浮遊ウイルスともに大きな抑制効果が見られたとされている。

※ パリのパスツール研究所から独立した企業。ウイルス検査や、ウイルスクリアランス試験などのGLP適合試験を実施する専門機関で、現在はフランス、ドイツ、アメリカ、台湾、日本に拠点を持っている。

OHラジカルを大量発生させる「ナノイーX」

 帯電微粒子水は、空気中の目に見えない水分を集めて高電圧を加え、ナノサイズの水粒子を生み出す技術。この水粒子が電気を帯びているため、帯電微粒子水と呼称される。なお「ナノイーX」は同社による帯電微粒子水発生技術のブランド名である。

 ちなみに、パナソニックが帯電微粒子水「ナノイーX」の生成装置を開発したのは2016年のこと。2003年から「ナノイー」として帯電微粒子水の生成装置を展開していたが、ナノイーXは、ナノイーと比較して、「OHラジカル」の発生量が10倍にも高まっているのだという。

 OHラジカルは、さまざまな物質に対して高い反応性を持つ活性酸素の一種。浮遊する物質とくっつくと、物質からH(水素)を奪うことで、物質を変質させる=酸化させるという仕組みを持つという。

 担当者に取材したところ、「空気清浄の分野にかかわる開発者が果たすべき使命は、より大きくなっており、『空質』に対する意識も高まっている。日本発の技術で、世界中の人々の健やかな生活に貢献していくために、帯電微粒子水の研究開発をこれからも重ねていきたい」と話してくれた。

研究開発の加速に期待。ウイルス対策に役立つ日も?

 パナソニックの「推し技術」のひとつである帯電微粒子水「ナノイーX」。すでに同社は、発生装置を組み込んだ製品を多数リリースしているが、エアコンや、空気清浄機が代表的だが、脱臭ハンガーや温水洗浄便座、ななめドラム洗濯乾燥機などにも搭載されており、そのジャンルは幅広い。

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に関する問題は非常にデリケートであり、同社も、今回の研究結果が直ちに感染の予防に直結するとまでは言及はしていない。

 だが、化学の分野から空気中の有害物質の緩和にアプローチする姿勢は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する電機メーカーのチャレンジとして、今後もますます注目されていきそうな分野だ。開発が加速すれば、将来的には「設置するだけでウイルスの感染予防に役立つ機器」など、強力にウイルスに働きかける機器が生まれる日も、訪れるのかもしれない。

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