2021年1月11より始まったCES 2021では、さまざまな主要テック企業がオンラインの発表会を開催した。1月13日、AMDもYouTube上において1時間近い発表を行なったが、今回の発表の軸は「Ryzen 5000シリーズ モバイル・プロセッサー」(以降、モバイル向けRyzen 5000シリーズと略)だった。発表イベントの内容は既報記事のとおりだが、技術的詳細については伏せられていた。
だがAMDはオンラインの発表会直後にプレスを集め、モバイル向けRyzen 5000シリーズの詳細なブリーフィングを実施した。既存の記事と被る部分もあるが、AMDがモバイル向けRyzen 5000シリーズをローンチするにあたり、どうブランディングしているのか、設計的にどんな工夫を盛り込んできたのかなどをかいつまんで解説したい。
H/U/PROの3ラインに、“HS”“HX”の2つのバリアント展開
まずはモバイル向けRyzen 5000シリーズのラインナップを概観することから始めよう。イベントで明らかにされた通り、モバイル向けRyzen 5000シリーズは全てGPUを内蔵した“APU”となる。内蔵GPUの世代は既存製品と同じく7nmプロセスで設計されたVega世代のアーキテクチャーが採用されている。
モバイル向けRyzen 5000シリーズのラインナップは“Uシリーズ”“Hシリーズ”“PROシリーズ”の3ラインで展開し、さらにHシリーズについては“HS”“HX”のバリアントも用意する。
このうち最も注目すべきは薄型軽量ノートPC向けの“Uシリーズ”だ。最上位の「Ryzen 7 5800U」はTDP15W仕様の8コア(C)/16スレッド(T)、動作クロックは最大4.4GHzとなる。前世代では型番ひとつおきにSMTのあり・なしモデルが交互に登場していたが、今回は全モデルでSMTが有効となっている。
ただRyzen 5000Uシリーズにおいては、全製品がZen 3世代ではない点に注意したい。これについては既にモバイル向けRyzen 5000シリーズの速報記事の中でも明らかにされているが、Ryzen 7 5700U/ Ryzen 5 5500U/ Ryzen 3 5300Uの3製品はZen 2世代のアーキテクチャーで製造される。
見分け方は数字型番の百のケタが偶数ならZen 3、奇数ならZen 2となるが、同格のZen 3ベースRyzenと比較した場合、コア数もTDPも同じだが、動作クロックが若干引き下げられ、かつL3キャッシュも少ない。同じRyzen 7の8C16Tモデルでも安いからという理由で選ぶとZen 2とベースの製品を選んでしまうこともある。消費者側から見るとやや透明性に欠く製品ラインナップではないだろうか。
パフォーマンス重視の中〜大型ノートPC向けにはTDP35W以上の“Hシリーズ”が使われるが、こちらは全てZen 3ベースとなる。
さらにHシリーズには型番末尾に何が付くかによって製品がさらに細分化される。基本となるのはTDP45Wの“Hシリーズ”だが、“HSプロセッサー”は同型番のHプロセッサーよりもクロックが低くTDPも35Wと低い。そして倍率アンロックかつTDP45W+の性能重視モデルが“HXシリーズ”だ。最上位の「Ryzen 9 5980HX」は8C16Tで最大4.8GHzとなる。
ライバルであるIntel製のモバイル向けCPUだと第10世代の「Core i9-10980HK」が8コア16スレッドで倍率アンロックで競合製品となるが、最大ブーストクロックでは10980HKの方が勝つ(5.3GHz対4.8GHz)一方で、ベースクロックでは5980HXの方が上(2.4GHz対3.3GHz)となっている。プロセスルールの新しさについてはインテルが14nmに対しAMDが7nmなので比べるべくもない、といったところだ。
そして残された“PROシリーズ”だが、今回のブリーフィングにおいても具体的な型番やスペックについては語られることはなかった。ただしプロに照準を合わせた製品(恐らくセキュリティー周りも強化済)となるだろう。
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