日立製作所は1月21日、デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む企業に対し、複雑なマルチクラウド環境で、人のスキルに依存しないシステム監視と一元的な業務運用管理を容易にする統合システム運用管理「JP1」の最新版「JP1 V12.5」を販売開始した。
また、これらのシステム監視と業務運用管理などの高信頼な運用基盤をSaaS型で利用できる新サービス「JP1 Cloud Service」も3月31日から販売開始する。これらを利用することで、IT部門はシステム運用におけるスキル依存の軽減や業務の自動化を促進できるという。
同社は、システム環境全体の運用に関わる情報を関連付け可視化するインテリジェント統合管理「JP1/Integrated Management 2」や、業務の自動実行を制御・管理する「JP1/Automatic Job Management System 3」などにより、企業のIT部門の運用効率化や業務自動化などをサポートしてきた。これらの取り組みで日立が蓄積してきたIT部門の運用ナレッジをもとに、JP1 V12.5では、中核製品であるJP1/IM2とJP1/AJS3を中心に強化した。
「JP1 V12.5」の特徴
JP1 V12.5は、システム監視の中でも緊急度や属人性が高い障害対応を支援するため、これまでJP1/IM2で提供してきたシステム環境全体の運用情報の関連付けと、判断に必要な情報の可視化に加え、今回、日立の運用ナレッジに基づき、リアルタイムなシステム状況から最適な対処手順の提案を追加。
具体的には、各JP1製品で検知したエラーや障害で影響を受ける業務の実行状況やシステムリソース状況などの多様な運用情報に応じた対処案を、JP1/IM2の統合オペレーション・ビューアーに一覧表示する。これを選択することで経験が浅い運用担当者でも迷わず適切な対処を実行できるという。さらに、「IT運用最適化サービス」のAIなどと連携することで、より高度な分析や判断を伴う対処の提案や実行も可能となり、属人性をさらに軽減できる。
JP1/AJS3では、クラウドサービスを利用する業務とオンプレミス側の既存業務とを連携させるといった、マルチクラウド・ハイブリッドクラウド環境をまたがる一連の業務を自動実行し、一元的に実行状況を把握・管理できる。従来は、JP1/AJS3からクラウドサービス上の業務を制御するために処理を作り込む必要があったが、今回、Amazon Web Services(AWS)のAmazon S3やAWS Step Functionsといったクラウドサービスの制御を行なう機能を提供することで、作り込みが不要となった。
さらに、RESTインターフェースを持つサービスとの連携機能も強化し、業務の柔軟な制御を容易にした。これらにより、IT部門は、各種クラウドサービスを利用した新たな業務とオンプレミス環境の既存業務における実行結果データの引き継ぎなど、マルチクラウド環境の業務の実行管理を容易に定義することが可能になり、クラウド活用を運用面から促進できるという。
「JP1 Cloud Service」の特長
JP1 Cloud Serviceは第一弾として、システム運用の中核を担うJP1/IM2とJP1/AJS3の機能を利用できる「統合管理プラットフォーム」「ジョブ管理プラットフォーム」と、JP1/AJS3の運用データを元に長期的な運用傾向などの分析結果をダッシュボードに表示できる「ジョブ運用データ分析サービス」を提供。これらのメニューは全て、オンプレミスからマルチクラウド環境にまたがるシステムを管理対象にでき、SaaS型で利用できるため導入から保守までの負担を軽減するという。
統合管理プラットフォーム、ジョブ管理プラットフォームでは、異なるデータセンター間での冗長化構成や、サービス稼働中のセキュリティーパッチ適用など、業務の継続性を向上する工夫により、基幹システムの運用基盤として安心して利用できるという。また、ジョブ運用データ分析サービスは、IT部門の分析工数を削減するだけでなく、将来、業務実行の遅延が発生するリスクを早期に発見し重大な障害を事前に回避できるなど、事業継続性を向上できるとしている。
JP1 V12.5の価格は、JP1/IM2が66万円から、JP1/AJS3が29万7000円から。買い取りでの提供のほか、サブスクリプションタイプ(年間契約)での提供も可能。1月29日より提供開始予定。
JP1 Cloud Serviceの価格は、統合管理プラットフォームとジョブ管理プラットフォームがそれぞれ1ヵ月あたり42万9000円から(標準モデル)、ジョブ運用データ分析サービスが1ヶ月あたり6万6000円から。3月31日より提供開始予定。なお、初期導入費用等が別途必要となる。
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