コップの水をこぼさないように走るテクは不要に!?
現在アメリカで開催中のテクノロジー展示会「CES 2021」において、アイシン精機グループは「振り子式加速度低減技術(Pendulum Acceleration Reduction System:PARS〈パース〉)」を世界初披露した。
これは、走行時にクルマにかかる加減速や遠心力をセンサーでとらえ、それにあわせた最適な角度に床の角度を調整することで、車内に置いたモノを安定させてくれるという技術だ。振り子の原理を基本とし、傾きや揺れ戻しといった微調整をモーターで調整することで、モノの安定を実現させる。また、揺れのエネルギーも利用することで、モーター駆動の力を最小限にするため、それほど大きなエネルギーが必要ないのも利点だという。
「省人化であったり、効率化であったり、そういった部分で自動搬送ロボットの開発が進んでいるのですけれども、今後はそこに加えて運搬の品質も注目されるだろうと考えて。そこでアイシン精機独自の技術を使ってPARSを開発しました」とアイシン精機グループの開発担当者は説明する。
アイシン精機の技術説明のビデオでは、PARSの活用例として自動運転による移動式BARが挙げられていた。お酒やグラスを満載する自動運転の移動式BARにPARSを使うことで、積んであるボトルやコップ類が安定するというわけだ。また、アイデアだけでなく実際にモノを載せて走る、小さな箱型のプロトタイプカーの動画も公開されている。
ほかにも利用例としては、レストランの配膳ロボットによる食品の運搬をはじめ、パソコンや魚の入った水槽、割れやすい食器、犬や猫などの動物など、揺らしたくないモノの運搬が挙げられていた。
車体側の工夫だけで実用化が現実できるため、採用が始まれば、一気に普及する可能性を感じさせるアイデアだ。CASEや自動運転技術といった先端技術も、こうした脇を支える技術があってこそ、より光るもの。実用化を楽しみに待ちたい。
ちなみに、今回のCES 2021はオールデジタルでの開催だ。アイシン精機グループは技術紹介のビデオだけでなく、独自サイトのバーチャル展示スペースを用意し、そこでも「PARS」をはじめ、さまざまな技術を紹介している。
筆者紹介:鈴木ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。
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