HTCのスマートフォンは日本でしばらく新機種が出ておらず、台湾で独自のモデル展開が行なわれている以外は目立った動きがないように見えます。古くからのスマートフォン愛好者にとってはちょっと悲しい状況です。
ところが、今年に入ってからもHTCのスマートフォン新製品がいくつかの国で次々と登場しているのです。これはHTCからブランド利用権を獲得した企業が、OEM/ODMメーカーにHTCのロゴをつけたスマートフォンの製造を委託し、特定国で販売しているのです。2019年から登場したこの新しいモデルは「Wildfire」シリーズ。WildfireといえばHTCが2010年から数機種投入した低価格なAndroidスマートフォンの名前ですが、10年の時を経て新モデルとして復活したわけです。
現在のWildfireシリーズは2019年にインドで「Wildfire X」が登場。2020年には「Wildfire R70」が出てきました。一方ロシアや南米、アフリカは別の企業がHTCスマートフォンを展開しており、こちらは「Wildfire E」シリーズという名前になります。同シリーズは2020年末までに5機種が出ており、販売国では人気があるようです。ターゲットが新興国なので価格設定はかなり安め。アフリカで売られているWildfire Eシリーズを見てみましょう。
エントリーモデルの「Wildfire E lite」は5.45型(1440×720ドット)ディスプレーを搭載。SoCはMediaTekのHelio A20にメモリー2GB、ストレージ16GB、バッテリーは3000mAh。カメラは800万画素+300万画素とかなり低めのスペックです。価格は1549南アフリカランド、約1万1000円です。入門レベルのスペックなので価格は1万円を切ってほしかったところ。
「Wildfire E1」と「Wildfire E1 Plus」は2020年12月発表の最新モデル。6.09型(1560×720ドット)ディスプレー、Helio P23にメモリー3GB、ストレージ32GB、カメラはE1が1600万画素、E1 Plusが1600万画素です。E/E liteを大画面化してカメラをちょっとだけ強化したモデルとなりますが、Wildfire E1の価格は2499南アフリカランドで約1万8000円。スペックを考えるとこれも若干高いかなと思うところがありますが、HTCブランドということでプレミアム感をもたせているのかもしれません。
そして最上位モデルとなる「Wildfire E2」は6.22型(1560×720ドット)ディスプレー、Helio P22、メモリー4GB、ストレージ64GBという構成。カメラは1600万画素+200万画素。なおフロントカメラはほかのWildfire Eシリーズ全機種が500万画素であるのに対し、Wildfire E2は800万画素とやや高め。バッテリーも他モデルが3000mAhですが、Wildfire E2は4000mAhです。実はこのE2の発表はE1/E1 Plusより早い8月だったのですが、アフリカではまだ未発売。価格はE1/E1 Plusより若干高いくらいの設定になるのでしょう。
いずれのモデルも日本など先進国から見ればスペックは一昔前で、実用性もやや厳しいところ。しかしHTCのスマートフォンがとにかくほしいというマニアな人なら、通話用など「サブのサブ」といった用途に使うのはありかもしれません。1万円ちょいで買えるWildfire E1 liteは、サイズも小さいので複数台持ち歩きのときも邪魔になりません。
HTC本家からは5Gに対応した「HTC U20 5G」が台湾などで販売されていますが、5Gスマートフォン市場はすでに各国で中国メーカーの力が強まっています。HTCは先進国でこれからも苦戦を強いられるでしょう。日本にこの5Gモデルが投入される可能性は低く、HTCファン・HTCマニアな人には悲しい状況が続きそうです。しかし、新興国では見たこともないHTCのスマートフォンが続々登場し、元気な姿を見せ続けてくれています。日本から遠く離れたアフリカで、HTCが人気になってくれることを期待したいですね。
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