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ファッションから金融まで「倫理的な考え方」が次のキーワードに

知ってた?「エシカルな行動」が地球の未来を変える

2020年12月04日 11時00分更新

消費者の「エシカルリテラシー」を可視化しよう

鈴木 エシカル消費は生産・供給側にエシカル性を求める消費者の選択的購買行動という見方をされがちですが、実際には消費者がリテラシーレベルを上げないことには持続性あるエコシステムの形成にはつながらないというところが悩ましいです。

 一般的に、生産者の規模が大きくなればなるほど、利益を上げるように促す圧力も高まります。もし、一定規模の消費者の集まりに対して「エシカルリテラシーの高いコミュニティー」としてその存在を可視化できるようになると、生産側が動くのかなと。要は生産・供給側にいかに「生産や流通の履歴が証明された商品を購入する消費者」の存在を把握できるようにするかがカギになるでしょう。

 たとえば消費者ごとに、米国のクレジットヒストリーに相当するようなエシカル消費ヒストリーによって「エシカルリテラシー」の度合いを計算できるとして、その際エシカル度についてはエシカル協会さんが計算してくれるといった仕組みはどうでしょうか。診断の結果「あなたのエシカルリテラシーはこれくらいですよ」「あなたと価値観を共有する集団のなかで、今どのくらいのレベルですよ」みたいなことがわかるといいですね。

 日本では、商品をスペックで選ぶ、もしくはスペックと価格のバランスで選ぶという考え方が主流です。でもその考え方ってヨーロッパのエシカル消費者からすると異端なんです。日本の消費者の多くは逆にヨーロッパのエシカル消費の考え方が異端であり変わっているということになる。つまり世界共通のエシカル度といった評価尺度は存在せず、そんなものを作ろうとしてもうまくいかない。各地の地理文化性に根ざしたイデオロギーもあって、なかなか難しい。

 であれば、そのように多様な消費者の価値観をそれぞれコミュニティーとして個別に捉えることで、特定のコミュニティーにおいては、「私のレストランはお財布の厚みで評価しません。あなたを奥の席に通す理由は、お金を持っているからではなく、私の価値観に照らしてあなたの日々の行動がエシカルだからです」みたいなことが起きてくると良いのかなと思っています。

 また、消費者側に提供すべき金銭に代わるインセンティブのありかたについても、考える必要がありそうです。『自分と同じ価値観の人を育てなきゃ』と、Tech用語で言うところのDAO(Decentralized Autonomous Organization/「自律的に動いてくれる組織」)の形成に向かうようなインセンティブの設計が大切でしょう。スターバックスやパタゴニアのように、企業が真ん中で旗を振っていなくても、ファンがファンを呼んできてくれる仕組みができれば……。

 ブロックチェーンではもちろん生産の履歴を記録できますが、消費行動についても追いかけられると思うので、単純な金額の多寡ではなく、「複数の選択肢があるなかで、よりこの領域に貢献している消費者だ」みたいなことが見える化できたら、消費者側も変わっていくのかなと。

電通イノベーションイニシアティブ プロデューサー 鈴木淳一氏

末吉 エシカルリテラシー、やりたいですね!

大久保 Airbnbはホストだけでなくユーザー側もレーティングされています。その結果、(普段からきれいに利用する人もいるものの)ユーザーとしてレーティングを上げたいから、部屋をきれいに利用し、良い宿泊者として振る舞う人があらわれます。上手くモチベーションを高めることによって行動変容が起こる可能性を考えると、消費者の動機づけはとても大事です。

末吉 私たちは消費者側の変容を促し、同時に事業者側にも働きかけをしてきました。また、コンシェルジュ講座を受けてくださった案内人が全国に広がっていることは確かです。ただ、そこから先、エシカルな生活者のコミュニティーとして、次のステップを踏める受け皿を現状何も提供できていない部分があったので……エシカルリテラシーのアイデアは面白いです。

―― 最後に今後の展開についてお聞かせください。

末吉 今後の展開としては、エシカルな消費がしたいと思う人たちのコミュニティーをもっともっと拡大していって、そのコミュニティーが社会を変えていくような力になるくらいまで育ててきたいです。鈴木さんからお話いただいたように、まだまだ方法はあることがわかりましたので。私たちが知り得ないテクノロジーと連携しながら、新しい価値尺度をつくっていきたいなと、本当に今、思いました。

大久保 同じくです。「まだ世の中に浸透していないからやらない」という人も多いと思うので、もっと日常に普及させ、やりたい人はできるという状況を生む必要があります。決して、強制的に「やれ!」ではなく。

―― ありがとうございました。

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