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「伝わる」作業手順書から「売れる」販促クラウドサービスへ

店頭展開を加速し、売上向上を実現するプラットフォーム「Hansoku Cloud」

 リッチコンテンツによる作業手順書作成・共有・管理プラットフォーム「Teachme Biz」の開発・販売を行っている株式会社スタディスト(以下スタディスト)は、販促PDCAマネジメントプラットフォーム「Hansoku Cloud」を11月24日より提供開始する。

 「Hansoku Cloud」は小売チェーンストアにおける販売促進施策を管理するクラウドサービスで、本部と店舗の間の情報伝達を円滑にし、商品の販売促進効果を最大化することを目標にしている。

 新サービス発表にあたり、従来見えていなかった小売りチェーンの抱えている課題とそれを解決する「Hansoku Cloud」の概要について、スタディスト代表取締役 鈴木悟史氏に話を伺った。

売り場が本部の指示通りになるわけではない
小売チェーンストアの抱えている課題

 複数の店舗を抱えるチェーンストアでは、商品の店頭陳列に関して本部から店舗に作業指示書が届く。しかしその指示書は文字だらけで分かりづらい上、FAXやメールなど伝達経路も一定ではない。

 そもそもこのような店頭実現率(陳列指示が正しく実行されている店舗の割合)は把握そのものが難しく、把握できている場合でも70%程度の水準にあるという。店頭に並ばない限り消費者が商品を買うことはできないのだから、店頭実現率の向上は企業の売上向上に対する極めて重要なファクターとなる。そのためにチェーン店によっては地域を担当するスーパーバイザーが巡回して指導するが、コストがかかる上、コロナ禍の環境では感染のリスクも発生する。

「本部から店舗に五月雨式に作業指示が飛んでいること、文字ベースの指示書は作成も読むのも大変だということ、そして実行結果の報告も大変なため管理も不徹底で結果実行率が上がらないという3点が集約された課題。そこでビジュアル化した作業手順書を作り、それを一元管理して伝達し、結果を簡単に報告できるシステムを提供する。結果として、適切なタイミングで正しく商品が店頭に展開され、売り上げが向上する。非常にシンプルなメカニズムだが、ありそうでなかったプロダクトが開発できた」(鈴木氏)

計19回、延べ518店舗に及ぶチェーンストアでの実証実験

 スタディストでは、「Hansoku Cloud」の開発にあたり、チェーンストア及び消費財メーカー数社と協力して、計19回にわたり、延べ518店舗を使った実証実験を行っている。導入した店舗は、導入しなかった店舗や市場平均に比べて、平均27.7%もの販売店数の増加を達成した。

 店頭実現率は約70%から85.1%に向上し、作業指示からのリードタイムは約1週間から3.5日に短縮。特に新商品の展開に際しては効果が顕著で、これは店頭実現率の向上とTVCMなどによる露出の増加の相乗効果ではないかと考えられる。

 例えばある医薬品では、店頭実現率が90%を超えるとともに、当該商圏における業界平均に比べてプラス60%以上の販売店数増加を実現した。また販売キャンペーンと並行して実施した飲料の実証実験では、店頭実現率は96%を超え、商圏平均と比較してプラス100%以上の販売点数増を達成した。これらの実証実験は、いずれも店頭実現率向上のためのスーパーバイザーなどによる巡回は行っていない。すなわち、売上の向上だけでなくコストの低減も同時に実現が期待できる。

「店頭実現率がどれくらいなのかは、これまで適切に把握する手段がなく、機会損失を生んでいたことがわかった。(導入によって)店舗側では自分たちが狙ってい商品が売れ、メーカーはタイムリーに自社商品がより売れることが実証できた」(鈴木氏)

 効果は売り上げだけでない。商品や展示の説明における教育コストや、現場に行って展示を確認するコストは、チェーン店舗が多いほど影響範囲が広い。

「Hansoku Cloud」の運用プロセス

 店舗導入においても「Hansoku Cloud」では、店舗側で使うのはタブレット1台だけというシンプルさで、実証実験でも店頭作業員が楽しく操作になじんでいったという。

 まずチェーンストアの本部で商品の陳列手順書を作成するが、スタディストがこれまで培ってきた手順書作成サービスである「Teachme Biz」を用いることにより、画像とテキストを入れるだけで誰でもビジュアルベースのわかりやすい指示書を作成することができる。

 「Hansoku Cloud」では、すべての指示書はまず店舗にあるタブレットに送られてくる。店長などが不在であっても、内容を確認すれば、現時点で優先順位の高い作業が何かは一目でわかる。また、画面をタップするだけで作業手順書を開くこともできるため、プリントなどの手間なくすぐに作業に取り掛かることが可能だ。

 実施結果はタブレットで写真を撮影して本部に送るだけ。シンプルな分、本部ではすぐに実施報告を集めることができ、未実施の店舗に対するアクションもすぐに行える。現場に行く必要もないため、コストダウンも期待できるというわけだ。

 一方本部では、現在実施中の販促施策の一覧を見ることができ、かつそれらの店頭実現率およびそれにかかるリードタイムを一目で見ることができる。リアルタイムで確認できるこれらの数値は、経営者が次の一手を打つためのヒントとなるだろう。

手順書作成サービスからの拡大狙う

 「開発の背景にあるのは、経営に役立つものを作りたいという考えから。今回は、販促施策の実行におけるコミュニケーション改善を基盤にサービスを構築した。

 今のバージョンでは手順書の閲覧と報告だけをシンプルに提供している。売上向上のためのKPIはリードタイムと店頭実現率の2つ。これを一目で確認できるようにした」(鈴木氏)

 「Hansoku Cloud」の導入コストは、初期費用50万円に加えて1店舗当たり月額5000円で、同様のサービスを自社で構築するに比べると安価な形になっている。SaaSだけでないコンサルティング展開なども実施するが、それ以上に手順書作成の「Teachme Biz」を中心にした今後の事業拡大が狙いにある。

 これまでスタディストは「Teachme Biz」を中心に、「伝えることを、もっと簡単に」というミッションを掲げて事業を推進してきたが、「Hansoku Cloud」は、特に小売業での課題として残っていたコミュニケーションを解決するためのツールと言える。

 今回の発表は、ホリゾンタルなSaaSとして、その接点を中心にコンサルティングやサービス提供を拡大するための第一歩だと鈴木氏。別種の課題は小売業だけでなく様々な業種・業態に隠れているし、また海外においても見えてくるはずだ。手順書作成という広範な業種業界で求められるプラットフォームが、今後どのように拡大展開するか期待したい。

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