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チタンフレームは鯖江で生産

シャープがフェイスシールド開発、液晶テレビAQUOSのモスアイ技術を応用

2020年11月10日 15時40分更新

反射が少なく、良好な視界を確保できるモスアイ技術

 特徴は、フィルムの両面に、表面反射を抑制する特殊加工を施すことで、光の映り込みを大幅に低減。日光や照明の反射によって、視界が遮られない仕様となっている点だ。

 シャープディスプレイテクノロジー 開発本部技術企画部長兼シャープ米子 代表取締役社長の今井明氏は、「フィルム表面に100から200ナノメートルサイズの微細な凹凸処理を施したモスアイ構造により、外光の屈折率を連続的に変化させ、表面反射率を大幅に低減。表面反射率は約0.3%/面を実現している。日光や照明などの反射で視界を妨げられることなく、手元での細かい作業もストレスなく行えるほか、高透過率で着用者の表情もクリアに見える。ガラス並みの高透過性と、低反射性能により、まるでシールドがないような使い心地を実現する。企業の受付や接客業など、人と対面する機会の多い幅広い業務に適している」と語る。

フィルムの生産を行うシャープ米子工場

シャープディスプレイテクノロジー 開発本部技術企画部長兼シャープ米子 代表取締役社長の今井明氏

 モスアイ構造の実現には、シャープ独自の方法で、工業的に作り出す技術を採用。「モスアイ構造がない場合には、屈折率1.0の空気と、屈折率約1.5のフィルムとの界面で、約4%の光が反射し、フィルムに入るときと、出る時で2回、合計で約8%もの光が反射する。だが、光の波長よりも短いモスアイ構造を作ることにより、屈折率は1.0から1.5に連続的に変化。反射を起こす特定の面がなくなるような現象が起きため、各面での反射が大幅に削減されることになる」(同)という。

 フィルムのもとになる材料に、ポリカーボネートを用いることで、高い透過性と、色つきが少ない、クリアな視界が確保できたという。

 「モスアイ構造の場合には、短波長の紫から、長波長の赤まで、広い範囲の光に対して低い反射率を維持している。波長によって反射特性が大きく変わらないため、色つきが少ない、自然な色に見える。また、人間の目に感じやすい緑から黄色の光の反射が抑えられていることから、視感度反射率は約0.3%の面が2面となり、合計で約0.6%にとどまる。モスアイ構造がない場合の約9.5%と比較し、15分の1以下に抑えられる」と説明した。

アイシールド

 短波長の紫から長波長の赤まで、幅広い範囲の光に対して、視感度透過で約99%という高い透過率を維持しており、濁りのないクリアな視界を提供できるという。

 さらに、新たに開発した超親水性アクリル系樹脂とモスアイ構造の組み合わせによって、フィルム表面に付着した水滴の表面積を素早く広げることができるため、温度差や高湿環境下で発生する結露、シールド装着時の呼気による曇りも防止でき、常にクリアな視野を保つことが可能となっている。

 「水滴を素早く広げる効果により、フィルム表面に落ちた細かい水滴や、呼気に含まれる湯気が、フィルム表面における表面積を増やすことにつながり、すぐに乾き、多くの場面で、曇りが防止できる」という。

 加えて、フィルム表面は傷がつきにくい加工を施しているため、長期間に渡って、フィルムの使用が可能になっている点も特徴だ。「汚れた場合には、アルコール消毒液などを利用してきれいにすることができる。それに関する耐久試験も行っている。フィルムは、1週間程度で駄目になるようなものではない」とした。

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