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GeForce RTX 3080はPCIe 4.0で本領発揮!? 3.0との違いに迫る

AMDとインテルではどちらが有利なの? サイコム「G-Master Spear X570A II」の実力を探ってみた

2020年10月28日 19時00分更新

 GeForce RTX 30シリーズは、前世代から最大2倍の性能向上というだけあって、発表時から大きく注目を集めたGPUだ。SM、CUDAコアが増強されていることからも、大幅な性能向上は簡単に予想できる。

 もちろん実際の性能も期待を裏切らない。どのくらいの性能なのか気になる人は、加藤勝明氏による詳細レビュー記事、「Ampere世代のGeForce RTX 3080 FE速攻レビュー、GTX 1080の最大3倍」をチェックして欲しい。

 当然ながら、発売されるとその価格の高さにも関わらず人気となり、争奪戦ともいえる状況になってしまった。最近になってようやく品薄状態が解消されつつあるが、まだまだ潤沢に出回っているとは言えない状況だ。

 確保が難しいというのは、何もパーツ単位での販売に限らない。BTO PCを扱うサイコムでは、「G-Master Spear X570A II」などのオプションで各社のGeForce RTX 3080、同3090搭載ビデオカードが選べるようになっているが、さすがに在庫切れが目立つ。とはいえ、メーカーなどにこだわらなければ手に入るというのはありがたい。

GeForce RTX 3080、同3090合わせて8製品がラインアップされているビデオカード。在庫切れもあるが、メーカーやモデルを自由に選べるのが◎

 このGeForce RTX 30シリーズでは、3D性能の高さが注目されがちだが、実はもうひとつ大きな変化がある。それが、インターフェースにPCI Express 4.0が採用されていることだ。

 PCI Express 4.0は、同3.0と物理形状は同じまま、1レーンあたりの帯域を2倍に引き上げたもの。これによりデータ転送のボトルネックになりにくく、より高速なデータ処理が可能となるわけだ。ビデオカードにおけるPCI Express 4.0への対応はAMDのRadeon RX 5000シリーズが先行していたが、NVIDIAもGeForce RTX 30シリーズで追いついたことになる。

 もちろん、PCI Express 4.0はPCI Express 3.0と互換性があるため、従来のスロットに挿しても動作する。ただし、速度はPCI Express 4.0のものではなく、PCI Express 3.0止まり。本来の性能を発揮するには、PCI Express 4.0に対応したマザーボードが必要だ。

 実は、現在PCI Express 4.0に対応しているのは、AMDのX570、もしくはB550チップセットしかないため、基本的にRyzen環境でしか使えない。ライバルのインテルは、いまだにPCI Express 3.0までしか対応していないため、AMDにとってPCI Express 4.0は大きなアドバンテージになっている。

 今までであれば、PCI Express 4.0の使い道もNVMe対応のSSDくらいしかなかったためメリットが薄かったのだが、ビデオカード、しかもハイエンドのGeForce RTX 30シリーズが使えるとなると意味が大きく変わる。AMDはゲーミング性能ではインテルにリードを許してしまっているが、このPCI Express 4.0によって、その差を埋められる可能性があるからだ。

 そこで今回は、サイコムの「G-Master Spear X570A II」を使い、PCI Express 4.0と同3.0の性能差、そして気になるインテルとのゲーミング性能の差をチェックしていこう。

 今回試したのは、標準構成からCPUをRyzen 9 3900XT、メモリーをCENTURY MICRO DDR4-3200(16GB×2)、SSDをCSSD-M2B5GPG3VNF(PCI Express 4.0対応、500GB)、ビデオカードをASUS TUF-RTX3080-10G-GAMING、電源をSilverStone SST-ST85F-GS V2(850W)へと変更したモデルだ。

試用機の主なスペック
機種名 G-Master Spear X570A II
CPU AMD「Ryzen 9 3900XT」
(12コア/24スレッド、3.8GHz~4.7GHz)
CPUクーラー CoolerMaster「Hyper 212 EVO」
(空冷、120mmファン搭載)
グラフィックス ASUS「TUF-RTX3080-10G-GAMING」
(GeForce RTX 3080)
メモリー CENTURY MICRO DDR4-3200(16GB×2)
ストレージ CFD販売「CSSD-M2B5GPG3VNF」
(PCI Express 4.0対応、500GB)
マザーボード GIGABYTE「X570 AORUS ELITE」
(AMD X570、ATX)
PCケース CoolerMaster「MasterBox CM694」
電源 SilverStone「SST-ST85F-GS V2」
(850W、80 PLUS Gold)
OS Microsoft「Windows 10 Home(64bit)」

まずはPCの詳細をチェック
拡張性に優れた長く使えるタワー型PC

 「G-Master Spear X570A II」は、メッシュを多用した通気性のいいCoolerMasterの大型タワーケース「MasterBox CM694」を採用し、高性能パーツを組み込んでもしっかりと冷やせる構成になっているのが特長だ。

 内部を見てみると、GeForce RTX 3080搭載の大型ビデオカードを搭載しながらも、ケース内にかなり余裕のある様子がうかがえる。また、裏配線を多用したサイコムの熟練の技による組み立てもあって、ケース内がすっきりとまとめられているのがわかるだろう。

裏配線をしっかりと活用したサイコムの組み立ては、BTO PCを買う人はもちろんのこと、自作ファンにとっても参考になる

 今回試した構成では、12コア/24スレッドという高性能CPU、Ryzen 9 3900XTをサイドフローの大型空冷クーラーで冷却しているが、空気の流れを遮るものが少ないため、これでも十分フルパワーで稼働できるわけだ。

 ちなみに、空冷クーラーが選べるのはこのCPUまで。更に上位のRyzen 9 3950Xを選ぶ場合は水冷クーラーが必須となる。サイコムのBTO PCは選べるパーツの多さが魅力だが、動作に支障のある構成はできないようになっているというのが親切だ。

今回の構成では、サイドフローの空冷クーラーを採用。Ryzen 9 3900XTは12コア/24スレッドCPUのため、高負荷時はかなりの騒音になる。静音性を重視するなら、水冷クーラーにカスタマイズしておきたい

 目玉となるビデオカードは、GeForce RTX 3080搭載の「ASUS TUF-RTX3080-10G-GAMING」。2.7スロット分を占有する大型モデルで、見た目通りかなり重量がある。

 一般的なビデオカードならここまで重たくないため、ブラケット部分のネジ止めだけで十分固定できるのだが、このクラスになると、振動でスロットから抜ける、自重で基板が曲がってしまうなど、色々と問題が起こりやすい。

 こういったトラブルを未然に防ぐため、専用のスタビライザーを使ってビデオカードを支えてくれる構造になっている。

最新のGeForce RTX 3080を採用した、約30センチという長さの大型ビデオカード。大型のヒートシンクと3連ファンの組み合わせで、強力に冷却してくれる

重量級のビデオカードを支えてくれるスタビライザーは、ケースに付属の専用品。ステーやホルダーなどと呼ばれることもある

 サイコムのBTO PCはパーツへのこだわりがあり、今までもメジャーチップを搭載した品質の高いメモリーモジュールを採用してきていたが、さらに品質を重視する人向けに、センチュリーマイクロの国産モジュールが選べるようになったのが新しいところ。

 「G-Master Spear X570A II」でセンチュリーマイクロメモリーが選べるのは16GB×2、もしくは32GB×2の2通りしかないが、同容量の別メーカー製メモリーとの価格差は、前者が830円、後者が1660円しかない。こだわった1台として購入したいと考えているなら、躊躇せずに選べる価格差だ。

センチュリーマイクロのメモリーモジュール。ラベル部分をよく見ると、「Assembled in Japan」の文字が確認できる。価格差も小さいため、品質にこだわるなら選んでおきたい

 PCのパフォーマンスを左右するパーツとしてはCPU、そしてGPUがあるが、もうひとつ忘れてはならないのがストレージ。体感性能が大きく変わることもあり、今ではすっかりSSDが定着した。

 現在の主流は、SSDの中でも高速なPCI Express接続となるNVMe対応のM.2 SSD。「G-Master Spear X570A II」は、チップセットにX570を採用したギガバイトのマザーボード「X570 AORUS ELITE」を搭載しているため、PCI Express 4.0対応のSSDが使えるのがメリットだ。

 今回試用した構成では、CFD販売のPCI Express 4.0対応 SSD「CSSD-M2B5GPG3VNF」を採用。定番ベンチマークソフト「CrystalDiskMark」を使い、実際にどのくらいの速度になるのか計測してみた結果がこれだ。

シーケンシャルリードの数値に注目。約5GB/sという非常に高速なものになっていた

 最も高いのがシーケンシャルリードで、速度が約5GB/s。SATA接続では600MB/s以下になるだけに、8倍以上も高速だという結果。

 PCI Express 3.0との差が気になったので、マザーボードの設定を変更し、接続速度を落として試してみた結果も掲載しておこう。

PCI Express 4.0と同3.0との切り替えは、UEFI内の設定で「Auto」となっているものを「Gen3」へと変更することで実現している

「CrystalDiskInfo」の「対応転送モード」で確認。左が現在のモードで、右が対応モード。「PCIe 3.0」になっていることから、切り替わっているのがわかる

PCI Express 3.0の場合はシーケンシャルリードが大きく速度を落とし、約3.5GB/sに

 バスの速度制限により、シーケンシャルリードの速度が激減。約5GB/sから約3.5GB/sへと下落してしまった。

 さすがにここまで速いと体感でわかるほどの差はほとんどないが、大容量ファイルを扱う用途、例えば動画の編集や、写真をまとめて現像するといった用途では効果が高い。ストレージを少しでも速くしておきたい、というのであれば、PCI Express 4.0対応を選んでおいて損はないだろう。

 うれしいのが、このPCI Express 4.0対応のSSDの中でも、さらに高速なSamsung製の「980 PRO」がBTOオプションに加わっていること。こちらは同じテストでシーケンシャルリードが6.7GB/sにまで上昇するという驚きのモデル。しかもシーケンシャルライトも5GB/sと高速なので、性能重視でPCを選ぶなら、マストといっていいレベルだ。

SamsungのPCI Express 4.0対応SSD、ハイエンドクラスの「980 PRO」がBTOで選べるようになったのは朗報だ。なお、写真は1TBモデルだが、実際に選べるのは500GBモデルになる

元々SSDに強いSamsungだが、その実力はPCI Express 4.0対応モデルでも健在。リードだけでなくライト性能の高さも魅力

 このSSDに関するより詳しい情報を知りたいのであれば、ジサトライッペイ氏による「リード最大7GB/sの衝撃!待望のSamsung製Gen 4対応SSD「980 PRO」を速攻レビュー」がオススメだ。

 高速なSSDを搭載すると発熱が気になるところだが、X570 AORUS ELITEはSSD用に肉厚なアルミヒートシンクが標準装備されているため、この点は心配無用。PCI Express 4.0接続のSSDもしっかりと冷やしてくれる。

M.2 SSD用のヒートシンクはマザーボードの標準装備。肉厚のヒートシンクでしっかりと冷やしてくれるので、高速SSDでも熱による性能低下の心配はない

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