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ステイホームに最良のハイレゾスピーカー、10年ぶり刷新のKRIPTON「KS-11」

2020年10月16日 17時00分更新

 クリプトンは10月16日、USB DAC内蔵スピーカーの新機種「KS-11」を発表した。ブラックのKS-11B、ホワイトのKS-11Wの2モデル構成。2011年6月の「KS-1HQM」以来、実に約10年ぶりの刷新となる。直販限定製品で、価格は4万9800円。販売は11月下旬に開始する。

 また、兄弟機「KS-55」購入者に向けた新しいキャンペーンについてもアナウンス。新規購入者・先着20名を対象に、ブルーノート東京のネットライブ/eチケットをプレゼントする。キャンペーンは本日開始。オンラインライブは10月28日実施で、ジャズシンガーのマリーンの単独公演とのこと。詳しくはクリプトンのウェブサイトを参照してほしい。

 KS-1HQMは当時はまだ珍しかった96kHz/24bit音源に対応。一方でデスクトップにおける小型サイズと5万円以下のリーズナブルな価格を実現しており、いまだに人気機種となっている。特にコロナ禍の現状下、PCの音質を向上させたいというニーズは高く、販売台数を伸ばしているという。

 KS-11は、このKS-1HQMの中身を一新し、高音質化/高機能化をした新製品。外観上の違いはあまりないが、音質に関係する内部はほぼ新規といってもよい。同社代表取締役の濱田正久氏は「コロナ時代のオーディオシステムと自負している」とコメントした。

対応可能フォーマットを増やし、アンプも高出力化

 大きな改善点としては、アンプがある。TI製の最新デジタルアンプを採用。クラスDアンプの出力を25W+25Wから35W+35Wに大きく増やした。これに伴い、電源(パワーパック)の出力電圧を従来の12Vから24Vに上げ、かつ電流も2.7Aと大きくしている。

 これにより従来と同じ、デンマークTymphany製の直径63.5mmコンケーブ・メタルコーン・フルレンジ型ユニットを使いながらも余裕を持ったドライブが可能となり、大きな音質の改善を果たしている。なお、ドライバー自体の性能としては40kHzまでの高域をカバーするなど非常に高性能なものとなっているそうだ。

左が従来機種のKS-1HQM、右が新機種のKS-11B

 KS-1HQMは、いわゆるD/Aコンバーター(デジタル⇒アナログ変換)を持たず、入力したデジタル信号はデジタルのままクラスDアンプに出力する。入力可能なデジタル信号は最大192kHz/24bitのPCMで、FLAC、Apple Losslessなどのロスレスコーデックにも対応。USB 2.0入力のほか、光デジタル入力、アナログ入力なども備える。また、KS-1HQMからの強化ポイントとして、Bluetooth再生機能を追加。SBC、AAC、aptXに加え、最大48kHz/24bitのデータが扱え、高音質なaptX HDコーデックにも対応している。

 筐体サイズや外観はKS-1HQMを踏襲している。ただし、フット部は《ネオフェード》カーボンマトリックス3層材をOリングで囲った新しいものに変更している。

 従来機種は、鉄粉を充填した重量級のスタンドの上に、金属製のインシュレーターを置いてスピーカーを置く構造だったが、オーディオメーカーらしい豪華さや音質面でのメリットがある一方で、高さが増したり、移動が大変といったデメリットもあった。KS-11はスピーカーにとって重要な不要振動の対策を効果的にできる一方で、設置しやすさや動かしやすさも兼ね備えている点が特徴だ。

 Bluetooth機能はKS-55(ダブルファイブ)から搭載するものだが、アンテナ感度を高め、本体内に内蔵することで設置スペースを小さくしている。KS-11は、KS-55と比較してかなり奥行きが抑えられているため、PC回りはもちろん、テレビ周りなど設置スペースが限られた場所に置くのに適している。

 キャビネットはアルミ押し出し材のメタルフレームで、両サイドをモールドにしており、高剛性。ホワイトモデルでは、外観上目立つネジ穴をシリコンパーツで埋めるなど、仕上げの美しさにもこだわっている。なお、バスレフポートに関しては、テーパードの新しいものに変えたそうだ。

空間再現性が高まり、より現代のハイレゾ音源の魅力を引き出せる

 短時間ではあるが、従来機種のKS-1HQMと比較試聴ができた。KS-1HQMは冒頭で書いた通り、発売から10年の時間が経っているが、改めて聞くとなかなかの高音質であったことに気付く。コンパクトスピーカーらしい、定位感の良さが魅力で、ノラ・ジョーンズの女性ボーカルが中央にピッタリと定位。少しドライな声の質感、アタックのあるウッドベースなどがゴリっと立ち上がる際のハッキリとした輪郭など、高解像度な再現も実感できた。

 解像度やメリハリ感の高さは、チェロとコントラバスのデュオでも同様で、芯があって、ハッキリとした再現。直接音中心に、弦をこするタッチなども明瞭で、定規で製図したように正確な再現という印象を持った。

 同じ音源をKS-11で聴いた。ハスキーで乾いたノラ・ジョーンズの声が中央にピッタリ定位する点は同様だが、音場がより広がって、アンビエンス感が向上するため、よりゆったりとリラックスした雰囲気で音楽の世界に没頭できる。一方で、声のフォーカスや描写に関してはKS-1HQMに遜色なく明瞭。結果、声と伴奏の対比が明確で、より立体感のあるサウンドになった。

 空間の広さはデュオではさらに感じられる。ホールの豊かな間接音が音数多く再現され、ハイレゾ音源の醍醐味を一層感じ取ることができた。さらに楽器のあるステージとリスナー(マイク)の間の距離感なども実感できた。アンプが高出力化をしたためか、低域もより一層腰が据わったものとなった。小型スピーカーでこれだけの音が出れば十分すぎるほどだろう。

 比べるとKS-1HQMは直接音をストレートかつハッキリと伝える傾向。KS-11はこれに間接音や音場感のリッチな再現が加わり、より実在感が増す印象だ。より高いサンプリングレートへの対応に加え、アンプ駆動力の改善がプラスの方向に影響しているのが分かった。

 クリプトンオーディオ事業部の渡邉氏によると、TIの新しいクラスDアンプの採用は、高域の歪みや、全体の余裕度に好影響を及ぼしているという。基板を再設計することになり、発売まで時間がかかったが、そのぶん満足できるできになったそうだ。

 このほか、aptX HDの伝送や、テレビ周りに置いた状態でKS-55とKS-11を比較試聴するデモも行われた。KS-55は2ウェイスピーカーであるため、高域がより伸びて、倍音成分の再現も忠実。そのためキリリと立った輪郭を感じられる。KS-11はフルレンジゆえ、これよりはパワーバランスが中低域による印象を持ったが、スケール感では引けを取らず、むしろここまでの音が出るのかという驚きのほうが大きかった。

 テレビ周りに置いた際のスッキリ感では小型のKS-11に軍配が上がる。

 最近はBluetoothスピーカーをステレオペアにして使う用途も増えているが、KS-11はステレオモデルなので、1台ずつと考えれば2万5000円程度。さらにaptX HDやハイレゾ音源の再生にも対応する高音質モデルであることを考えれば、かなりリーズナブルに感じる。  設置しやすさも大きな改善であり、在宅時間が増え、オンラインライブを高音質に楽しみたいと考える人にとっては最良のパートナーになるのではないだろうか?

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