往年の名車シリーズ
地上の戦闘機! HKSの500馬力R34スカイラインGT-Rは今でも輝く至宝の名車
チューニングはクルマを楽しくラクに乗るため
「チューニングと言いますけれど、僕はクルマをもっと楽しくラクに乗れるための行為だと思っています。高速道路の追い越しで、ギアを1速落としてタイミングを見計らってアクセルを入れていたところを、トップギアのまま車線変更をし、アクセルを開けてスッと追い抜けるなど、恩恵を受けるポイントはいくつもありますね」「最近多いのは、86/BRZにボルトオンのスーパーチャージャーを搭載する方ですね。あのクルマノーマルですと190馬力程度なのですが、そこにスーパーチャージャーを載せると100馬力ほど上乗せできて300馬力。トルクも増えてますから、街乗りもラクになりますし、サーキットでもかなり楽しめますよ」
そんな菊池さんの愛車に乗せてもらいました。エンジンをかけた瞬間、低い排気音が轟き、強化クラッチ特有のシャラシャラ音が響きわたります。クルマ好きならニヤニヤが止まらない音ではありますが「これは絶対に怖いクルマだ」「この車を軽自動車で煽るオバちゃんって一体……」と乗る方は内心おっかなびっくり。今回は撮影と保険の関係上、助手席にお邪魔しました。
「R34のいいところはサイズ感ですよね。R32は小さくR33は大きい。R34はホントにちょうどいいんです」と愛車を転がす菊池さんは実に楽しそう。驚くのは、外観から受ける印象とは逆に、実にマイルドなクルマに仕上げられていること。ガチガチの足で内臓が揺さぶられる、シフトチェンジの度にヘッドバンキングを強いられる、車内は排気音で会話ができない世界をしていたのですが、菊池さんのR34はそれとは無縁、真逆の性格。ちょっと前の輸入ハイパワーSUVより居心地がよいではありませんか。菊池さんの運転がスムーズで丁寧というのもありますが、このGT-Rより緊張を強いる現行車はいくらでも挙げられます。
チューニングカーだから
乗り心地が悪いと思われたくない
その事を菊池さんに伝えると「僕は乗り心地が悪いクルマはイヤなんですよ」と笑われてしまいました。ちなみに足まわりはHKSのHIPERMAX 20specのツルシ状態とのこと。さらに「ブレーキの初期制動が高くないとダメでして」とおっしゃるのですが、あっという間に停止するにもかかわらず、 いつからブレーキ踏んでいるの? と思えるほどのスムースさ。あえて日産車にたとえるなら、e-POWER DRIVEのクルマに乗っているかのようです。それほどまでに菊池さんの運転は丁寧そのものであり、クルマそのものも穏やか。チューニングを調律と訳すなら、菊池さんは一級の調律師だと思うとともに、菊池さんにより10年にわたり調律されたクルマの恐ろしさを感じずにはいられません。
「車両の価格が上がっちゃったのもあるでしょうけれど、最近はRBのチューニングはめっきり減りましたね。GT-Rですと、今はR35ばかりですよ」と菊池さんはちょっと寂しそう。ちなみにR35のチューンは1000馬力も珍しくないのだとか。筆者はR35のMY17以降の全モデルに乗っていますが、ただでさえパワーがありまくるクルマを1000馬力にするとは一体世の中どうなっているのでしょう。人間の探究心にはあきれるばかりです。
普段、そのようなクルマに触れている菊池さんからすると「RBはトルクが細いんだよなぁ」と感じられているようです。ですが「これで細いって、菊池さんは何を言っているんだ?」と内心思うほど下からモリモリではありませんか。いつでもどこでも踏めば、恐ろしい勢いで加速する能力を有する快適通勤快速車と感じました。
きちんと整備していれば今でも輝きは衰えない
誕生して20年以上が経つR34型スカイラインGT-R。イマドキのアダプティブクルーズコントロールをはじめとする快適装備はありませんが、クルマって丁寧に扱って、そしてチューニングをすれば今でも一級の輝きが維持できると改めて思った次第。自動車の取材をした後、大抵「このクルマ欲しい」と思ってしまうのですが、この取材ほど「R34スカイラインGT-Rを手に入れて、菊池さんに200万円を渡してお願いしたい」と思ったことはなかったと、正直に白状させていただきます。
なによりクルマと人との素敵な関わり合いを感じた次第。「ペットは飼い主に似る」と言われますが、それはクルマでも同じであることを改めて感じました。菊池さんのR34は、底知れぬパワーを秘めながらも実におだやか。菊池さんの人柄そのものでした。菊池さんとR34 GT-Rの幸せな日がいつまでも続きますように。
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