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トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社

「自分でトイレに行けた!」排泄の悩みをIoTでの解消を目指す「DFree」

2020年10月13日 06時00分更新

 経済産業省が、ハードウェアをはじめとした独自のプロダクトの量産に向けたスタートアップ支援「Startup Factory構築事業」。そのなかで、昨年度からスタートした「グローバル・スタートアップ・エコシステム強化事業費補助金(ものづくりスタートアップ・エコシステム構築事業)」の本年度採択事業者が、執行団体である一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII)による審査の結果、9つの事業者が選ばれた。

 そこで今回から6回に渡り、採択された6つの事業者をピックアップ。「スタートアップ×ものづくり」の意気込みや課題、将来の展望について伺った。1回目は、超音波を使って尿のたまり具合や排尿を検知し、通知することでトイレやオムツの交換のタイミングがわかるトリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社のプロダクト「DFree」だ。

DFree

下の世話は人に任せたくない。IoTの力で克服したい

お話を伺ったのは、代表取締役の中西敦士氏

 「キッカケはアメリカへ留学したとき、前夜に辛いものを食べすぎた結果、引っ越しの最中に便をもらしてしまい、2度とこのような経験はしたくないと思ったことです」。そう語るのは代表取締役の中西敦士氏だ。当時(2013年)ちょうど日本で大人用おむつの市場規模が子供用を上回るという年でもあり、非常に多くの人が排泄に困っていると感じた中西氏は、「下の世話は本人としてはされたくないこと。世話をされる側に対してテクノロジーで解決できないか」と考え、2014年に留学中のアメリカで起業した。

 それまで、排泄という分野は、出したものをどうやって汚れることなく処理するかが中心で、事前に予測する取り組みはほとんどなく、手探りで進めていくことに。「自分たちの身体を実験台にして、超音波画像診断装置を使って身体の様子を確認しデータを収集するのが大変でした」と中西氏は当時を振り返った。

 超音波画像診断装置は、妊婦の胎児を見るときなどに使われる機材で、これを使えば、膀胱や大腸の状態を確認できるのではないかと考え開発に着手。ベンチャーとしてノウハウが少ないなか、中高大学の同級生を始めとした協力者やたまたま出会ったエンジニアなど、さまざまな人に助けてもらいながらプロトタイプを作製した。

市場をつくりだす楽しみもあるがその分時間も労力もかかる

「DFree」の仕組みとサービス

 「DFree」は超音波ウェアラブルとして、常に体に貼りつけて内臓の動きの変化を捉える。このプロダクトを成功させるには3つの技術が必要で、1つ目は介護施設や家庭内での利用を想定しているので、少ないセンサーで効率よくセンシングし、量産化して価格を抑えていくこと。2つ目が、日常生活の中できちんとデータが取れること。姿勢の変化があってもしっかり取れるアルゴリズムの開発をしている。3つ目に、装着に関しても簡単に装着できて違和感のないモノ。これら3つのカテゴリーにおいて、現状11件の特許を取得・出願しており、これがハードウェアに関する優位点となる。

 また、ソフトウェア部分でも介護施設や病院などでしっかり使ってもらえ、排泄ケア記録業務の削減につながる記録ソフトを開発。排尿サイクルの視える化や分析ツールなどで、UXにも強みがあるという。

 2017年に初代ハードウェアを出し、2020年4月に三代目、そして今回の事業で2021年の春には四代目のリリースに向けて開発中だ。「ものづくりスタートアップ・エコシステム構築事業は昨年度に続いて2期目になりますが、個人向けだともっと安く小さくしてほしいといった声を多くいただいているので、製品改良に一番フォーカスを当てて頑張っている段階です」(中西氏)。

 利用者からは「病気になって以来トイレではなくおむつに排尿していたが、DFreeを使って2年ぶりにトイレで排尿することができた」「働いている最中ずっとトイレが気になっていたが、視える化することでトイレへ行く頻度が減った」などの喜びの声が届いているという。また、介護施設ではトイレでの排尿率が2割以上上がったり、失禁率が下がりリハビリ効果も認められたという論文も発表されている。こうしたエビテンスの蓄積が利用者の裾野を広げていき、ものづくりを成功へと導いてくれるはずだ。

尿トラブルがDFreeによって低減されれば、日常生活はガラリと変わることだろう

 今後は、現在センサー部と本体部がセパレートになっているものを一体化。また、今後は排尿予測デバイスだけでなく排便予測デバイスの商品化へも注力してくという。中西氏は「我々のセンサーは肺や心臓、胃など、ほかの部位も将来的にはモニタリングできるようにしたいと考えています。今回の新型コロナウイルス感染症の影響でオンライン診療の間口は広がりましたが、ビデオチャットだけでは限界があります。体温計や体重計、血圧計といった家庭に1台あるデバイスのうちの1つになるべく、簡単に家庭内で臓器の動きや変化、異常検知ができるセンサーの開発・サービスの開発に取り組んでまいります」と語った。

 ほかに競合がいないブルーオーシャンな市場。「市場を作っていくところから始めているので、逆に競合が早く出てきて欲しいと思っているぐらいなんです。市場開拓というのは力と時間がかかるものなので、楽しみながら進めていますが、いろんな形でサポートしていただいたり、関心をお持ちのかたは、ぜひお声がけいただきたいです。一度もお会いしていなくてもFacebookで友達依頼がきたらすぐOK出しますので、どんなことでもいいのでぜひ連絡ください」と中西氏は訴えた。

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