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NTT DATA Open Innovation Forum「豊洲の港から」で意見交換会を実施

FutuRocket美谷氏が感じた世界のテック&ベンチャーイベントのトレンド事情

2018年12月03日 09時00分更新

 今年で5周年を迎えたNTT DATA Open Innovation Forum「豊洲の港から」は、新たな革新的ビジネス創発のきっかけづくりを行なうために、毎年テーマを決めてオープンイノベーションフォーラムを開催している。今年は、5月7日の「中欧スペシャル」を皮切りにすでに6回開催されている。

 10月18日に行なわれた「第3回定例会 中東欧スペシャル」では、中東欧からのICT代表団が参加する前に、サポーターの方々を対象に講演と交流会、そして意見交換を実施した。

 講演に先立ち、NTTデータの残間光太朗氏は「グローバルオープンイノベーションコンテストも始まっており、世界20都市で開催する予定です。今回は特にフィンランドや南アメリカといった、世界のエッジを捉えていきたいと思っています。ただ、エッジ捉えるだけではなく、我々のビジネスを作るメンバーに混ぜることで、なんとかビジネスを作っていきたい」と語り、世界のイノベーターとビジネスを作る場にしたいと訴えた。

 続いて講演では、IoTのハードウェア製品を中心に開発を手がけ、海外の展示会を中心に足を運ぶFutuRocket CEO & Founder 美谷広海氏が登壇し、「全世界網羅テック&ベンチャーイベントトレンド報告2018」と題して、各都市と地域のイベント・トレンド、ベンチャー企業の紹介をした。

年間半分弱は海外へ渡航している、FutuRocket CEO & Founder 美谷広海氏

進行は当編集部のガチ鈴木が担当した

世界最大のスタートアップキャンパスを造っている
「フランス・パリ」

 フランス国内では、予算は地方自治体の商工会議所のようなところが持っていて、たとえばボルドーだとワイン関連だったり、ツールドでは航空宇宙系など、自治体ごとに選抜してスタートアップを支援している。それらの総体として「French Tech」として売り出しているという。

 地方では地場の産業と結びついているが、パリはちょっと違いヨーロッパ内の企業を中心に集め、起業家にとっての都を目指しており、古い駅舎を改造した世界最大のスタートアップキャンパスを造っている。大統領もマクロン氏に代わり、French Techをより推進している状況だ。

 ラスベガスで毎年行なわれているCESでは、スタートアップの展示が全部で500から600社ほど。その中でフランスのスタートアップ展示が年々増えてきており、2018年は270社と全体の半分ほど占めており力の入れ具合がわかる。

 French Techを象徴するイベントが「VIVA TECHNOLOGY」だ。今年で3回目とまだ若いイベントだが、フランスの巨大広告代理店が企画し、オレンジや仏国鉄、エアバス、ルイビトングループといった大企業とオープンイノベーションを行なっている。

 各大企業が抱えている課題に対して、事前にコンテストで募集。応募してきたスタートアップ企業に対して、各大企業のスペースにブースを出させている。たとえば、オレンジだと約150社のスタートアップが、展示日を分けてピッチを行なう感じだ。15社ほどの大企業のスペースに、それぞれ50から100社のスタートアップが参加し、トータルで1000社以上が展示。美谷氏は「各産業がどんな課題を抱え、どういうスタートアップが面白いのかということが、横断的に見られるユニークなイベント」と語る。

 気になったベンチャーとしてはDevialet社。最近日本にも進出してきているが、高品質な3Dサウンドを奏でられるスピーカーで、価格は50万から60万円。高級オーディオだけでなく、スマートスピーカーの設計とノウハウを企業にソリューションとして提供していくことを考えているという。

 また。ブルゴーニュのブースでは、自分好みのワインをAIが判定してくれて、購入すればするほど自分好みのワインを見つけてくれるベンチャーがあった。ただ選ばれるワインはブルゴーニュのみで、自分たちの地域に特化したものを作っているところが面白い。

MWCがファーウェイの一人舞台になっている
「スペイン・バルセロナ」

 スペインは、毎年開催している世界規模の通信系展示会であるMWCが有名だが、最近はこのイベントに併設してベンチャーイベントが行なわれている。MWC自体もスタートアップにも力入れてきており、世界的にここ数年で劇的な変化が生まれている。日本でもDMM.makeといったハード系のテックショップが出てきたのが2016年ぐらい。世界でも同様のことが起きている。

 アクセラレーションスペースが一等地に用意されており、政府が支援している。ここで選抜されたスタートアップが半年ぐらいメンタリングを受けて出ていくが、2、3人の小規模なマイクロ・スタートアップが多いのが特徴だ。

 そういうところから生まれた注目のスタートアップは、ジブラルタルに近いマラにある2015年頃設立のCHICFY社。人数は20人ぐらいで、服をブランドごとに売買するサイトを運営しており、zozoタウンに近いセンスの高さと、メルカリ的な手軽な売買ができる。

 マイクロ・スタートアップについて、美谷氏は「アウトソーシングやクラウドソーシングが当たり前になってきて、スタートアップで抱えなければならなかったものが極小化してきています。私自身もプロジェクトごとに業務委託をお願いしていて、副業という形で、優秀な人材を短期間獲得できるようになってきています」と語った。

 ヨーロッパでは、ウェブデザインなどはフリーランスのデザイナーにまかせているところが多いそうだ。デザイナーも複数のいろいろな案件をこなせば、センスが磨かれるため、小規模なスタートアップが増えてきているという。

 MWC(Mobile World Congress)に関しては「2年前ぐらいからファーウェイの一人舞台かなと思っている」と美谷氏は語る。B2B向けでなじみ客しか来ないようなイベントのため、大企業は見栄だけで大きなブースを出しており、商談はいつものお客なので膠着した感じがあったという。

 そんななかで、ファーウェイは巨大なブースを構え、商談向けブースも会場の半分を占めており、近くの美術館を貸し切ってパーティーを行なっている。ファーウェイは米国に入れないので、MWCで東欧やアフリカ、ヨーロッパの人を呼んで、トップダウン的にやっていると美谷氏は分析している。

 バルセロナで注目したいイベントは「4 Years From Now」だ。4年後に花咲くテクノロジーに注目したテーマのイベントで、MWCに閉塞感ができたので年々人気が出てきている。「ここから生まれたベンチャーもいくつかあるが、失敗も多い。企業や政府がお金をつぎ込むのをやめたら倒れるんじゃないのかということもあり、雇用対策なのではという面もある」(美谷談)。

 スペインは、フランスと違い国内だけでは無理なので、南米を意識した展開を行なっている。ただ、NTTデータの豊洲の港からpresentsグローバルオープンイノベーションコンテストではスペインのバルセロナが2連覇をしており、独創的な発想と技術力に定評が高い。

スタートアップがIPOもシリコンバレーも目指さない
「ドイツ・ベルリン」

 ベルリンはもともと産業がなかったため、フリーランスワーカーやスタートアップを支援している。特に東欧圏から多くの人が来ている状況だ。ベルリンはスタートアップシティーだということをアピールしていることに対し、美谷氏は「フランスはアメリカナイズされています。5、6年くらい前までは、スタートアップ界隈のカンファレンスなどで、英語が通じないというのは当たり前でした。しかし、今は英語で話せますし、シリコンバレーにいたスタートアップの人たちが、そういう文化を持ってきました。なのでフランスはアメリカとのハイブリッド的なのに対しベルリンはものすごく小さいスタートアップが多く、フリーランスのデザイナーやプログラマーも多い」という。

 ベルリンでユニコーン企業感がないのは、そもそもIPOもシリコンバレーも目指していないとのこと。2、3人のスタートアップ企業に対して、スモールマネーを入れて、大企業が積極的に仕事を発注している。スタートアップというよりは中小企業に近いかもしれないが、スモールビジネスを大企業と対等にやっている。

 今後スモールビジネスが、大企業のなかで動いていくのか、集合体として動いていくのかというと、ベルリンは後者。そのためIPOもしないし、上場を目指すわけでもなく、大企業の仕事を受けてビジネスをサポートしていく感じだ。

 ベルリンで開催される世界最大級のエレクトロニクスショー「IFA」は白物家電が中心のイベント。「正直、CES一極集中になってきているのでIFAも曲がり角かな」と美谷氏は感じているそうだ。

 同じドイツで開催されている見本市「CEBIT」は、早い段階から展示会を変えていこうとしていて、コンシューマーからB2Bに特化してきた。ただ、ベンチャーには力を入れており、ベンチャーだけのホールを作ったりして、展示会の色を変えてきた。開催月も3月から6月に変え、若者を集めるべくコンサートを開催するなど工夫をしている。今年は入場者数かなり落としてしまったが、良かったという声は多いそうだ。

 CEBITの会場を見て美谷氏は「結構バカバカしいことを真面目にやっているスタートアップがあり、考えが変わりました。企業するとホームランを打たなければならないという気負いがあったが、取りえず走ってみるのも大事なことだと思いました」。

 ほかにも面白いイベントとしては「Startup Night」や「Tech Open Air」などがある。Tech Open Airはかなりおしゃれでリラックしたイベントで、サテライトイベントが100個以上あり、市内で同時多発的にピッチイベントをやっている。特徴的なのが、メイン会場は有料なため、みんな無料のサテライトイベントへ行くようになっているという。「メイン会場のカンファレンスは、40分程度なのに自己紹介が多すぎて中身が薄い。来年もこのイベントがあるのか心配だが、その周辺のイベントはすごく盛り上がっている」と美谷氏は語った。

日本ブランドのように見せかけて急成長
「中国・深セン/香港/広州」

 香港で開催される「HK Electornics Fair」と「Global Sources」は、同時期に開催される海外バイヤー向けイベント。アフリカやヨーロッパなどから電化製品の買い付けをする人たちが集まっているが、スタートアップブースに力を入れてきている。

 「深センメイカーフェア」はハードウェアに特化したアクセラレーターが多く参加。メイカーがムーブメントになっている。そんななかで注目したいのが、デザインがどんどん洗練されている点。物の展示方法も洗練されてきている。

 急成長する最新ハードウェアスタートアップとしてはM5STACK社とInsta360社を挙げた美谷氏。M5STACK社は、マイコン制御するとき何をしているのかわからないので、簡単に操作できるボタンとディスプレーをつけて見える化した製品を開発。センサーなどもつなげやすくしている。Insta360社は360度動画が撮れる機器を開発。20代の社長ですでに数百人規模の企業に成長している。

 「広州交易界」は、白物家電に限らずエンジンや発電など世界のありとあらゆるものを販売するイベント。会期によってジャンル分けされていて、世界中のバイヤーが訪れている。隣の展示会場へ行くのにゴルフカートに乗るぐらい会場はものすごく広い。

 そんな広州で誕生したのがメイソウ(名創優品)。100%中国資本なのだが、日本ブランドのように見せかけて急成長。そんなメイソウを辞めた人を引き抜いて上海や広州に出店してきたのがスウェーデンのデザイン会社と組んだNOME。メイソウよりはちょっと高級路線で、メイソウ同様スウェーデンのお店っぽく見せているが、100%中国資本の企業によるものだ。

 ハードウェアでもそういうことが起きていて、中国資本なのに日本の皮を被ったdotcom creation社もその1つ。ミリ単位でバリスタの腕の動きを再現することで、人間以上に正確で完璧な抽出を実現するコーヒードリップロボットを提供している。KRONABY社もスマートウォッチをスウェーデン発として販売している。テクノロジーもそうだが、デザイン性もかなり洗練されてきていて、世界で通用するレベルになってきている。

スタートアップキャンパスにVCが多数入居
「フィンランド・ヘルシンキ」

 Maria 01 Nordic Startup Awardsにおいて「ベストワーキングスペース」賞を獲得したスタートアップキャンパスがあるヘルシンキ。元病院を改造し、現在150社ほど入っていて、2020年に向けて敷地を倍にする計画だ。珍しいのは、ベンチャーキャピタル(VC)が11社入居しているところ。スタートアップキャンパスの中で、すぐにVCとミーティングできるというほかにはない。すごい早い変化が起きている。

 注目の企業をいくつか紹介すると、まずAR教育の3DBear社。幼児教育にARが入ってきたとき、全く違った教育や教材、クラスができるのではということで開発している。KLEVU社は、ECサイト向けの検索エンジンを開発していて、AIを使って検索するシステムを提供。世界中のリテイラーで採用されている。

 CHAOS Architects社は、都市のマップとオープンデータを組み合わせて、市民がいろんなアイデアを投稿でき意見が言える都市改善プラットフォームを提供。Usetrace社は、コードを書かなくても所定の操作を繰り返し、自動でテストしてくれるサービス、などがある。

顔認証技術のスタートアップに注目
「エストニア・タリン」

 エストニアにある「Lift99」は、工場の跡地にPayPalマフィアが立ち上げたアクセサレータ施設。今後はキエフやウクライナなど東欧で拡大する予定。注目するスタートアップ企業は、Veriff社。顔認証技術のスタートアップ企業で、地元の銀行のシステムを開発。運用商品は日本よりシンプルな設計であるものの、人口100万人の国を代表するシステムを4人でやっている。

 最後の方は少し駆け足になっていたが、各国でそれぞれの文化を活かしたスタートアップ企業があり、どこのイベントもいいスタートアップがきてほしいと思っているため、スタートアップの奪い合いになっているという。

 特にフランスは雇用が手厚く守られており、研究者を1人雇うとなると10年、20数年雇用し続けなければならない。研究者だけでなくアシスタントや施設も必要担ってくるので、最低でも10億ぐらいかかり、大企業はR&Dを社内でもつのは無理。ところが、スタートアップなら10億あれば、1社500万出資すれば100社以上支援できることなり、幅広くR&Dの可能性に対して手を打てる。そういったところは日本も学ぶべきだと美谷氏は訴えていた。

 最後に今後注目したい都市として、美谷氏は次のように語った。

 「台湾やアフリカ、ナイジェリアあたりでしょう。フランスに注目しているのは、アフリカの大半はフランス語圏なので、情報の伝達もフランス語でないと入りにくかったりするからです。

 たとえば、ライブ配信できるデバイスは、コソボなど発展途上国からの注目が多いんです。コソボはテレビ局がすべて壊されたため、情報発信はインターネットテレビになっている。インドもそうですが、放送インフラより通信インフラのほうが入ってきているので、ライブ配信用に比較的安価でプロでも使える機材の需要が高くなっています。日本みたいに既存の仕組みがない国のほうが挑戦的なアプローチをとります。

 台湾は日本が失ったパソコン関連のテクノロジーや技術力があり、中国語もできるし英語もうまいという恵まれたところ。深センは日本並みに給料が上がっていますが、台湾はまだ半分とか3分の1ぐらい。日本的な真面目さもあり、台湾は非常に可能性が高いと思います」

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