昨今、コロナ禍の影響で実店舗への集客に困っている小売店が多くなっているのは記憶に新しいはずだ。東京都が飲食店などへの営業時間の時短要請を解除したとはいえ、当分は売上を元に戻す努力が必要となるのは間違いないだろう。
そのなかで、従量課金制でコストがかかるポータルサイトでの集客依存から脱却を図る小売店が増えている。費用対効果を考えると、利用する必要性が以前に比べて下がっているからだ。
背景としては、ウィズコロナでの社会情勢変化もあるが、GoogleマップやFacebookなどSNSの台頭が大きいとされている。特にGoogleマップは、昨今の飲食業界のなかでその存在感が高まっている。
ローカルエリアならグルメサイト内で検索するよりも探すひと手間が少ないほか、口コミ機能が充実しているため、利用者は増加傾向にある。また、小売店側がGoogleマイビジネスを活用することで、Googleマップに掲載する店舗情報を拡充させることができるのも大きなメリットだ。
GoogleマップやそのほかSNSを第2のホームページとして利用する店舗が急速に増えているなか、満を持して登場したのが、各SNSの店舗アカウントを一元管理するクラウドサービス「Canly(カンリー)」だ。営業開始から2ヵ月のあいだに2000店舗以上との有料契約が決定しており、注目度は非常に高い。
従量課金でコストがかかる従来のグルメ媒体から脱却し、GoogleマップやSNS運用による集客への移行が加速しているのは前述した通りだが、その一方で、アカウント運用コストに負担を感じる店舗運営者も増加している。
Canlyは、GoogleマイビジネスやFacebookなど各SNSの店舗アカウントを一括管理でき、複数の店舗情報を一括で更新可能。運用工数を大幅に削減できるだけでなく、一部店舗のみ情報記載ミスをしてしまうリスクを防げる。
Leretto 共同創業者の秋山 祐太朗氏は、「運用する店舗アカウント数が多い企業だと、たとえばコロナ禍の影響で店舗の営業時間を1つ1つ修正したり、情報発信を店舗ごとにしていたり、ユーザーの口コミを1つ1つ追っていたりと、アカウント運用に月100時間以上かける企業も少なくありません。今はGoogleマイビジネスが主力ですが、InstagramやFacebookなどあらゆるSNSを一元管理できるツールがあれば便利なのではと思い、Canlyを立ち上げました」と語る。
また共同創業者の辰巳 衛氏は、Googleマイビジネスを運用するにあたってのリスクを指摘する。「GoogleマイビジネスはWikipediaのように自由に書き込める仕組みになっていまして、悪質なユーザーに店舗情報を改ざんされる恐れがあります。実際に営業時間が書き換えられ、来店したお客様からクレームがきたというケースも聞きます。Canlyは情報の改ざんを自動でブロックする機能を提供しているため、悪質なユーザーの改ざん行為を防ぐことができます」
またそのほかの機能として、店舗ごとの分析はもちろんのこと、全店舗を横比較する分析も可能。エリアや業態で切ったグループ分析やランキング機能により、店舗運営上の課題の把握、予算配分や出店計画の検討をサポートする。
さらに、管理画面から一括で口コミ返信が可能。全店舗分のクチコミデータを管理画面で閲覧、CSVとしてダウンロードでき、経営戦略や、オペレーション改善に活かせるという。
AIによる口コミ解析など、デジタル接客の拡大を視野に
共同創業者である両氏は元々、宴会幹事代行サービスを始めるためにLerettoを創業。当初はその知見を活かして、ビジネスパーソンに特化した食べログのようなサービスを作ろうしたという。結果的にはコロナの影響でクローズとなってしまったが、小売店へのヒアリングを通して、アカウント管理の問題を発見したとのこと。
同社の調べによると、SNSの一元管理サービスは国内初になるという。「似たようなサービスですと、米国にある企業が提供するものが1つあるのみとなります。このようなサービスを早期に着手できたのは、弊社がMEOクラウドというGoogleマイビジネスアカウントの運用代行をしていたという知見があるからです」と辰巳氏は語る。また国内・国際特許を同時に申請しており、知財の防止にも努めているとのこと。
9月時点で、「叙々苑」「メガネのパリミキ」「てもみん」「東急百貨店」などの大手企業を中心に、小売店、マッサージ、メガネショップ、カラオケ、美容院、中古車販売、ホームセンター、物流センター、ゲームセンターなど、幅広い業種の店舗と有料契約が決定している。年内には、およそ1万店舗の契約を視野に入れているという。
また将来の展望について以下のように語ってくれた。「Canlyは業務管理ツールに留まらないサービスだと思っています。重要となるのはやはりデータです。AIで口コミを解析し、経営戦略に活用するといったことはできると思います。現に、Canlyで一店舗分の口コミデータをすべて出して、クライアント様と一緒に分析したところ、売り上げが上がったという事例もありました。口コミに対してどのような返信が効果的かということも含め、デジタルによる接客機会が今後増えていくと思います。膨大なデータをどう活かしていくか、何ができるかを次のステージで考えていきたいです」(辰巳氏)
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