IVS 2020でアダコテックが優勝 「高次局所自己相関特徴抽出法」とは?
普通のパソコンで動く「正常からの逸脱を検出」する異常検知技術
IVS 2020優勝は「HLAC特徴抽出法」のアダコテック
7月31日、インフィニティベンチャーズサミットが運営するスタートアップカンファレンス「Infinity Ventures Summit 2020」内のピッチプログラム「IVS LaunchPad」において、アダコテックが優勝した。
アダコテックは、産業技術総合研究所(産総研)が開発した「高次局所自己相関(HLAC)特徴抽出法」を用いた画像、動画解析技術をコアとした異常検知ソフトウェアを提供する企業。
同技術は、少ないデータ量で高精度の解析ができ、異常として学習したものを検出するのではなく「正常から逸脱したものを検出する」という構造に特徴がある。従来の技術では、「あらかじめ記憶させた条件に当てはまらない異常」を見逃してしまう可能性があったが、同技術では、前例のないケースも含めて、「ほぼ100%異常を検出することが可能」だとする。
映像の中で対象が移動した場合にも、同じ対象であると認識できる特性もそなえる。このため、複数の異常が同時に発生しても、個別に異常を認識できるという。
また、常時並列演算を必要とせず、計算処理の負担が小さいため、市販の汎用PCでも運用が可能な点もメリット。「動画」「静止画」「音」「センサーデータ」の各インプットデータに合わせた4つの異常検知システムを搭載しており、用途や検出対象に合わせて、これらを組み合わせることで、さまざまなユーザーに合ったソリューションが構築できるという。
現在、すでに三井E&Sマシナリーと共同で、レーダー探査を活用したトンネル劣化の非破壊検査技術を実用化済み。また、セントラル警備保障には、大規模商業施設や鉄道インフラなどへの不正侵入の監視を自動化する動画解析ソフトウェアを提供している。
最大級のスタートアップ向けピッチイベント
オンライン開催でも過去最大の応募数
Infinity Ventures SummitのCEO 島川 敏明氏は、アダコテックについて以下のようにコメントしている。
「新規性およびユニークさ、ビジネスとしての可能性を評価させていただきました。産総研から生まれた独自の技術と既存産業への幅広い応用の可能性が、すばらしいと考えております。IVS LaunchPad卒業生から多くのIPO企業が生まれているため、今回優勝されたアダコテック様のますますのご活躍を楽しみにしております」(島川 敏明氏)。
なお「IVS LaunchPad」は従来、各地の大会場を借り切って開催していたが、今回は新型コロナウイルス感染症の拡大の影響もあり、ウェブ会議システムのZoomを用いて、オンラインで実施された。Infinity Ventures Summitによれば、応募数は過去最多だったといい、この日の最終選考に勝ち残ったのは14社だった。以下はその一覧だ。
- 株式会社アダコテック
少量のデータでも異常をほぼ100%検出「検査・検品AI」 - 株式会社リーナーテクノロジーズ
コスト削減のための支出管理プラットフォーム「Leaner」 - 株式会社ビズ・クリエイション
あらゆる家を見学可能にする「KengakuCloud-ケンガククラウド-」 - クイッキン株式会社
スマートオペレーションで宿泊施設を支えていく「aiPass」 - 東急株式会社
アートなポスターで街中をジャックする。「ROADCAST」 - RIM株式会社
ゲーム大会の開催を世界一簡単に。大会開催プラットフォーム「GameTector」 - AGRIST株式会社
農業の人手不足を解決するAIと収穫ロボット「L」 - 株式会社Sportip
オンラインAIフィットネス「Sportip Meet」 - 株式会社Luup
電動小型モビリティのシェアリングサービス「LUUP」 - 株式会社YOUTRUST
副業・転職のキャリアSNS「YOUTRUST」 - 株式会社AquaFusion
70年の常識を覆し世界の海を変える革新的な水中可視化装置「AquaMagic」 - 株式会社tsumug
企業向け自律分散オフィスサービス「TiNK」 - B2M
Online cross border commerce platform「B2M」 - PowerArena
Computer vision platform for manufacturing and smart city applications「PowerArena」
主にスタートアップ企業を対象とした大規模なピッチイベントはほかにも存在しているが、IVS LaunchPadは大企業の担当者や、ベンチャーキャピタル、研究機関、有識者や著名人など参加者の業界も多岐に渡り、数も多く、もっとも注目を集めるピッチイベントのひとつ。
今回は2日間に渡り、Room AからEまでの5つのチャンネルで多くのセッションが開かれ、250名を超えるスピーカーが登壇。今回レポートしたピッチについては、オンラインならではの大規模イベントの運用方法としても、好例となったのではないか。
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