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企業や開発者に無償提供し、知見を蓄積。産学連携促進の狙いも

東大本郷キャンパスに、都市のIoT化に不可欠な「LPWA」の実証実験環境

2020年08月11日 17時00分更新

東京大学大学院 工学系研究科 機械工学専攻IoTメディアラボラトリーは、東京大学の本郷キャンパス工学部2号館内に、LPWAのテストベッドを設置

LPWAのテストベッドが東大本郷キャンパスに

 東京大学大学院 工学系研究科 機械工学専攻IoTメディアラボラトリー(以下、IoTメディアラボラトリー)は、東京大学の本郷キャンパス工学部2号館内に、LPWA(Low Power Wide Area)のテストベッドを設置する。

 LPWAは、低消費電力で遠距離通信を実現する技術や装置を指す。注目されている背景には、既存のネットワークの通信距離が十分でなく、IoT市場に対応するために十分でないという事情がある。

 IoTメディアラボラトリーによれば、ZigBee(近距離無線通信規格)や無線LAN、携帯電話網、BluetoothなどがIoT向けに運用されてきたが、通信距離不足がネックとなり、IoTのセンサー情報を十分に収集できず、IoT市場も立ち上がらないという状況にあるという。

2017年4月からIoTメディアラボラトリーのディレクターを務める西 和彦氏。アスキー社長、国際連合大学高等研究所副所長、マサチューセッツ工科大学大学メディアラボ客員教授などを歴任

 LPWAは比較的低コストで導入でき、通信距離が長いという特徴がある。電力、ガス、水道のスマートメータリング(自動検診)や、大気中、森林、土壌、海洋、河川、湖沼などの環境モニタリング、ダムやトンネルなどの監視や崩壊予知、街灯の点灯・消灯の遠隔操作など、さまざまな用途に活用でき、普及が進めば、IoT化、スマートシティー化の活性につながる可能性がある。

LPWA普及への課題、無償提供の狙いとは

 だが、LPWAの普及には課題もある。現在、LoRa(Long Range)やSigfox(仏Sigfoxの規格)といった独自仕様のネットワークのほか、標準仕様の4G版LPWAが存在している。このうち、独自仕様のLPWAは乱立とも言える状態で、国内では10種類ほどが利用中、または利用計画中だという。

LPWA技術を使ったネットワークの適応領域

 独自仕様のLPWAは免許不要の帯域であるサブGHz帯(国内では920MHz帯)を使用するため、干渉や混信が発生する可能性もある。事業者がLPWAを使用したいと思っても、選定や測定に大きなコストと時間がかかるのも、導入に向けた動きがなかなか進まない一因だ。

千葉大学名誉教授の阪田 史郎氏は、IoT、5Gの研究に携わり、総務省関東総合通信局長省受賞のほか、著書多数。2019年からIoTメディアラボラトリー

今回IoTメディアラボラトリーが設置するLPWAテストベッドは、横須賀リサーチパーク(YRP)協会WSN協議会の協力を受けて設置し、IoT事業者やLPWA開発者を対象に、無償で提供。まだまだ検証、研究が必要なLPWAの技術に、多くの事業や開発者が参集することで、産学連携、新たな研究テーマの発掘につなげたい考えだ。

YRP研究開発推進協会の柘植 晃氏。今回のテストベッドは、横須賀リサーチパーク(YRP)協会WSN協議会の協力を受けて設置するもの

 複数のLPWAが同時に利用され、多くのセンサーが同時に通信した際にどの表な干渉、混信などが発生するかについても検証する。

 事業者にとっては、測定環境を構築することなく、低コストで短期間に、自社のサービスにとって最適なLPWAを選定でき、都市部におけるスピーディーなIoT事業のサービス開発につながるとIoTメディアラボラトリーは話す。

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