テレワークや外出自粛により、自宅でPCに触れる機会が多くなった。そこでオススメしたいのがスピーカーのグレードアップだ。作業中BGMとして音楽を聴いたり、気分転換に動画を見たりするとき、音質のいいスピーカーがあったらその後の仕事もはかどるというもの。今回はそんな1台を紹介しよう。
5月末に発売されたエアパルスというブランドの「A80」(税抜7万7000円、ペア)は、PCとの接続はもちろんのこと、オーディオの入り口としても最適の1台だ。というのも、このスピーカーを手がけたのは、オーディオ界では知られた天才エンジニアであるフィル・ジョーンズ。早速その実力を見ていこう。
小型スピーカー作りの天才
フィル・ジョーンズの最新作
フィル・ジョーンズは、1980年代後半に母国である英国で仲間たちと「アコースティック・エナジー」を興すと、9センチウーファーを搭載したコンパクトなスピーカー「AE1」をリリース。従来のコンパクトスピーカーとは、次元の異なる圧倒的な解像度、スケール感、空間表現などは、後のコンパクトスピーカーに多大なる影響を与えた。音の良さはプロの世界にも認められ、フュージョン/アダルト・コンテンポラリーの有名レーベルGRPレコード(現在はヴァーヴの傘下)のほか、ビートルズやクリフ・リチャード、ピンク・フロイドなどの楽曲を収録したことで知られるアビー・ロード・スタジオにも採用。彼の名は瞬く間に広まった。
AE1は、その後シグネチャーモデル、MK2、MK3、そしてリバイバルモデルのClassicとバリエーションモデルを増やしていったのだが、フィル・ジョーンズは社内の意見対立によりアコースティック・エナジーを去ることを決意する。さらに訴訟問題が発生し、英国におけるスピーカー製造の一切を禁じられる判決を受けてしまうことに。母国を追われた彼は1990年にアメリカへと移住。ボストン・アコースティックスに就くと、リンフィールド「300L/500L」という、これまた小型スピーカーを発表して高評価を得た。さらに1994年に友人たちとプラチナム・オーディオを設立し、AE1を彷彿させるSoloを発表。
その後、アメリカン・アコースティック・デベロップメント(AAD)にて、ホーム用スピーカーのほか、Phil Jones Bassブランドからベース用スピーカーをデザイン。一般的にベース用スピーカーは大口径ユニットを使うのだが、彼は10cmそこそこのユニットを用い、しっかりとベース音を描き出し、高い評価を得た。
このようにフィル・ジョーンズは、スピーカー作りを天職とする人物で、なかでもコンパクトスピーカー作りにおいては天才的な能力を発揮する。そんな彼が手がけたコンパクトスピーカーの最新作を「期待するな」というほうが無理というもの。ちなみにエアパルスというブランド名は、彼が以前プラチナムで発表した1994年当時の価格で2000万円という弩級大型オールホーンスピーカー「エアーパルス3.1」を連想させるもので、その心意気というかお膳立てに、心が躍らないオーディオファイル(オーディオ愛好家)はいないだろう。
ちなみに輸入元によると「A80を皮切りに、今後上位モデルがリリースされる予定」とのこと。日本の住環境にピッタリといえる小型スピーカーの良作が増えることはうれしい限りだ。
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