浜松市とベンチャー企業それぞれの思いを伺った
昨年に続き、今年も実施されることになった浜松市実証実験サポート事業。浜松市はどのような思いでこの事業を起ち上げたのか。また実際に応募したベンチャー企業は、この事業をどう受け止め、どう感じたのか。
募集開始に先立ちリモート取材を行ない、浜松市のベンチャー支援グループで、この事業の担当をしている米村仁志氏と宮﨑信樹氏、そして昨年度採択されたプロジェクトの1つ「flato」の実証実験に取り組んでいるFromToの代表取締役・宮城浩氏に、それぞれの思いを伺った。
おせっかいなほどのサポートを
浜松市は、ベンチャーが集積する「浜松バレー」の実現を目指しています。そのためには、地域内のベンチャーを育てることと、ベンチャーを呼び集めることの両方が必要です。今回の事業は、後者の取組の核として、多くのベンチャーに浜松市を知ってもらい、来てもらうきっかけとなることを期待して実施しています。
浜松市には大手メーカーも多いため、大企業とのコラボレーションのチャンスに恵まれていることも大きな魅力ではないかと思います。大手企業だけでなく、中堅・中小企業もベンチャーとの協業に前向きです。
これからものを作っていこう、というベンチャーをサポートできる中小の製造業者も多くいます。市役所や市の外郭の産業支援機関、地域の金融機関が、そういったコラボレーションを仲立ちすることも可能です。
浜松市のベンチャー支援の予算規模や施策の幅の広さは、他都市に引けを取らないと自負していますし、個々の企業の成長のため、おせっかいすぎるくらいの支援を行っていきます。浜松市のベンチャー支援の取組に今後もぜひ注目していただきたいです。
横展開の可能性も高い地域性
浜松市は、約1560平方キロメートルの面積(全国2位)の中に多彩な自然環境と都市環境が共存する地勢、バランスのよい産業構造などから、まさに「日本の縮図」といえます。また、健康寿命と幸福度で政令指定都市1位を誇り、健康で前向きな市民性もあり、新しい製品やサービスも受け入れられやすいのではないかと思います。こうした好条件が揃い、実証実験に最適な自治体といえます。
さらに、静岡県の西端に位置し、東京からも大阪からも約1時間半でアクセスできることや、全国屈指の日照時間の下、働きやすく、住みやすい環境であることから、拠点としての立地性も優れているのではないかと思います。
「日本の縮図」である浜松市でうまくいったビジネスモデルは、全国に横展開していける可能性が高いと思います。また浜松市は、徳川家康公が20代~40代の17年間を過ごし、天下統一に向けた足固めを行った「出世の街」としても知られています。浜松から日本、世界を変えていくチャレンジ精神を持ったベンチャーにぜひ応募していただきたいです。
アイデアベースでも挑戦可能
移住のハードルを下げることを目標にした「flato」というサービスの実証実験に取り組んでいます。実証実験の申請時点ではアイデアベースで、会社が東京だったこともありあくまで頭の中の構想でした。そこから浜松の人と話し合っていくうちに、できることできないこととの線引きをリサーチでき、さまざまなアイデアをいただいて、どんどんブラッシュアップできました。
実証実験が決まってから浜松へ移住しましたが、かなり満足しています。家賃や金銭面だけでなく、浜松のベンチャーの方はとても活発的であたたかい人達がたくさんいます。実証実験に関してもベンチャー同士でやり合ったり、アイデアを出し合ったりして協力してくれる関係があります。コミュニティーがすでにできていて、何かあったら「おもしろそう」と結構飛びついてきてくれます。
また、ものづくりだけでなく、DXという視点で見るとかなりおもしろい分野が多いと思います。何のアイデアがなくても、ベンチャーとしてこの土地にきたら、もしかしたら新たなアイデアが生まれて新しい産業が生まれる可能性を秘めていると思います。
浜松市は補助金やベンチャーにやさしいという部分はありますが、住民の満足度が高いので、浜松市へ移住したい人が増えてくるのではないかと感じています。これは我々のミッションでもあるのですが、住民満足度が可視化されれば、さらに移住者が増えると思います。
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