●会うことの再定義と、そもそもの問題
もちろん、仕事は「オフィスなのかビデオ会議なのか」が本質ではありません。ただワークスタイルで規定されてきた部分も大きかったため、スタイルの変化は非常に重要視されているのです。
仕事のやりとりをコミュニケーションとコラボレーションで分け、「前者はリモートでも良いが、後者は対面が良い」という感覚は一般的です。しかし筆者は必ずしもそうでもない、とも思うようになりました。
まず単純に、集まることが非常にコストとリスクが高くなってしまったため、「コラボは対面」と決めているとそうしたやりとりをなかなか起こせなくなってしまいます。三密回避、外出自粛の中でZoom会議を繰り返し、別に集まらなくてもコラボレーションできるじゃないか、という感覚をつかめたわけです。言い換えれば、慣れただけなのかもしれませんが。
しかし、対面では関係なかったリモートでの会議の品質を決定的に左右する要素があることにも気づきました。それはインターネットの帯域、速度です。
「何だ、そんなことか」と言われるかもしれませんし、「1Gbpsの光回線を引いておけば十分だろう?」と思われるかもしれません。筆者も4G LTE回線くらいあれば何とかなると思っていましたが、そうでもなさそうなのです。
まず、なぜコラボレーションにネット回線の速度が関係するかと言われると、映像ももちろんですが、音です。複数人の会議に細いネット回線の人が混ざっていると、その人がマイクをONにすれば途端に参加者全員に耳障りな低音質のノイズが載ってしまいます。下手にみなさんイヤホンをしていると、それだけで嫌になってしまうわけです。
もう1つ「1Gbpsの光回線を引いていれば……」という話も、ダメでした。通常のNTT東西の光回線は常に1Gbpsが保証されているわけではなく、地域の負荷によってその速度は上下します。さらにマンションの場合、建物に引き込まれた回線を入居者で分け合うことになるため、入居者がみんなオンライン授業を受講したり、リモート会議を行なったりすると、途端に速度が落ちます。
普段、Fast.comの速度チェックで100Mbps以上出ていても、平日午前中は10Mbpsを割り込むことも珍しくなく、結果的に前述のような不快なビデオ会議を余儀なくされてしまうのです。「1Gbpsの回線なのに……」と嘆くと同時に、根本的なインターネット回線の再構築の必要性を強く感じた次第です。とはいえ、これは個人では何ともしがたいため、建物のオフピークを発見する方法を考えた方が早いかもしれません。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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