訪問歯科医療のエアロゾル感染を家電用品で対策
5位は、歯科医の間で院内感染リスクが高いとされている、治療中のエアロゾル(空気中に漂う飛沫)感染の問題に対応するアイデアが提案された。主に訪問医療で使用することを想定し、既存のドライヤーに装着できるアタッチメントを3Dプリンターで作成し、状況に応じてリストバンドやクリップタイプ(ハンズフリー)で使えるようにした。メンバーにパナソニックの製造現場関係者がいたことで、ラピッドプロトタイピングで製作可能という具体的な提案になった。エアロゾル暴露の可能性は、全身麻酔で挿管チューブを抜く時にも高いことから、訪問先だけでなく院内で使えるかもしれないと臨床工学技士から意見が寄せられた。
具体化に向けた情報共有ですぐに実現できる活動につなげる
後半ではアイデアの具体化に向けた討議が行なわれ、連携先のひとつである「スマートサプライ」の活動が紹介された。東日本大震災をきっかけに設立されたスマートサプライは、現場が求める物資やサービスを手遅れにならないうちにダイレクトに届ける支援システムである。たとえば、現場が必要な用品を先に購入して届けた後に、領収書の明細を元に寄付で募るという方法などを行っている。病院は物資の購入ルートや寄付を気軽に受け付けられないことから、過去に行ったノウハウを応用して解決できる方法を参加者と一緒にこれから検討していきたいとしている。
NPOまもるをまもるからは昨年から開発を進めていた、医療現場の課題やニーズを写真に撮って可視化し、情報を共有して解決につなげるプラットフォーム「evaGraphy(エヴァグラフィー)」を紹介。今回の状況を受けて前倒しでアプリが公開されたという。また、行政ではものづくりの町として知られる東大阪市が、臨床工学技士からのアイデアに基づいたものづくりのアイデアを募集していることも紹介された。
ほかにも参加者からはブリコラージュして使えるアイデアとして、特殊発砲ポリスチレン性の簡易で建てられるドームハウス、光触媒機器などの紹介や、感染症予防に対するリテラシーを高める教育ツールの開発やイベントの実施、発想の方法として設定したゴールを目指すのではなく、身近にある方法でやれることからやるという考え方でものごとを実現するエフェクチュエーションを取り入れてはどうかという意見も出された。
今回のニーズソンは感染症という複雑な問題がテーマであったにも関わらず、たった一晩でさまざまなアイデアが寄せられた。ブラシュアップすれば即時、実現可能な提案もあり、医療関係者からのフィードバックでは、医療機器を安く作れても廃棄する費用や手間が負担になるといった医療ならではの問題が関係者から指摘され、知られざる課題が表面化する機会にもつながった。
主催者の1人である、まもるをまもるの西垣孝行氏は「コロナ禍は災害であり、一時期だけの問題で終わらずこれからも繰り返し対応が必要と意識づける必要がある」と話す。今後も必要に応じてニーズソンやイベントを開催し、多くの人たちとの協力を継続していきたいと話し、イベントを締め括った。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります