東京大学協創プラットフォーム(東大IPC)は5月28日、新たにオープンイノベーション推進1号投資事業有限責任組合(AOI1号ファンド)を組成したと発表。
AOI1号ファンドは、東京大学周辺でのオープンイノベーション活動の推進を目的とし、「企業とアカデミアとの連携によるベンチャーの育成・投資」というコンセプトで組成。各業界のリーディングカンパニーと連携した新会社設立やカーブアウトベンチャー、およびこれらのアセットを有効活用するベンチャーへの投資を通じ、新たな分野におけるオープンイノベーションの成功事例創出を目指すとしている。また投資だけでなく、東京大学関連ベンチャーと企業との協業関係構築も積極的に進めていくという。
イノベーションを巡るグローバルな競争が激化するなか、日本においてもオープンイノベーション活動は進展が続いてきた。しかし、昨今の新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた急速な景況感の悪化により、この流れは大きくブレーキがかかろうとしている。
東大IPCは、従前の「協創1号ファンド」に加えてAOI1号ファンドの投資を開始することで、より直接的に日本のオープンイノベーション活動の発展への寄与を図るという。
カーブアウトベンチャーの新たな事例創出のため出資
AOI1号ファンドの投資先として、武田薬品工業からカーブアウトした創薬ベンチャー、ファイメクスと、ユニ・チャームの子会社であるOnedotへの出資が決定している。
Onedotは、中国市場で育児メディア「Babily」運営および企業の中国デジタル戦略・越境ECなどのデジタルマーケティング支援を手がけている。今回の増資により、ユニ・チャームの連結子会社から外れ、独立したベンチャー企業としての成長を目指すという。
国内製薬業界では、カーブアウトベンチャー企業がIPOやM&AのEXITで一定の成果を生み、その事例も増えてきている(関連記事:ライフサイエンス領域の識者が語る、国内カーブアウトベンチャーへの期待)。その一方で、今回Onedotを投資対象に選んだ理由として、東大IPC 担当パートナーの水本 尚宏氏は以下のように語ってくれた。
「カーブアウトという文脈でいうと、Onedotの良さは中国でビジネス展開を日本のベンチャーでできていることです。中国は特にメディアへの法規制が厳しく、リーガル対応が重要となります。中国ですでに高いシェアを有しているユニ・チャームが立ち上げの支援をしてくれたのは大きかったと思います。
カーブアウトという視点でも、日本のベンチャーという視点でも稀有でありますが、増やしていくべき事例と考えました。カーブアウトというと製薬という印象が強いので、それ以外にも新しいロールモデルの創出を試みたいという思いですね」
東大IPCは今後も、東京大学周辺のイノベーション・エコシステムの発展およびそれを通じた世界のイノベーションを加速するため、ベンチャーキャピタルやオープンイノベーションを推進する企業とのさまざまな連携を通じ、アカデミアの生み出す学術・研究成果を活用するベンチャーの創出、育成および投資を進めていくとしている。
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