週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

ピンチを攻めに変える戦略、ダイキン社長に聞く

2020年05月29日 13時46分更新

今回のひとこと

「実行計画を未定とする企業が多い。こうした有事には、経営トップのリーダーシップ次第で、企業は強くもなり、衰退もする。やるべきことを明快に示し、その方向に向けて社員を引っ張れるかどうかが鍵だ」

(ダイキン工業の十河政則社長兼CEO)

 ダイキン工業が打ち出した2020年度の連結業績見通しは、売上高が前年比8.6%減の2兆3300億円、営業利益が43.5%減の1500億円、経常利益は44.2%減の1500億円。そして、当期純利益は41.4%減の1000億円とした。

 2020年度は、5カ年の戦略経営計画「FUSION20」の最終年度であり、当初は、売上高2兆9000億円、営業利益3480億円を目標に掲げていたが、新型コロナウイルスの影響で、この数値目標は降ろすことになる。

 だが、この時期に、2020年度の業績見通しを明確に打ち出したところに、ダイキン工業の十河政則社長兼CEOの強い意思が感じられる。

ダイキン工業 代表取締役社長兼CEOの十河政則氏

 「正直なところ見通しが立たない。だが成り行きに任せるのは経営ではない。不透明ながらも、現実を直視し、そのなかで定めるべき目標は定め、決めるべきことを具体化し、実行に移すのが経営である」と、十河社長兼CEOは述べる。あえて通期見通しを発表した理由はそこにある。

コロナウィルスの影響を4つのケースで想定

 実は、十河社長兼CEOは、2020年度の状況を、4つのケースで想定しているという。

  1. 新型コロナウイルスの影響が2020年6月(第1四半期)で収まるケース
  2. 9月(上期)まで続くケース
  3. 年末となる12月(第3四半期)まで続くケース
  4. そして、最後が、2021年3月まで1年間続く最悪のケース

 「現時点で打ち出した数字は、上期までの影響が出るケースに近い形で策定したものである」とし、「事業ごと、地域ごとに、影響と今後の見通しは一律ではなく、各国政府の方針や市場動向も異なる。そうしたそれぞれの事業、地域の現場、現実を踏まえた現時点の見込みで計画を策定したものであり、今後の新型コロナウイルスの影響や市場の動向によって、一気に業績のV字回復につなげていくことも考えている」と、終息が早期化すれば、一気に通常運転に戻すことを視野に入れる。

 だが、その一方で、「新型コロナウイルスの影響が、第3四半期以降にまで長期化する最悪のケースにも備えている。第4四半期にまで影響が出れば赤字となる可能性が高い。だが、その時に、赤字にならないように、なにをするべきかという施策も持っている」と述べる。

 「4つのケースにおけるすべてのアクションプランを持った上で、状況にあわせて打ち手を変えていくのがこの1年の取り組みになる。一度、実行計画を打ち出し、スタートは切ったが、刻一刻と変化する状況を的確に捉え、打つべき手を、先手、先手で打ちながら、柔軟に対応する。1ヵ月、2ヵ月単位で、計画を見直していくことになる」とする。

不透明な状況だから、敢えて実行計画を出す

 そして、十河社長兼CEOは、「国内企業を見渡すと、残念ながら、実行計画を未定とするケースが多い。こうした有事には、経営トップのリーダーシップ次第で、企業は強くもなり、衰退もする」と指摘。「先が見えないというのは不安であり、なかなか踏み込めない。だからこそ、やるべきことの方向性を、社員に明快に示すことが、経営トップには求められる。やるべきことを明快に示し、その方向に向けて社員を引っ張れるかどうかが鍵だ。私がそれを示すのは当然であり、幹部にも率先垂範をお願いしている」と述べる。 率先垂範とは、意識や行動を変えるため、まずは自分から変わり、それを実践することを指す。幹部にも、やるべき方向性を社員に明快に示し、その実践を求めているというわけだ。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事