クラスコンピュータは、1993年設立のソフトウェア開発会社だ。創業以来、企業内システムの受託開発をメインに事業を継続してきた。2019年、創業26年目にして初の自社サービスであるオープンデータ活用プラットフォーム「Class Studio」をリリース。開発の目的や今後の展開を代表取締役社長の鈴鹿 守俊氏に聞いた。
クラスコンピュータが開発するオープンデータ活用プラットフォーム「Class Studio」は、公的機関や企業が公開しているオープンデータを地図上に表示するウェブサービスだ。公開データの緯度経度情報をもとに地図を自動作成し、グラフやヒートマップ、写真、ルート、時系列データのアニメーション表示といった多彩な表現ができる。
オープンデータから地図を作成するツールとしては、QGISが知られているが、PCへのインストールやデータの加工が必要で、初心者にはハードルが高い。Class Studioは、ウェブブラウザーにCSV形式のデータをアップロードするだけで、スマホやタブレットからでも簡単に地図が作れるのが特徴だ。
会社の資料や企画書に地図イラストを入れたいとき、Googleマップを使うのが手軽だが、余計な情報も含まれてしまいわかりづらい。地図ソフトなどを駆使して自分で作図するのは大変だし、外部に制作を依頼すると費用がかかる。
Class Studioを使えば、グラフ入りの地図資料が簡単に作れる。背景地図は、国土地理院の地図をベースに、表示倍率、配色や地図記号の大きさ、不要な情報を非表示にするなど、好みでカスタマイズできるので、用途に合わせて見栄えのいい地図が作れる。個人用途であれば無償で利用でき、作成したマップをClass Studioサイトで公開可能。ビジネス用途に限らず、学校の課題や研究、プレゼン用の地図やグラフ作成などにも役立ちそうだ。
世の中のあらゆる情報を地図から取り出せるようにしたい
Class Studioを開発した鈴鹿氏は、工業高等専門学校を卒業後、自動車部品メーカーのKYB株式会社に就職し、工場の設備設計や機械制御に携わる。30歳のとき、自分の作った製品を世の中に出したい、という思いから独立。しかし、いざ会社を立ち上げると目先の仕事に追われ、当初思い描いていた自社製品の開発に着手できないまま、時が過ぎていってしまったそうだ。
「依頼される仕事を受けるばかりでは、生き残れない。まずは何か専門性を持たなくては、と考えていたところ、地図エンジンの開発依頼があり、地図に焦点を定めて技術を磨いてきました」(鈴鹿氏)
地図と聞くと、Googleマップやナビゲーションなどを想像するが、企業の拠点情報、顧客情報、水道や電気、ガスなどのインフラ、自治体の災害対策といったあらゆる管理システムに使われている。クラスコンピュータが開発した地図エンジンは、多くの自治体、携帯キャリア、鉄道会社などの社内システムの中で動いており、近年は、平面的な地図だけでなく、3DやARなど最新技術を取り入れた空間情報システムの開発も手掛ける。
こうした長年の地図エンジン開発で培った技術をもとに開発したのが「Class Studio」だ。
「オープンデータは世界中にありますから、地図との親和性が高い。世界中の誰もがスマホから簡単に情報を取り出せるように、あらゆる情報が地図から取り出せるような世界を目指してClass Studioを開発しました」と鈴鹿氏。
グラフや画像入りの多彩なマップを高速に描画
多機能でグラフやシンボルを含む地図は、表示が重くなりそうだが、サイトに公開されたマップを開くと、すぐに地図が表示され、スクロールもスムーズだ。オリジナルマップを作成する場合のデータのアップロードも高速で、同社の計測では、国土数値情報の全国避難場所データのシェープファイル12万5927件をわずか約12秒でアップロードできたという。
この速さこそがClass Studioの最大の強みだ。
「弊社は20年以上地図エンジンを開発してきたので、昔の低スペックのPCでも効率よく高速に処理させるノウハウがあります。データ構造を工夫してキャッシュとメモリーを有効に使うことで高速化を実現させています」とのこと。
最近は生産性を重視したクラウド開発が主流だが、高速化にはハードウェア制御の開発で培った技術が役立っているという。
より多くの人にオープンデータと地図の活用を広めたい
Class Studioは、企業向けにオンプレミスやSDKによる基幹システムとの連携も提供しており、いくつかの大手企業から開発依頼を受けているとのこと。ただ鈴鹿氏としては、一般に無償提供することで、まずは多くの人に使ってほしいという。
「オープンデータに限らず、自作の住所録などでも地図が作れるので、白地図のように、子どもたちの学習教材、自分の活動の記録など、自由に使ってもらえるとうれしい。Class Studioのサイトに新しい発想のさまざまなオリジナルマップが登録され、みんなが利用できるポータルとして育てていきたいです」
今後は、学習教材や防災マップなど家庭で気軽に使える地図として活用してもらえるように、自治体や教材会社などとの提携も検討していくそうだ。
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