finalブランドを擁するS'NEXTなのだから、絶対に何かやってくれるはず。そんな期待にバッチリ応えてくれる完全ワイヤレスイヤホンが「ag」シリーズだ。最新機種の「TWS04K」は、個性的で充実したサウンドで、シンプルながら質感が高く使いやすい。そんな魅力を兼ね備えた製品に仕上がっている。
あなたのイヤホン、本当の低域聞こえてる?
TWS04Kは5月1日に発売済み。直販価格は1万5800円。1万円台後半から2万円のレンジは、ノイズキャンセル機能などは持たないが、音質面は手を抜かないハイクラスの完全ワイヤレスイヤホンが数多く投入されている価格帯だ。
サンプル機を試聴して、まず感じたのは“低域の深さ”だ。ほかの完全ワイヤレスイヤホンでは(場合によっては有線イヤホンでも)あまり感じたことのない、沈み込みの深さ、量感、そして歯切れよさを兼ね備えたサウンドだ。60Hz以下の重低音がよく聴こえ、エレキベースの一番下のオクターブやドラムのキックなど、音楽の基礎となるリズム帯がズンズンと前に出てくる。
良質な低域が鳴れば、聞きなれた曲の印象も変わってくる。たまたまSpotifyのレコメンドに上がっていた曲(堀江由衣「Romantic Flight」)を再生してみたが、ボーカルとそれを追いかけるストリングスの伸びやかな旋律の下に、これまで隠れていた低域が顔を見せて不意を突かれた。細かに刻まれたビートが、たまに主旋律と呼応しながら曲にアクセントを与えている。この曲にはこんなグルービーな魅力もあったのだとハッとさせられ、そこに驚きがあった。
ピラミッド型のトーンバランスで、低域が最も強く聴こえ、その支えの上に曲の中心となるボーカルや、ストリングス・ギター伴奏などが乗る様子は安定感がある。パッと聞き、携帯プレーヤーのEQで低域を全開に上げたような雰囲気もあるが、低域にかぶってボーカルの歌詞が聞こえにくなったり、中高域のディティールがつぶれたりしない点は、さすがfinalの音作り。どの帯域も明瞭さの点では申し分なく、特に低域の音離れの良さが優れている。一方で、高域などはきつくならないようにコントロールされており、全体に柔らかく優しい印象。2時間、3時間と聴いても疲れにくいチューニングになっている。
さらに詳しく聞きこむと、楽器ごとに綿密に設定された音の配置やパンで振る動きなどもよく再現されているのが分かる。スピーカーではなくイヤホンのため、音場は前方ではなく、頭内(もしくはやや後方)に展開されるのだが、個々の音が立体的に配置される感覚があり、そして空間の広がり(反響の大きさ)などもしっかりと伝えてくれる。このあたりも、ほかのイヤホンではあまり感じることのない長所と言えるのではないだろうか。
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