少しゲーミング性能に関して深掘りしてみよう。今回テストしたBravo 15は、内蔵GPU(Vega7)とRadeon RX 5500Mを負荷やアプリごとのプロファイルに基づいて自動切り替えできる設計だ。
まずは「3DMark」を使ってグラフィックの描画パフォーマンスを比べてみよう。外付けのRadeonを使った時のスコアーの他に、内蔵GPUだけを利用した場合も合わせて比較してみる。3DMarkのバージョンはBravo 15が2.11.6866、FX505DYが2.9.6631だが、スコアーに互換性はあるため直接比較することとした。MacBook Pro 16インチモデルに関しては、Radeonを使用した時のスコアーのみを比較する。
昨年レビューした前世代のRyzen Mobile搭載ノートPCに搭載されたGPUがRadeon RX 560Xなので、Bravo 15に搭載されたRX 5500Mが勝つのは当たり前だが、性能はほぼ2倍近い。
ここまではPCMark10でも判明したことだが、内蔵GPUに関しても前世代のほぼ2倍。CU数が1基減っていてもスコアーが上がっているのは驚きだ(CPU性能の向上も大分入っているのは確かだが)。ただRyzen 7 4800HのVega7でも、内蔵GPUだけでゲームが快適に楽しめる、というレベルではく、外付けのGPUが必須であることを示している。
PCMark10のGamingテストグループでも明らかになったが、ここでもMacBook Pro 16インチモデルのスコアーは控えめどころか、Time SpyにおいてはBravo 15がMacBook Pro 16インチモデルを50%以上上回るスコアーを出しているのは驚きだ。
次に「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ」の公式ベンチマークを利用する。画面解像度はBravo 15の画面解像度と同じフルHD固定とし、画質は“最高品質”と“高画質(ノートPC用)”の2通りとした。このベンチでは外付けのRadeonでのみ計測している(以降同じ)。
前世代のFX505DYだと画質をやや落として“とても快適”判定が得られるが、フレームレートで見ると平均60fpsをなんとか突破できる程度のパワーだった。だが第3世代Ryzen MobileとNavi世代のRadeon RX 5500Mを搭載したBravo 15だと、最高品質設定でも平均60fpsオーバー、画質を中程度に落とせば平均85fpsで動かせる。
MacBook Pro 16インチモデルだと画面のスケーリングが上手く機能せず、フルHDの画面がディスプレー左上にドット等倍で表示されるなど、MacBook Pro 16インチモデルのBootCamp環境は、ゲーミングにおいてはやや癖の強い環境であるようだ。
続いては「レインボーシックス シージ」でも試してみた。現行ビルドだとAPIにVulkanを指定できるが、データを流用する関係でDirectX 11で計測した。画質は“最高”としたが、レンダースケールを50%(描画はHD相当となる。デフォルト設定)と100%(ピクセル等倍)の2通りで検証した。フレームレートの計測は内蔵ベンチマーク機能を利用している。
Bravo 15のディスプレーは120Hzないし144Hzの高リフレッシュレート(IPS)を備えていることを武器にしているが、上記の結果からレインボーシックス シージの“最高”設定でも、そのスペックを十分に引き出せることが分かる。レンダースケールをドット等倍(100%)にすると平均97fps程度まで下がるが、それでも60fpsを余裕でキープできている点は素晴らしい。
これまでeスポーツ寄りのゲーミングノートPCは、インテル製CPUベースなものが非常に多かったが、最新のRyzen MobileとRadeonもそろそろ選択肢に加えても良いだろう。MacBook Pro 16インチモデルの立ち位置は3DMarkやFF14ベンチと共通するものがある。
最後に目線を変えて、動画エンコードツール「Handbrake」を利用し、再生時間約5分のH.264動画をフルHDのMP4動画にエンコードする時間を比較してみたい。Handbrakeのバージョンは、Bravo 15とMacBook Pro 16インチモデルが1.3.1、FX505DYが1.2.1となっている。動画エンコード設定はプリセットの「Super HQ 1080p Surround」を利用した。
昨今のメニーコアCPUで動画エンコードをすると、使われないコアが多数出てくるが、8C16T程度のCPUなら全コアフルロードになる。ゆえにRyzen 7 4800Hを搭載するBravo 15がコア数半分のFX505DYに勝つのは当たり前だが、所要時間が4割程度に縮まったのは素晴らしい。そしてMacBook Pro 16インチモデルに対してもCINEBENCHと同様に大きな差をつけている。
もしMacBook Proのボディーがもっと厚く冷却重視だったら、もう少しいい勝負になった可能性はあるが、Ryzen 4000シリーズ モバイルプロセッサー搭載ノートPCは、クリエイティブ用途でもインテル製CPU搭載ノートPCに負けないパフォーマンスを持っている、といえるだろう。
まとめ:開発機での検証ながらパフォーマンス向上の凄さを実感できる出来映え
以上でRyzen 4000シリーズ モバイルプロセッサー搭載ノートPCのパフォーマンスチェックは終了だ。開発機での検証であり、メーカーが提示してきたベンチ結果より若干低い値が出てしまったものの、前世代Ryzen Mobile搭載ノートPCと比較しても凄まじい性能向上を果たしている。
ボディー設計が違うため若干割り引いて考える必要はあるが、同等コア数のCPUとGPUを搭載したインテル製CPU搭載ノートPC(MacBook Pro 16インチモデル)を上回るなど、これまでインテル一強だったノートPCの勢力図を塗り替えるだけの実力を備えている。
昨年の段階ではまだ“低価格ノートPC”の選択肢としてRyzen Mobileが少し存在する程度だが、今年は各メーカーが完成度の高い第3世代Ryzen Mobile搭載ノートPCを本格的に投入することが予想される。
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