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コロナ禍で業界ごと揺れる春アニメチェックも

ソシャゲと噂話の2020年1月アニメ~バンドリ・マギレコ・どるふろ・花子くん

2020年04月30日 18時00分更新

投稿人気推移とpixivの全体の傾向

 期間毎に投稿数の推移を見ると上位がよく入れ替わっており、今回圧倒的な人気のある作品はなかったことがよくわかります。ニコ動では「マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝」「BanG Dream! 3rd Season」「異種族レビュアーズ」の3作が比較的上位に目立ち、pixivでは前半は「どるふろ -狂乱篇-」、中盤は「地縛少年花子くん」、終盤は「BanG Dream! 3rd Season」とトップが入れ替わっていました。

 放送期間中に伸びたタイトルではほかに「痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。」や「SHOW BY ROCK!!ましゅまいれっしゅ!!」、pixivでは「ID:INVADED イド:インヴェイデッド」などが挙げられます。

ニコ動における動画投稿数の7日毎順位の推移(1月アニメ作品別)。ニコ動の傾向より男性人気の高い作品は青、女性人気の高い作品は赤、中間的な作品は黄色に塗った

pixivにおけるイラスト投稿数の7日毎順位の推移(1月アニメ作品別)。pixivの傾向より男性人気の高い作品は青、女性人気の高い作品は赤、中間的な作品は黄色に塗った

 pixivで人気の高かったキャラクターとしては「地縛少年花子くん」の「花子くん」「八尋寧々」が挙げられます。この2人は全年齢イラストの投稿数1位2位でした。ほかでは今回新編集版が放送された「Re:ゼロから始める異世界生活」のレム、期間中に誕生日を迎えた「BanG Dream! 3rd Season」の「氷川紗夜」などがよく投稿されています。

 R-18イラストは「異種族レビュアーズ」の投稿が非常に多く、同作品の両性具有の天使「クリムヴェール」、有翼人のウェイトレス「メイドリー」がトップ2でした。

 男性投稿者は「どるふろ -狂乱篇-」、女性投稿者は「地縛少年花子くん」がトップ。両作品は海外投稿者数の1位2位でもあります。「BanG Dream! 3rd Season」「マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝」は男女ともに人気の高かった作品です。

 各国の投稿者では、韓国・台湾・インドネシア・タイ・アメリカでは「どるふろ -狂乱篇-」、中国・マレーシアでは「地縛少年花子くん」がトップ。どちらもpixivで投稿の多い各国で人気があります。また「ID:INVADED イド:インヴェイデッド」は国内タイトルですが中国で人気が高く、中国では上記2作品に次いで投稿が多いです。

 前期に続きソシャゲ関連タイトルが目立ちましたが、前期のFGO・アズレン・グラブル等と比べて突出した人気ではなく、これからの作品と言えるかと思います。3期目となる今回で着実に拡大したバンドリ、アニメとの相性の良さから高い注目のあったマギレコはアニメ・ゲームとも今後の展開が期待できる動きです。ドルフロはどちらかというと海外人気が中心でアニメも本格的な展開ではありませんが、国内外での確かな人気が感じられます。

 「地縛少年花子くん」は今期一番伸びた作品かと思います。女性・中高生を中心とした人気が伺え、今後の展開も期待されます。注目すべき点として日本だけでなく海外でも同様の人気がある点が挙げられます。

 偶然でしょうが今期は「マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝」「地縛少年花子くん」と、学校などの噂話を主要なモチーフとするタイトルが目立ちました。噂が一人歩きして買い占めなどの実害が起こる世相とよくマッチした期だったかもしれません。

2020年1月アニメのpixivでイラスト投稿数の多い出演キャラ。全体・全年齢(R-18以外)・R-18別。特に比率が高い項目は赤字とした

2020年1月アニメのpixivでのイラスト投稿および投稿者の傾向。特に比率が高い項目は赤字とした。人気国は海外投稿者の在住国でありpixiv上での自己申告による

自粛に翻弄される2020年4月アニメ

 最後に現在放送中の2020年4月アニメの2週目を終えた現在での傾向をみてみます。暫定的な数字ですので今後を占う程度の意味合いでご覧いただければと思います。

 今期も「プリンセスコネクト!Re:Dive」「シャドウバース」「アイドリッシュセブン Second BEAT!」「文豪とアルケミスト ~審判ノ歯車~」などソシャゲやネットゲーム関連のタイトルが目立ちます。ソシャゲ人気作のアニメ化も定番化してきました。人気タイトルの2期となる「かぐや様は告らせたい?~天才たちの恋愛頭脳戦~」が目立つほか、新作では「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…」が比較的注目されています。

2020年4月期アニメについて4月1日以降にニコニコ動画・pixivに投稿された各タイトル関連の作品投稿数。データは4月29日取得

 なお前期にも数タイトルでみられましたが、今期は世界的な新型コロナウイルスの対策に伴う自粛の影響を大きく受けており、人気タイトルの続編を中心に放送予定だったタイトルが複数来期以降へ延期、すでに放送が始まっている「アイドリッシュセブン Second BEAT!」等も今後の放送延期を発表しています。テレビアニメ周辺では、劇場アニメの公開延期、2月以降多数のアニメ関連イベントが中止など、さらに多くの展開が延期・中止されている現状です。

 外出が制限されている現在、テレビやネット配信のアニメは自宅にいながら楽しめる大変ありがたいものですが、その制作には国内外の活動自粛に伴う困難があり、また予定されたイベント開催ができない商業展開上の厳しさもあって、中止や延期を選択せざるを得ないのだと思われます。

 二次創作一般についても、コミックマーケットに代表される同人誌即売会の延期・中止により同人活動の発表の場が失われていることは大きな問題となっています。ネット上や同人誌委託書店を場とした試みなどが始められているのが現状です。

 本記事で調査しているニコニコ動画やpixivなどのネットで完結する二次創作については、これらの影響が考えられ、あるいは逆に外出自粛でかえって創作活動が拡大することも想像されますが、今回の1月・4月アニメの調査の範囲では上記を除き劇的な動きは増減ともあまり感じられません。こちらについては別途の調査を行なわなければ判断できない事柄と思われます。

 なお今回の記事に関連して編集より、テレビアニメの放送の延期などがあった場合に二次創作は増えるのか減るのか、という質問がありました。これに関して調査を行なっておらずデータに基づくものではまったくないので本当に個人的な印象となりますが、一概には言えないというのが素直な印象です。

 元々の人気、作品の性格、延期の期間、延期の事情、延期時期の競争タイトル等にもよると思います。たとえば今回紹介しているマギレコの元となったテレビアニメ「魔法少女まどか☆マギカ」は東日本大震災の影響で最終話2話が1ヵ月遅れの放送となりましたが、それ以前から非常に高い人気があり、シリアスな内容で、オリジナルアニメであり先の展開が予想できなかったこと、延期が1か月ほどで熱気を維持できたことなどの条件が重なって大きな話題となった例です。たとえば顕著な人気のない作品、原作のある作品などで同じことは起きないと思います。

 逆に近年多いソーシャルゲーム原作のアニメなどは二次創作人気がアニメ展開の影響をあまり受けないため、同じ期間で比較すれば放送延期の影響は少ないでしょう。

 むしろ延期自体より、延期に伴ってIPの商業展開の停滞や終了が起こってしまうほうが深刻と思います。それでも作品が終わったり何年も展開がなくても二次創作を作り続けるファンはいます。

 延期による影響はケースバイケースと思いますし、さらに言えばテレビアニメが何をきっかけでヒットするか自体がケースバイケースです。何かを予想できること自体がまれだと思います。個人としては起こったことを見ていければ良いなと思います。

 4月アニメについてはこうした自粛の影響なども含めて今後が予想できない部分があり、まだ様子見程度の結果です。注目していきたいと思います。

アニメ「プリンセスコネクト!Re:Dive」より第1話の公式配信動画
アニメ「シャドウバース」より第1話の公式配信動画
アニメ「アイドリッシュセブン Second BEAT!」より第1話の公式配信動画
アニメ「文豪とアルケミスト ~審判ノ歯車~」より第1話の公式配信動画
アニメ「かぐや様は告らせたい?~天才たちの恋愛頭脳戦~」より第1話の公式配信動画
アニメ「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…」より第1話の公式配信動画

告知
 ニコニコ動画やVTuberについて調査した同人誌を発行しています。新刊・既刊はCOMIC ZINメロンブックスに委託中。ご興味があればどうぞ。

筆者紹介:myrmecoleon
 趣味で同人誌やニコニコ動画関連の研究をしてる人。コミケ・ニコニコ動画・pixiv・deviantARTなどの調査を行ない、『ニコニコ動画統計データハンドブック2020』など同人誌としてコミケで頒布。2014年に自身の企画で「次元の壁をこえて 初音ミク実体化への情熱 展」を開催。元明治大学米沢嘉博記念図書館スタッフで元ニコニコ学会β実行委員。Twitterアカウントは@myrmecoleon

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