スマートフォンメーカーが端末だけを展開する時代は終わりを告げています。すでにシャオミは家電や日用品にも進出しており、スマートTVの販売台数では世界シェア5位にはいるほどです(AVC Revo調査、2019年上半期)。スマートフォン以外の製品でも自社品を使ってもらえれば、ブランドロイヤリティーも高まりますし、売り上げに占めるスマートフォン以外の割合を高めることでビジネスリスクを低減できるわけです。
さて、中国のスマートフォンメーカーは国内の5G需要の高まりに合わせるように新製品ラッシュが続いています。4月もオンライン新製品発表会が毎週のように行なわれているほど。その中で目立つのはやはり5Gスマートフォンですが、発表会の後半になぜかちらりとスマートフォン以外の製品も合わせて発表する例がありました。スマートフォンと一緒に発表するのだからその製品はBluetoothヘッドセットやスマートスピーカーと思いきや、なんと電動歯ブラシ。そう、スイッチを入れるとヘッドが振動して歯を磨いてくれるあの電動歯ブラシなのです。
ゲーミングスマートフォン「Red Magicシリーズ」を展開するNubiaは4月21日にSnapdragon 765Gを採用した低価格スマートフォン「nubia Play 5G」を発表しました。6.65型(3240x1080ドット)ディスプレーに4800万画素+800万画素+200万画素+200万画素の4つのカメラを搭載し、メモリー6/8GB、ストレージ128/256GBの構成。価格は最低モデルが2399元(約3万7000円)となっています。120Hz駆動のディスプレーや空冷ファンを搭載しており、このモデルもゲーミングに特化したスマートフォンです。
このnubia Play 5Gの製品発表会の終わりに、突如発表されたのがNubiaブランドの電動歯ブラシ「neo」です。スマートフォンメーカーの製品だからといってBluetoothを搭載して連携できるわけではなく、ごく普通の電動歯ブラシ。価格は199元、約3000円と妥当なところです。
しかも、赤外線による殺菌とファンによるブラシ部分の乾燥ができる、壁取り付け式の歯ブラシ収納ケースも提供。電動歯ブラシを売るだけではなく、ちょっと本格的な展開をしています。
実は他のメーカーも電動歯ブラシを出しています。同じ中国メーカーのMeizuも電動歯ブラシを販売中。価格は299元(約4500円)とNubiaよりも高価ですが高性能なようです。なお、交換用のブラシは2個で9.9元(約150円)と良心的。こちらもBluetoothなどは搭載されていません。マニアックなMeizuのスマートフォンを使っている人にもオススメと言えるでしょう。
一方、ファーウェイも電動歯ブラシを販売しています。といっても、こちらはファーウェイブランドではなく、傘下のHonorのスマートフォンと同じ通販サイトで販売される「Honorプロセレクション」の1つとして、中国大手歯ブラシメーカーLabooo社の製品を扱っています。なお、同セレクションはファーウェイがカバーしきれない家電製品をピックアップして販売するもの。いわばアップルストアで販売されているアップル以外の製品のようなものでしょうか。
こちらの電動歯ブラシはBluetoothを内蔵しファーウェイのIoTプラットフォーム「Hi Link」に対応。スマートフォンにアプリを入れて連携が可能で、電池残量など歯ブラシの状態の他、歯の磨き具合などを記録することができます。こちらも価格は199元です。
そして家電と言えばシャオミ。シャオミはスマート家電ブランド「Mi Jia」から電動歯ブラシを3種類展開、うち2機種はBluetooth内蔵で、Mi Jiaアプリと接続することでブラッシング状態などを記録できます。さらに水流で歯間洗浄ができるジェットウォッシャーも出すなど、オーラルケア製品も万全の品ぞろえです。
子供向けの電動歯ブラシは握り部分のイラストをステッカーで張替えできるほか、ゲーム感覚で楽しめる歯磨きアプリも提供。スマートフォンの画面に歯のイラストが表示され、現れるばい菌キャラを実際に口の中で歯ブラシを当ててやっつける、というもの。これなら子供が楽しく毎日歯磨きしたくなります。
しかし、一体なぜスマートフォンメーカーが電動歯ブラシを出すのでしょうか。よくよく考えてみると、歯ブラシって1日で朝と夜(人によっては昼も)、必ず使う日用品です。それなら、歯ブラシを通して自社ブランドに触れてもらうおという戦略はありかもしれません。また、Nubiaは4月13日にブランドロゴを変更したばかり。電動歯ブラシには新ロゴが表示されていますが、そのロゴを浸透させるためにあえて電動歯ブラシを出したとも推測されます。
他にもスマートフォンの販売促進用品として、歯ブラシを割引や無料でセット提供することもできますね。電動歯ブラシなら自分が使わなくとも友人などにあげることもできますから、ここでも宣伝効果が期待できます。はたして他のメーカー、特に中国メーカーも電動歯ブラシ市場に参入するのでしょうか? 中国の家電量販店に行くとスマートフォンブランドの電動歯ブラシがずらりと並んでいる、なんて面白い光景が見られるようになるかもしれません。
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