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永遠に輝き続ける最速の淑女、日産「フェアレディZ NISMO」に謁見

2020年04月07日 12時00分更新

文● 栗原祥光(@yosh_kurihara) 車両協力●日産

街乗りだからこそ
トルクフルなエンジン特性が活きる

 エンジンに火を入れると、野太い排気音が室内に響き渡ります。ステアリングはとても重く、しっかりとした質感。ギアを入れてクラッチを繋げば、すぐにフェアレディZが「トルクの塊」であることを実感することでしょう。都心ではアクセルを「踏む」というより「足の親指で操作している」感覚。2速ホールドで都内が走れてしまいます。もっとも、この手のクルマを購入した人は、そのような走り方はしないでしょう。1速で発進。2速に入れて、3速に入れたら信号が待っていて、シフトダウンしながらブレーキを踏む。ニュートラルに入れて信号を待つ。それが楽しいのです。

街を走るフェアレディZ NISMO

 街乗りにおいて、フェアレディZ NISMOはその美質を逆に牙としてドライバーに襲い掛かってくるのは否定できません。ハンドルは重く取り回しもよくはありません。何より乗り心地が結構硬く、スピードバンプではゴツゴツっとした振動が体を襲います。イマドキの電子制御サスにすれば解決するのでしょうけれど、フェアレディZに乗っていると「クルマは悪くない、今いる場所が悪いんだ」そんな天動説ともいえる感情が湧き上がってくるから不思議。「オレのいる場所はココじゃない!」という意志を、フェアレディZ NISMOから強く感じるのです。

走行するフェアレディZ NISMO

 言うまでもなく、このクルマが棲むべきべき場所は高速ワインディングであり、サーキットでしょう。サーキットでこのクルマを運転したことはありませんが、高速ワインディングは「最高!」の一言。NISSAN GT-Rなどといったハイパフォーマンスカーと比べたら、戦闘力という意味では劣るかもしれません。ですが「クルマを運転する」という「スポーツカーの楽しさや質感」と「オレはコイツのハンドルをいつまでも握っていたい」という感情は、フェアレディZ NISMOの方が遥かに上。

 ロングノーズショートデッキ、2輪駆動、大排気量自然吸気エンジン、マニュアルトランスミッション……。古典的スポーツカーの不文律が今でも味わえるよろこびは、国産車ではフェアレディZでしか味わえないとものです。さらに日産モータースポーツのDNAを五感で強く感じ、体験できるよろこび。地面に食いつき離れない安定感と、2本のタイヤを引きちぎるか如くのトラクションは、ドライバーに走る快楽を与えてくれます。さらにフェアレディZのワンメイクレース「Z-Challenge」や、「NISMOドライビングスクール」などに参加すれば、このよろこびがより一層高まるでしょう。

フェアレディZ NISMO

 ナビをはじめとする便利機能だったり「プロパイロットがあればいいのに」と感じたりもしましたが、一方で「このままでいい」「これからもZの火を消さないでほしい」と願うのは、やっぱりフェアレディZは特別であり、最高の美しさだから。青い空の下、富士山を背景に西伊豆のワインディングロードを駆け抜ける姿は、きっと天空で舞い踊るマイフェアレディの姿と相違ないのでは? そんな妄想を駆り立てる国産車は、もう数少ないものとなりました。Zにはロマンがあり、速さもある。フェアレディZ NISMOは、S30Z時代からから色あせることのない魅力が詰まった1台でした。

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