YouTubeやNetflix、Amazon Prime Videoといった動画ストリーミングサービスは、テレビに先駆けて、4Kなどの高画質ビデオが視聴できるようにしました。Appleも、Apple TV 4Kを登場させ、自社サービスのApple TV+を高画質で配信しています。
家にある(壊れたので、正確には「家にあった」)4Kテレビを最大限に生かせるのは、テレビでありながら、テレビ放送ではなくストリーミングの方だった、という状態が長らく続いていました。しかし2018年12月からは国内でも4K/8Kの放送がBSでスタートし、チューナーさえあればパネルの解像度を最大限に生かせる「テレビ」放送を楽しめるようになりました。
こうしてストリーミングの方が先に高画質化される状況は、米国などの諸外国でも続いています。しかしコロナウイルスの世界的な流行で、あらためて放送と通信の違いがフォーカスされるようになってきました。
一昔前のキーワードだった「放送と通信の融合」
一昔前「放送と通信の融合」という言葉がよく聞かれました。言葉の定義からすれば、通信の方が大きな概念。「通信」の中に、映像を一方的に送出し、多数の人が受診する「放送」が含まれることになります。
こうした法律上の区分とは別に、視聴者はデバイスで判断するかもしれません。一般的な家庭であれば、テレビは放送、電話は通信、というのがわかりやすい区分です。しかしこれも、ケータイの時代にだんだん曖昧になっていきました。
そしてワンセグの登場です。ワンセグケータイなるモノが登場し、特に力を入れていたシャープは、ディスプレイが90度回転して横長画面を展開できる、テレビブランドを冠した「AQUOSケータイ」を登場させました。デバイス的な融合が果たされます。
しかしもう少し融合は複雑です。放送を補完するケーブルテレビ会社が同軸ケーブルを活用してインターネットの常時接続サービスや電話サービスを提供したり、通信事業者が光ファイバーを生かして、ネット接続とは別に光放送サービスを提供したり。
そしてそもそもケータイでNetflixやPrime Videoを見ている場合、動画をネットワークでストリーミングして見ているわけで、個別のデバイスのリクエストには応えているものの、映像が見られる体験自体は放送と同じです。
アクセス数が膨大になったらどうなる?
このような“体験自体は同じ”という状況は、通常時は当たり前かもしれませんが、インターネットを通じた映像配信にとって、新型コロナウイルスは厳しい現実を突きつけました。
世界中の大都市で、外出禁止や不要不急の外出の自粛となるなか、家にこもってストリーミングサービスを楽しむ人が増えたことで問題が生じました。増え続ける視聴者を、サービス側がさばききれない事態に陥ったのです。
ストリーミングサービス大手のNetflixは、視聴者の増大によって、米国東部時間の3月25日正午頃から米国やヨーロッパでサービスが一時つながりにくくなる事態が起きました。これを受けて、Netflixは通信量を25%少なくする措置を欧州以外にも展開して対処しています。
そのほかにも、YouTubeやApple TV+、Amazon Prime Videoなどのストリーミングサービスも、帯域を把握して映像を配信する措置を執りました。これはサービス自体がダウンしたり、つながりにくくすることを防ぐとともに、世界中でインターネットの通信量が増える中、帯域を空けて通信を円滑にする意味合いもあります。
テレビには、その番組がどれだけ見られているかを測る指標に「視聴率」があります。国民的なスポーツやイベントなどは、視聴率50%に近づくこともあり、日本人の2人に1人はそれを見ていたことを意味します。もちろん視聴率調査はサンプリングによって実施されるため、必ずしも正確な数字ではありませんが。
とは言え、たとえばサッカー日本代表戦で視聴率が50%近くなったとしても、テレビ放送が「混雑により見られなくなる」ことはありませんよね。ここに、放送と通信の違いがあります。
通信には、ネットワークにもサービスにも、さばききれる人数やデータ量の限度があることを、あらためて認識させられました。いや、今まであまり気づかなかったのは、ひとえにネットワーク技術者やサービス提供者のご尽力のたまものだと思います。
ただし、今回のように世界中のトラフィックが急増する中、1人あたりの通信量を減らす工夫が必要になったということでした。
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