週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

「HCJ2020」企画展「サービス業向け次世代技術EXPO/キャッシュレスTech」レポート

セルフ、ロボット、負担軽減がキーワード ホテル飲食向けソリューション展示

2020年04月17日 10時00分更新

 2月18日から21日までの4日間、幕張メッセにてHCJ2020が開催された。HCJ企画展示である「サービス業向け次世代技術EXPO」「キャッシュレスTech」では、少子高齢化による人手不足、コストダウンによる人員削減など多方面に課題を抱えるホテル業界向けに、多くの省力化ソリューションが展示されていた。

 NSJブースでは、チェックインからアミューズメントまでセルフで行なえるソリューションを紹介。キオスク端末は多言語に対応し、パスポートチェックやクレジットカードによる支払いまで宿泊客がセルフで手続きできるのが特徴。

 AirHostブースでは、リモートロックと組み合わせたセルフチェックイン、チェックアウトソリューションを展示。チェックインをするとスマートロックの解除キーがメールで送られ、チェックアウトまでコードが有効になる仕組み。

 スキャナーやキオスク端末を製造販売しているPFUでも小規模事業者向けに、パスポートのスキャンとOCRを行なえるスキャナー「fi-800R」と「fi-65F」を展示していた。「fi-800R」は、パスポートの厚みに対応して、高速でスキャン。パスポートに含まれるMRZ(Machine Readable Zone:機械読取領域)をOCRし、旅券番号や氏名、国籍など情報をメタデータとして抽出しインデックス情報として出力できる。

 「fi-65F」は平面型スキャナーで、増刷したパスポートなどにも対応。標準ではMRZのOCRには対応しないが、導入に際して個別相談を受け付けるという。これらのスキャナーは、小規模宿泊施設のフロント業務への導入を想定しているほか、自動チェックイン装置の構成部品としても訴求してゆきたいということだ。

 ロボティクスコーナーでは、ユニークなものから実用性の高いものまで、多くのロボットが紹介されていた。

 オチュアは、自走式サイネージにオペレーターの姿を映し出した接客ロボットを展示。複数拠点の接客を遠隔地から行なえるというものだ。

 アスラテックが展示していた香港Rice Robotics社が開発したデリバリーロボット「RICE(ライス)」は、香港のホテルで試験的に導入されている。ルームサービスで頼んだ飲料などのお届けものを客室までデリバリーするというものだ。奇しくも、コロナウイルスで人と人との接触を避けなければならない現在の状況において活躍が期待されているという。

 かつてロボットの出展はスタートアップが多かったが、今回は大手企業の出展も目についた。富士通は、接客と調理を行なう異なるタイプのロボットを紹介していた。

 接客ロボットの「ロボピン」は、背面ディスプレーとスピーカーで来場者とコミュニケーション。ロボット自身はLEDランプとジェスチャーで対話体験を提供するというものだ。

 調理ロボットは、ロボットアームを駆使してコーヒーを淹れたり、レンジを使った調理を行なう。ロボットアームに取り付けられたタブレットの画面に表情が投影され、調理ロボットもコミュニケーションに参加するのがユニークだ。

 ベンチャーやスタートアップでは、精度やスピードなどテクノロジー面に偏った提案になることが多いが、テクノロジーのプレゼンテーションとは直接関係ないユーザー体験やコミュニケーションを含めた総合パッテージとして提案してきたのが斬新だ。

 もうひとつの大手、ソフトバンクロボティクスも、オフィス用床掃除ロボットを紹介。人手で掃除する場合と比較して、ダストを舞い上がらせたり掃除ムラを減少させることが可能。実際に試験導入も始まっているという。近い将来、オフィスビルで終業後このようなロボットが掃除をする風景が見られるかもしれない。

 テクノロジー面での目新しさが目立つHCJだが、ホテルレストランショーということで、従業員のための安全や健康に配慮するアイテムも多く見られた。

 事務用品メーカー大手のキングジムでは、人感センサーとLEDランプを組み合わせて、扉の向こう側に人がいるかどうか判別する「扉につけるお知らせライト」や、長時間立ちっぱなしでも足への負担を軽減する「疲労軽減マット」などが展示されていた。

 イーアクセスでは、ノンスリップのグリップパーツと靴本体、中敷などを組み合わせて職場のニーズに応じたカスタマイズができる「STICO」を展示していた。オプションでスチールトゥなども用意されており、安全靴としても使える。厳格なドレスコードには対応しないが厨房スタッフ、厨房とホールを中継するスタッフに向けとして、油で滑りやすい床でも転倒リスクを軽減する。

 ミドリ安全では、冠婚葬祭のドレスコードにも対応したノンスリップ、高反発素材を使用したワークシューズが紹介されていた。靴底は油汚れの床でも滑りにくいノンスリップ構造、素材で、踵には足の負担を軽減する高反発素材を使用。長時間の立ち仕事における足の負担を軽減する。興味深いのは、男性用、女性用で複数のデザインが用意され、フォーマルなドレスコードに対応したものもラインアップしているということだ。改良を加えてすでに何世代かバージョンアップされているということだ。

 OZONEMARTブースでは、オゾンを使用した空気清浄機の展示を行なっていた。元々は、消臭目的の機器だが、コロナウイルス問題にいちはやくブース対応し、清浄機によるウイルスの不活性化の提案をしていた。コロナウイルスで来場者は減ってしまったが、トレンドに対応したブース展示に切り替えてピンチをチャンスに変えようとするたくましさを感じた。

 個人的に興味を惹かれたのは、熟成肉を短期間で衛生的に熟成させることができる「エイジングブースター」だ。およそ200万円~という価格帯だが、通常何週間かかかる熟成工程が数日に短縮されるほか、微生物の付着がないためにトリミングが最小で済む。熟成のために貯蔵庫を長期間占有することもないので、スペース効率やコストパフォーマンスの向上が見込めるほか、廃棄の減少、需要の増減に柔軟に対応できるなど、熟成肉における課題の解決にも役立つ製品と言える。


 人件費を始め、コスト削減、省資源、人手不足などの課題に直面しているホテル、レストラン業界には様々な業界、業種から解決のための提案がなされている。直接コストを削減するだけでなく、付加価値で単価を維持したり、人手が必要なところに人員を割くために自動化やロボットでできることは機械に任せるなど、スタッフの負荷を下げつつ仕事を回すソリューション、製品の提案が多く見られたのが印象的だった。

 
この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう