週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

無観客試合から考えるテクノロジー

2020年03月19日 23時00分更新

中継と体験

 大相撲の無観客試合から神々しさを感じると同時に、空っぽの観客席を埋める方法について思いを巡らせてしまいます。確かに新型コロナウイルス対策で、多数の人が1つの空間に集まることは避けなければなりません。

 しかし物理的にに人が集まっていなくても、テレビを通じてたくさんの人が観戦していることを考えると、そのことが力士に、あるいは見ている人同士でお互いを感じることができれば、と思う部分があります。

 VRは、自分の視点において仮想空間の中に存在する仕組みですが、自分の手足を視野の中で見せることで、より自分がその空間に存在していることを実感できます。そういう実感を持つ仮想空間の中で、他者を表示することで、やはり同じ空間を共有しているという感覚が高まります。

 現状1つ問題があるとすれば、遅延です。目の前で試合が行われている時、観客たちは同じタイミングで反応します。しかし中継や仮想空間の場合、現地からの映像→参加者が手元で受信→リアクション→仮想空間に反映というプロセスがあり、いずれのタイミングでも通信と処理が伴います。例えば、中継映像とリアクションが1秒ずれてしまうと、だいぶ反応が鈍い観客ばかりだなとなります。

 スポーツの試合ならまだ良さそうですが、お笑いや音楽のライブだと、ちょっとチグハグになってしまいそうですね。

 その一方で、テレビを家族で見ていると、家では同時に映像を見て、同時にリアクションし、それを同時に受け取れますので、違和感はありません。当たり前のことですが、観る側の繋がりの単位を小さく、近くすることは、仮想的に一緒に観戦する連帯感を高めるヒントになるのかもしれません。

筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事