週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

待ち合わせ場所“ハチ公”からビジネスの場を作る試みとして開催

渋谷ハチ公ピッチにギャル、AIベンチャー、DJ、住職が集結

2020年03月17日 09時00分更新

 2020年2月18日、渋谷スクランブルスクエア15階SHIBUYA QWSで、ピッチイベント「HACHIKO PITCH」が開催された。本イベントは、待ち合わせ場所“ハチ公”からビジネスの場を作る試みとして、多様なコミュニティーから推薦されたイノベーターたちが出会いたい人に向けてピッチを行なう。今回は4つのコミュニティーから、ギャル、AIベンチャー、DJアーティスト、大手ゲームメーカーなどのイノベーターが登壇。また特許庁のベンチャー支援班も参加し、特許庁の取り組みを紹介した。

SHIBUYA QWSでピッチイベント「HACHIKO PITCH」が開催された

 推薦コミュニティーには、SHIBUYA QWS株式会社Branding Engineer天台宗 常行寺/寺社フェス向源株式会社EDGEofの4社が参加し、それぞれ3名のイノベーターを紹介した。

 SHIBUYA QWSの推薦するイノベーターは、「渋谷肥料」プロジェクトの坪沼敬広氏、「バブリースクール」のバブリー氏、特許庁ベンチャー支援班 関塚千晃氏の3名。

渋谷の生ゴミを肥料にリサイクル

 トップバッターには、SHIBUYA QWSのプログラム「QWSチャレンジ」に採択されたプロジェクト「渋谷肥料」のメンバー、坪沼敬広氏が登壇。渋谷肥料は、渋谷の街から出る飲食ゴミを有機肥料に再利用する取り組みで、現在は渋谷スクランブルスクエア内の飲食店から出る生ゴミを肥料化し、2020年内の販売を目指している。肥料の形や色、パッケージデザインなどにこれまでの肥料にはない新しいアイデアを盛り込むほか、屋上農園での利用や栽培キットなどの商品展開も検討中で、肥料の新しい活用方法を募集中だ。

「渋谷肥料」プロジェクト 坪沼敬広氏

ギャルのポジティブなマインドを令和社会へインストール

 「バブリースクール」は、2月1日から活動を開始したばかりのプロジェクト。リーダーのバブリー氏が提案するのは、ギャルのポジティブなエネルギーを渋谷の街から発信すること。多くの人にギャルを知ってもらい、仲間を増やすための施策として、ギャルメディアからの情報発信、次世代ギャルアイコンの発掘、イベントの開催を予定。本物のギャルや協力メディアなどを募集しているそうだ。

バブリースクール プロジェクトリーダー バブリー氏

特許庁の5つの施策でスタートアップの知財戦略を支援

 特許庁ベンチャー支援班の関塚千晃氏は、「スタートアップを支える知財~特許庁の支援プログラム~」と題し、スタートアップの知財戦略の必要性と特許庁の支援プログラムを紹介した。

特許庁ベンチャー支援班 関塚千晃氏

 スタートアップが自社の技術やアイデアを守り、企業価値として活用するには知財戦略が必要だ。特許庁では、スタートアップ支援施策として、1)知財アクセラレーションプログラム(IPAS)、2)知財コミュニティポータルサイト「IP BASE」による情報発信、3)海外展開を支援する「ジェトロ・イノベーション・プログラム(JIP)」、4)費用が3分の1になる「料金減免制度」、5)最短0.7ヵ月で審査できる「スーパー早期審査」の5つを実施している。なお「IP BASE」は会員向けコンテンツをリニューアルし、知財専門家の検索機能などが追加された。会員登録すれば知財専門家に個別にコンタクトを取ることも可能なので、知財に関心のあるスタートアップは会員登録をしてほしい。

特許庁のスタートアップ支援施策

マウスだけでAI開発できるプラットフォームを開発

 株式会社Branding Engineerからの推薦は、株式会社GAUSS代表取締役社長/CEOの宇都宮綱紀氏、Mantra株式会社の石渡祥之佑氏、株式会社アフロ&コーの山崎剛弘氏の3名。

 GAUSSは、AI競馬予測「SIVA」で知られるAIスタートアップ。現在は、AI開発専用のクラウドプラットフォームを開発中。そのほか、社内外のエンジニア仲間が集い、IoTや自動運転のラジコンなど自分が好きなものを作る活動もしているそうだ。

株式会社GAUSS 代表取締役社長/CEO 宇都宮綱紀氏

文字認識→翻訳→写植まで自動化するマンガ専用翻訳AI

 Mantraは、マンガの自動翻訳AIを開発する東大発ベンチャー。日本のマンガは海外からも人気が高い一方、翻訳のスピードとコストが海外出版の障害となっている。同社のマンガ翻訳エンジン「Mantra」は、ノイズの多いマンガの画像からの吹き出しを自動で検出し、文字認識、マンガ特有の表現による機械翻訳、吹き出しのセリフを写植する機能を搭載し、高速・高精度な自動翻訳を実現。翻訳コストは従来の50%〜20%まで削減できるという。現在、5言語でマンガを販売するサービスを公開している。

Mantra株式会社 石渡祥之佑氏

一生に一度は体験したい! ワクワクするイベントを企画

 Afro&Co.は、パーティークリエーター「アフロマンス」を中心に斬新なパーティーやイベントを企画している会社だ。泡まみれになって踊るクラブイベント「泡パ」、ビルの屋上でバスタブに浸かりながら映画を鑑賞する「バスタブシネマ」などのイベントを手掛けてきたクリエーター、アフロマンス氏が創立。最近では、映画『東京喰種 トーキョーグール』とコラボした「喰種レストラン」、佐賀県の「いちごさんバス」などを企画。ワクワクする体験を通して、商品やサービスとの出会いを作りたいパートナーを募集中だ。

株式会社Afro&Co. 山崎剛弘氏

形式にとらわれない仏教の表現を目指す「テクノ法要」

 宗派や宗教を超えたイベント「寺社フェス」を毎年開催している天台宗 常行寺/寺社フェス向源のコミュニティーからは、「テクノ法要」の照恩寺 朝倉行宜氏、一般社団法人バーニングジャパンの原田加与氏、DJのYummy氏が登壇した。

 「テクノ法要」は、極楽浄土をイメージした映像を流しながらテクノ音楽に乗せてお経を読む、新しいスタイルの法要だ。照恩寺の朝倉住職は、仏教芸術の歴史は新たな表現の変遷を表すものと捉えており、諸行無常を実践するためにテクノ法要を実施しているという。今後もさまざまな影響を受けながら自由な表現を続けていくそうだ。

照恩寺 住職 朝倉行宜氏

「ギブアンドギブ」のバーニングマン・リージョナルイベントを日本で開催

 バーニングマンは、米ネバタ州の砂漠で毎夏に開催されているイベント。主催者側からの宿泊場所、飲食、エンターテインメントなどは提供されず、すべて参加者の持ち寄りによってコミュニティーとアートを作り上げていくのが特徴だ。

 このバーニングマンと同じビジョンのローカルイベントが世界各地で開催されており、日本では2012年より開催している。現在の規模は400人弱。一般的な野外イベントと違い、 自己表現を極め、ギフティングマインドで回る小さな社会だ。バーニングジャパンでは、2020年の運営メンバーを募集している。くわしくは、Facebookページを参照してほしい。

一般社団法人バーニングジャパン 原田加与氏

次回のバーニングマンは火を噴くアートカー「ASURA」で参戦

 バーニングマン会場など世界中で活動するDJ Yummy。14年前に参加したバーニングマンでの体験からDJの道へ進み、世界中の野外フェスなどでDJとして活躍している。2018年、13年ぶりにバーニングマンに参加。次回のバーニングマンに向けて、頭が3つの折り鶴をイメージしたミュータントビークル「ASURA」の制作に取り組んでいる。3月下旬からクラウドファンディングもスタートするとのこと。

DJ Yummy氏

世界の高校生起業家とつながる場所を作りたい

 株式会社EDGEofからは、学生団体Acrossのメンバーとして活動する高校2年生の山口万由子氏、XR専門のゲーム会社、株式会社ENDROLLの前元健志氏、株式会社タイトーの児玉晃一氏が登壇した。

 都内の高校に通う山口万由子氏は、世界中の高校生起業家が集まれる場所づくりを提案。高校生のビジネスプランは日本市場に偏りがちなので、世界に通用するビジネスを考えるために、世界中の高校生とつながる場が必要と語り、場所の提供や出資者を募った。

山口万由子氏

本当に面白いARエンターテインメントを市場へ

 ENDROLLは、ARのエンターテインメントを開発するスタートアップ。“ARはおもしろそう”と期待値はあるものの、実際にはそれほどインパクトのあるコンテンツが出ていない。そこで、日本のAR業界を活性化するため、世界最大のARコミュニティ「AWE(Augmented World Expo)」の東京支部「AWE Nite Tokyo」を設立。ARクリエーターや開発者でワークショップやハッカソンを開催している。また現在は株式会社タイトーと協業し、絶対的に面白いARコンテンツを開発中だ。

ENDROLL 代表取締役 前元健志氏

スタートアップとの共創で新しいエンタメ体験を作る

 上述のENDROLLとタッグを組むのがゲームセンター業界大手のタイトーだ。近年はアーケードゲーム市場が縮小傾向にあり、同社でも新規事業の創出が迫られているという。そこでエンタメと体験を掛け合わせるリアルな遊び場を創出するため、2019年からスタートアップと新しいエンタメを共創するアクセラレーションプログラム「タイトーアクセラレーター」を開催。プログラムでは、ENDROLLのARのほか、マインドゆるネス・ブートキャンプなどを採択し、事業化に向けて進めているそうだ。

株式会社タイトー 児玉晃一氏

■関連サイト

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この特集の記事