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実証実験はなされても、実導入に進まない現状をどうとらえるか

日本のAI産業の現在が分かる「AI白書」が3月2日に刊行、IPAが会見

2020年02月27日 06時00分更新

厳しい環境下にある国内スタートアップ、米国との差が顕著に

 第5章の特集では、AIの社会実装を推進する取り組みとして、「エコシステム」および「AI人材」について深掘りを行った。この2つは、平成29年に設置した「AI社会実装推進委員会」で検討されたAIの実装課題8つの中からピックアップされている。

第5章の特集では、「AI人材」および「エコシステム」をAIの社会実装を推進する取り組みとして解説している

 特集の中で解説されている、スタートアップエコシステムへの期待について、遠山氏は「スタートアップが盛んなアメリカでは、Facebookやテスラのような巨大企業が次々に誕生し、AI関連の企業も多い。日本でもスタートアップは生まれているが、小規模なので単独での急成長は難しい。そこで、大学との共同研究やベンチャーキャピタルのスタートアップ支援といったエコシステムの中で育って行ってほしい」と話す。

第5章では、業種別にAIスタートアップの事例も紹介されている

 IPAは、アメリカの各地域におけるスタートアップエコシステムに注目。シリコンバレーやニューヨークなどの大規模なエコシステムだけでなく、ファンドや大学が集積している地域がアメリカ全土に点在しているという。AI白書2020では、IPAが訪問したビッツバーグのエコシステムや日本の地方都市で形成されているエコシステムを紹介している。

アメリカの事例を見ると、エコシステムが全土にわたって数多く形成されていることがわかる

「制度の整備や地域エコシステムの形成が進めばスタートアップも徐々に活性化していくだろう」と遠山氏は話す

 一方で、日本のスタートアップ環境は非常に厳しいと遠山氏。ベンチャーキャピタルの投資額はアメリカの1/50、起業に対する無関心者の割合も米国や英国、中国などと比較して最下位となっている。研究開発費や大学ランキング、ユニコーン企業数なども米中と比較すると圧倒的に少ない。ただし、国も手をこまねいているわけではなく「制度支援や地域エコシステムの形成施策といった、スタートアップの活性化施策は徐々に進行している。それらの支援が進めば、AIを活用したスタートアップも活性化していくのではないか」と遠山氏は話した。

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