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エジソンの蓄音機の生音が聞ける貴重体験をシャープがこの3連休に開催

2020年02月21日 15時00分更新

蓄音機からPC、ケータイまで!
シャープの歴史が詰まった「シャープミュージアム」

 奈良県の天理市にあるシャープミュージアム。シャープの創業者、早川徳次(実はスゲー、イケメンだったことが判明!)が作ったベルトのバックル、そしてシャープの社名の由来にもなっている「早川式芯自動繰り出し鉛筆」通称シャープペンから、昭和、平成、令和にかけたさまざまな製品が展示されている。

シャープミュージアムに展示されている「CZ-800C X-1」と「MZ-80K」! まじかーっ!

ラジオの研究をするシャープの創業者、早川徳治氏。何だよ! なんでこんなにカッコイイの!?

 しかし企業が運営する博物館なので、他の企業博物館と同様で「平日」しか営業していない。それゆえ興味があってもなかなか訪れられない、もどかしい博物館でもある。

 だが、来る2月22~24日の3連休は、休日なのにミュージアムがオープン! しかも特別展として「エジソンの蓄音機」や「ラッパみたいなスピーカーがついているラジオ」など写真でしか見たことのない、貴重品の数々が展示される。それだけで終わらないのがシャープミュージアム! なんと、エジソンの蓄音機などで、レコードを聞かせてくれるという、衝撃の催し物が開催される!

展示に先立って、一部を見せていただいた

 湿度と温度が管理されたガラスケースの中にしまわれているエジソンの蓄音機に、あまつさえ円筒式のレコードに針をおとしちゃう。100年近く前の貴重な製品なのに、しかも針もレコードも消耗品なのに、それに針を落とすだと! これを逃したら、あなたは一生蓄音機の音を生で聞くことはないだろう。

 理系やエンジニアはもちろんのこと、ファミリーで訪れれば懐かしい製品の話で盛り上がることまちがいなし! 子どもだって、コンセントもなく電池も入っていないプレイヤーから音がすることにきっと驚き、化学やエンジニアリングの目が芽生えるはずだ。

エジソンが発明した蓄音機の音が聞ける驚きのイベント

 「蓄音機」をご存じない方もいるかもしれないので簡単に説明しておこう。今音楽の記憶媒体と言えば、音楽CDが有名だ(ダウンロード販売でだいぶ淘汰されてしまった感があるが……)。音楽CDは、音楽のデータを0と1のデジタル信号に変えて、CDの記録面に0と1のデータを刻んで、音楽を保存している。

 しかし蓄音機は、声の振動を樹脂に記録している。ちょうど糸電話の糸の変わりに針をつけ、その針を回転する樹脂にこすりつけることで、表面に傷をつけている。この傷こそ音の波形であり、音楽のアナログデータなのだ。

 エジソンの蓄音機は、この振動をトイレットペーパーの芯のような樹脂に記録する「円筒形」タイプ。この円筒を一定速度で回転させるのはゼンマイ(ばね)だ。ただゼンマイは、めいっぱい巻いた状態と最後のゆるくなった状態では、力が変わってくる。そのため、回転数を一定にするガバナー(調速機)という仕組みが設けられている。

エジソンの蓄音機の中を開けたところ。画面中央にある円筒形の重りがついている部分がガバナーユニット。その後ろには、大きな筒上のゼンマイが見える

ガバナーの重り

 ガバナーの重りは遠心力で軸の外側に広がる。速度が速いと広がりが大きくなるので、回転の邪魔をして、結果的に回転が遅くなる。回転が遅いと遠心力で広がらないので、結果回転数が早くなる。この機構でゼンマイの力の変化が起きても、回転数は安定したままになる。

 企画展当日は時間の都合で、中を開けられないかも知れないが、ガバナーについている分銅が遠心力で広がり、回転が安定する「遠心力ガバナー」(遠心力調速機)として機能する。

 同様の機構はオルゴールにも入っている。それはクルクル回転する蝶の羽ののような部品だ。回転が速くなると羽が開いて風の抵抗を受け、回転数が一定になるようにしている。

 こうして安定した回転を皮のベルトとプーリーを通じて、円筒形のレコードを回すようになっている。

金色でトーマス・アルバ・エジソンのトレードマークが入っている。中央のaはアルバ。その左横には、皮でできたベルトとプーリーで、レコードのシリンダーを回している

これは知ってる人も多い
いわゆるレコードそのもの

 続いて見せていただいたのは円盤式。いわゆるCDやレコードタイプの樹脂だ。円盤タイプは、金属で原版のレコードの金型を作り、樹脂をプレスすることで、レコードを大量生産できる。かたやエジソンの円筒形タイプは、量産できなかったために、円盤型のレコードに切り替わっていった。

円筒形のレコード。量産する場合は、歌手の前にいくつもの機械を置いて、円筒形レコードに傷をつけていったという。1回の歌唱で作れるレコードは10枚程度だった

円盤型のレコードは、一度歌唱して金属の金型を作り、それで樹脂をプレスすることで何枚でも量産できた

 しかし円版の場合は、軸が一定回転で回ると、円の外側は速く、円の内側が遅く回る。すると外側は音がいいけど、内側に行くと音質が悪くなるなどの弊害もある。

 ここまでくると現代のレコードに近い形になるが、一番の注目したいのは(ピックアップ)ヘッド部分。電気を一切使っておらず、針は振動板と呼ばれるヘッドフォンのスピーカーのような部品に取り付けられている。

丸い部分が振動板。中央に付けられているのは針。針の支点がレコード針(力点)よりになっていて、振動板の作用点では大きく動くようになっている。また振動板は金属や雲母(マイカ)にすることで、周波数特性を好みに変えられる

 この振動板は、雲母(マイカ)の場合もあればアルミのような金属もあり、今のオーディオマニアを同じで、自分の好みの部品を使って、再生でできる周波数帯の調整が可能だ。

 なおアームの中は空洞になっていて、針の動きを動きを拾った振動板は、その音をアームの中の空洞(船の連絡用の伝声管と同じ)を通って、スピーカーにつなげてる。とはいえ、電気的なスピーカーというものはない。

アームも金管楽器のように根本に行くと太くなっているのが分かる

 こうして振動板から音が出るスピーカー部分までは、金管楽器のホーンのような形になっていて、徐々に音が増幅されて最終的に蓄音機から大きな音が聞こえるようになっている。

ホーンが音を大きくしているのは、メガホンと同じで分かりやすい(写真はラジオ用のスピーカー)

スピーカーにあたる音の出口は、木で作られた四角いラッパ型になっている

 ホーンは非常にわかりやすいが、製品によってはホーンを木製にして、機器の内部に埋め込んだものもある。つまり音量ホーンが決めるというワケだ。

「コロンビア グラフォノラ」1924年製(大正13年)は、音の出る前面開口部が、スウィングドアのスリットになっていて、開きを調整することで、音の大きさが変わる

 「コロンビア グラフォノラ」の場合は、ホーンの音の出る部分にシャッターを設けて、これを全開にすると最大音量、閉じると最小音量になるという、古代のボリュームもついていた。

 さてこれらのプレイヤーはSP盤用のプレイヤーだ。40歳代以降の方ならご存じの通り、僕らが知っているレコードは、30cm位のLP盤と、中央にアダプタをつける通称ドーナツ盤(EP盤)がある。いっぽい回転数は、LPが33rpm、EPが45rpmとなっている。イベントで展示されるSP盤は、78rpmなので一般に流通していたレコードとは違う点に注意してほしい。

「コロンピア グラフォノラ109A」1925年製(大正14年)。取っ手がついているポータブルタイプのプレイヤー

 もしプレイヤーがなくなってしまったが、戦前のSP盤レコードが手元にあるという方は、ぜひシャープミュージアムに持って行こう! 何十年も時を超えた音楽がよみがえるだろう。

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