16コア32スレッドの高性能CPU「Ryzen 9 3950X」と、ゲーミング性能に優れた「GeForce RTX 2070 SUPER」を搭載した、マウスコンピューターの「G-Tune HP-A」。本機はさらに水冷クーラーとPCIe4.0×4接続の高速SSDを搭載するなど、誰もがうらやましく感じる構成を実現したPCだ。
しかし、それに異を唱える者もいた。それがつい先日、自宅用にPCを新しく組んだばかりのジサトラハッチだ。
冗談交じりに「自分で組まずに『G-Tune HP-A』買っとけばよかったんじゃないの~?」と声をかけてみたところ、笑顔のまま目の奥の笑いが消えていた。
「マウスさんのPCはもちろん素晴らしいですけど、なんていうのかな、ウチの子の方がコンパクトだし軽いしトータルでは勝ってると思いますけど?(ここでメガネをクイッと上げる)そもそも自作PCの良さというのはパーツを……(略)……AMD党としてはビデオカードにもこだわって……(略)……これはギャルゲーですから会社でプレイしてもセーフですよ?(以下略)」(ハッチ)
止まらないPC自分語り(と脱線した話題)を聞き流しつつ、そこまで自信があるなら公正に勝負して結論を出そうじゃないか、と提案。「え。いや、そもそもスペックが異なるPCを比べるのは(以下略)」などと言い訳をし始めたため、「へ~。怖いんだ。逃げるの?」と追い詰めたところ、「やってやろうじゃねえかよ この野郎!」と、本人もやる気満々に。
そんなわけで、8つの項目で「G-Tune HP-A」と「ハッチマシン」を対決させることとなった(一部フィクションを含みます)。
まずは両PCのスペックチェック、そして対決へ
第一勝負「拡張性」:ストレージや拡張カードで強化できるか?
実際に勝負を始める前に、「G-Tune HP-A」とハッチPCの主なスペックをチェックしていこう。CPUがG-Tune HP-AはRyzen 9 3950X、ハッチPCはRyzen 7 3800Xという時点で性能に大きな差がついてしまっているものの、32GBメモリー、PCIe4.0×4のSSDなど、それ以外の基本部分は意外と似ている。どちらも価格よりも性能を重視した、ハイスペック寄りの構成だ。
主なスペック | ||
---|---|---|
G-Tune HP-A | ハッチPC | |
CPU | AMD「Ryzen 9 3950X」(16コア/32スレッド、3.5GHz〜4.7GHz) | AMD「Ryzen 7 3800X」(8コア/16スレッド、3.9GHz~4.5GHz |
ビデオカード | GeForce RTX 2070 SUPER(8GB GDDR6) | ASUS「ROG-STRIX-RX5700XT-O8G-GAMING」(Radeon RX 5700 XT、8GB GDDR6) |
ストレージ | 1TB SSD(NVMe対応/M.2規格/PCI Express Gen4×4接続) | Seagate「FireCuda 520 ZP2000GM30002」(2TB SSD、NVMe対応/M.2規格/PCI Express Gen4×4接続)+ウェスタンデジタル「WD80EFZX-68UW8N0」(8TB HDD) |
メモリー | 32GB (PC4-25600 DDR4、16GB×2、最大64GB) | G.Skill「Trident Z Royal Gold F4-3200C14D-32GTRG」(DDR4-3200 16GB×2) |
マザーボード | X570チップセット(ATX) | ASUS「ROG Crosshair VIII Impact(X570、Mini-DTX) |
CPUクーラー | 360mm長大型ラジエーター搭載水冷クーラー | AMD「Wraith Prism」 |
インターフェース | USB 3.0×8、USB 3.1×2、USB 2.0×2、 DisplayPort出力×3、HDMI出力、1GbE LANほか | USB3.1 Type-C×2、USB3.1 Type-A×5、USB3.0×4、DisplayPort出力×3、HDMI出力、2.5GbE LAN |
電源 | 800W(80PLUS TITANIUM) | コルセア「SF750 Platinum」(750W、80 PLUS PLATINUM) |
OS | Windows 10 Home(64ビット) | Windows 10 Pro(64ビット) |
サイズ | 215(W)×490(D)×501(H)mm | 203(W)×375(D)×312(H)mm |
重量 | 約16.8kg | 約9.8kg |
CPUこそ劣るものの、ハッチPCはSSDが2TBと大容量、メモリーがデザイン重視のモデル、Mini-DTXという珍しいフォームファクターを採用など、趣味に走りまくったパーツ選びをしているのが特長だ。本人の言う通り、実に自作PCらしい構成となっている。ちなみに、スペックには記載していないところだと、PCケースにLED搭載ケースファンAkasa「Vegas R7」を追加し、ビデオカードの支えとして長尾製作所「SS-NVGASTAY02-S」を組み込むなどのコダワリがあるとか。
これに対し「G-Tune HP-A」は、高速CPUと高性能水冷クーラーという鉄板の組み合わせを採用。本体サイズこそ大きいものの、強力なCPUをしっかりと冷やし、静かで安定した動作が可能という、パフォーマンス重視の構成だ。
ここで突然だが、ひとつ目の勝負として「拡張性」を見てみよう。デスクトップPCは性能はもちろんだが、ストレージや拡張カードが増設できるかという拡張性の高さも重視されるからだ。
まずはそれぞれの内部を見て欲しい。
サイズが大きく違うだけに、内部の余裕は大きな差がついている。ハッチPCはすでにギュウギュウで、拡張の余裕がほとんどない。それに対して「G-Tune HP-A」はひと目でわかるほど余裕があり、拡張スロットへカードの増設も可能だ。
拡張性を重視するなら、この勝負は見るからに「G-Tune HP-A」の勝ちと言えるだろう。
第一勝負:「拡張性」……勝者「G-Tune HP-A」
「G-Tune HP-A」 ☆
「ハッチPC」 ★
第二勝負「CPU性能」:ベンチマークソフトでCPUスコアを競う
2つ目の勝負は、ストレートな性能勝負。コア数が多いうえ、Zen2でシングルスレッド性能も大幅に上昇し、ライバルのインテルを大きく引き離す性能向上を果たした第3世代Ryzenだ。
G-Tune HP-Aは16コア32スレッドの「Ryzen 9 3950X」(3.5GHz、最大4.7GHz)、ハッチPCは8コア16スレッドの「Ryzen 7 3800X」(3.9GHz、最大4.5GHz)だという時点ですでに勝負はついているようなものだが、実際に比較してみなければわからない部分もあるかもしれない。
ということで、CGレンダリング速度からCPUの性能を計測してくれる「CINEBENCH R20」を使い、スコアを比較してみよう。性能が高い方がスコアが高くなるため、シンプルにCPU性能の優劣が比較できる。結果は見てもらえると分かる通り、想像通りだ。
明らかな性能差があるためグラフにもしなかったが、ハッチPCの惨敗である。クラスの違うCPUなのだから当然といえば当然だが、注目はその比率。全コア使うCPUのスコアでは約2.0倍となっており、コア数はともかく動作クロックの差がキレイに消えてしまっているのだ。
一般的にコア数が多いほどスコアは上昇するが、その分動作クロックが低くなるため、コア数が2倍といってもスコアが2倍になることはまずない。また、コア数が増えるほど分散によるロスがあるため、たとえ動作クロックが同じだとしても、やはり2倍までのスコア差は出ないはずだ。
にもかかわらず、G-Tune HP-AがハッチPCの約2.0倍のスコアとなっているのは、G-Tune HP-Aに搭載されている水冷クーラーのおかげだといえよう。Ryzenは十分な冷却が行なわれれば高い動作クロックが維持できるため、そのぶん性能が高くなるわけだ。ハッチPCは純正クーラーとなる「Wraith Prism」とはいえ、空冷。しかもケース内が狭いというのもあり、冷却が得意とは言えない状況だ。この違いもあって、スコアで約2倍という差になってしまったのだろう。
ということで、2つ目の勝負も「G-Tune HP-A」の勝ちとなる。
第二勝負:「CPU性能」……勝者「G-Tune HP-A」
「G-Tune HP-A」 ☆☆
「ハッチPC」 ★★
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