週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

一生奉仕したくなるほど刺激的なアウディ R8

2020年01月19日 15時00分更新

文● 栗原祥光(@yosh_kurihara) モデル●星野 奏(@hoshino_kanade_

ヤバイ! ヤバイ! ヤバイ!
めっちゃ見られてるッ

 では、気になるクルマのステアリングを握って運転していただくことにしましょう。今回のステージは都内。R8がワインディングロードで良いのは当たり前で、クルマに乗り慣れていない20代女子が、交通量の多い場所でもスーパーカーを日常の脚として使えるのか、というのが、今回の裏目的だったりします。

車両に乗り込む星野さん。ミニスカートだとちょっと大変です。※試乗時はハイヒールではなく運転に適した靴で実施しています

 やや背をかがめて、サイドシルをまたぐようにして乗車する星野さん。車幅と車高の低さに戸惑いは隠しきれない様子で「普段乗っているクルマと感覚が違いすぎるんですよね。ホントに怖い。ぶつけたらどうしよう」とおっかなびっくり。そのおっかなびっくりに拍車をかけるのが、「めっちゃ硬っ! ちょっとした段差でガツンとくる」という乗り心地。スポーツカーゆえの硬いサスセッティングと、フロント245/35ZR19、リア245/30ZR20というペッタンコな幅広タイヤから来るダイレクトな振動がほっしーを襲います。

フロントの245/35ZR19タイヤ。タイヤはピレリP-ZEROを装着

 市販車でここまで硬い脚のクルマはスポーツ系車種を含めても、思いつくものはないほど。ジムカーナなどの市販車ベースの競技車両で公道を走ったら、きっとこうなるだろうな、というイメージが一番近いかもしれません。

 同じようにレーシングカー然としているのが、アクセルとブレーキペダル。走行モードを切り替えることができますが、基本的にはハイレスポンスで、ちょっと踏むだけで、軽く法定速度を超えてしまいます。普段使いではコンフォートモードにするのが望ましく、アクセルとブレーキの踏み間違えなどで、一気に踏んでも急発進しない等の対策がなされているようです。

ドライブセレクター画面。一番下のインディビジュアルはユーザーカスタマイズセッティング用

 これをダイナミックにしてしまうと、信号停止までの動作でブリッピングを起こしながらのシフトダウンなどが楽しめる反面、繊細なアクセルワークが要求されます。

 ブレーキもダイレクト感があり走りが好きな人にはたまらないのですが、結構な踏力を要するもの。取材先まで運転したのですが、正直なところ「これ、女の子には厳しいんじゃないかな」と心配になりました。案の所、星野さんからは「踏んでも止まらないんですけれど(涙)」との声が。これはブレーキのストロークが深く硬いため、足がきちんと奥まで届いていなかったのではないかと想像します。なお、ブレーキローターがドリルドタイプなため踏むと鳴きが発生。最初は車に慣れていないためガクガクした動きだったのですが、次第に慣れてスムースな運転となりました。

 レーシングカー然としているのは他にもあり、ヒルスタートアシストの効果が弱いためか、坂道発進の際に結構クルマが後退します。特にアイドリングストップをオンにし、エンジンが完全停止している時からの坂道発進における後退挙動は誰もが驚くことでしょう。

 マニュアル車のようにサイドブレーキを使えばと考えたところ、R8のサイドブレーキは電子式。アクセルを踏めば自動的に解除しますので、この機能を使うか、アイドリングストップを使わないのが望ましいように思いました。ちなみにアイドリングストップは、コンフォートモード以外のではオフになります。

 星野さんの希望もあり、主にコンフォートモードで試乗してもらったのですが、信号待ちの度にアイドリングストップが作動。一定時間立つと解除され、その度に「ヴォン」と勢いよくエキゾーストノートが周囲に轟き渡ります。これが結構目立ち、警ら中の警察官に何度も振り向かれる始末。星野さんは「ヤバいヤバい! 見られてるって!」と軽くパニックに(笑)。スーパーカーならではの体験でした。

 とはいえ、問答無用に楽しいクルマであることは確か。アウディらしい理性を保ちながらも、人が持つ闘争本能を刺激してきます。速度可変のパワーステアリングフィールは、低速時は車庫入れもラクラクな軽い動作でありながら、速度域が乗ってくるとズッシリと重たいもの。か弱い女子でも、ラクに車両が操作できますし、パワフルな男性でもズシッとした手応えに大満足。この塩梅は見事です。

ステアリングを握り、イグニッションを押す星野さん(の指)

 ステアを切ればスパッとノーズを切り替えるミッドシップらしい頭の入りのよさと、クリッピングポイントを抜けてアクセルを踏めば、4輪がしっかりと600馬力を超えるパワーを地面に伝えて、背中から蹴飛ばされるかの如くクルマが進んでいきます。なによりクルマがボディーサイズからは信じられないほどに軽快でありながら、地面に張り付いているように安定しているので、不安を覚えるところは一切ナシ!

 多少ラフな運転でもクルマがしっかりと受け止めて、ドライバーの意思通りにラインをトレースします。この快感はクルマって楽しい乗り物なんだなと、心底思わせるもので、最初はおっかなびっくりだった星野さんも次第に笑顔に。いい車って、ホント人を幸せにし、心を豊かにしてくれるものです。

 「ランボルギーニ・ウラカンと兄弟車ということですけれど、やっぱり違いますね。ウラカンは“どうだ!”という威張りをきかせるような魅力がありますけれど、R8は上品さの中に秘める狂気を感じますね。ジキルとハイドのような二面性というのかな。一般道で渋滞している中だと比較的大人しいですけれど、ワインディングとか行ったら、解き放たれたかのように、めっちゃ楽しそう。今日は都内での走行で、勿体ないというのが正直な感想で、地方のワインディング・ロードを気持ちよく走らせたいですね」という星野さん。わかっていらっしゃいます。

 「運転に慣れていない人にこそ、アウディ R8っていいかもしれませんね。このクルマだと繊細なペダルワークが身につきますし、幅は広いですが、周りの人が避けてくれますよね」。R8で得た繊細なペダルワークは、きっと普段の運転にも役立つことでしょう。「ホントに面白いクルマだと思います。ファーストカーには難しいけれど、セカンドカーとして欲しいと思いました。もちろん買えるような値段ではないので、手に入れるにはプレゼントでいただく以外に方法はないかな。でも貰ってしまったら、その方を一生奉仕しないとですね(笑)」。

シフトレバーに触れる星野さん。ちなみにDモードからさらに下げるとスポーツモードになる

 大排気量スポーツカー、という時代の流れとは逆行した存在でありながらも、現代的な扱いやすさを備えるとともに、相応の説得力で星野さんのハートをがっちりキャッチしたアウディ R8。やはり10年以上に渡り製造し熟成されているだけのことはあり、星野さんに「貰ったら、その人を一生奉仕する」と言わせるだけのエバーグリーンな魅力に溢れていました。試乗後、どこか愛おしい目でR8を見つめる星野さんが印象的でした。

 さて次回は、星野さんの趣味であるゴルフのバッグがしっかり積める、話題のスポーツセダンを紹介します。はたして星野さんのお眼鏡に叶うのでしょうか。

星野 奏(ほしのかなで)プロフィール

 

 10月30日神奈川県生まれ。歯科大卒業後に歯科衛生士の資格を取得。いっぽう、車好きなことからレースクイーンの道も志し、2017年「R'Qs triplets」でSUPER GTの表舞台に。翌年はGT500クラス「ARTA」で活躍。2019年はSUPER GT「T-DASHエンジェル」のほか、SUPER FORMULA「YOKOHAMA promotion model」としてサーキットに花を添えている。趣味はアクセサリー作り、ゲーム、ゴルフ、アニメ鑑賞。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この連載の記事