どーもこんにちは。テクニカルジャーナリストの西川善司である。
実は自分、ゲームの攻略本をメイン著者として2冊ほど手がけてきたほどのコアゲーマーである。
最近は小難しい技術系の記事を書かされることが多いので、そんなイメージはあまりないかもしれないが、同業者の間では結構知られている。もともとゲーセン出身のゲーマーなので、家庭用ゲーム機デビューはかなり遅め。傾向としては、アクション性の高いものを好む傾向にある。
そんな自分が、毎回楽しみにしているシリーズがプレイステーションプラットフォームで展開されている『アンチャーテッド』シリーズだ。シリーズ新作が出るたびに、シングルモードを難易度ハードまでを数回はプレイしているし、第3作の『アンチャーテッド -砂漠に眠るアトランティス-』は、ソニーのヘッドマウントディスプレー『HMZ-T1』を用いて3D立体視で一周したこともある。
今回、Playstation 4向けに1~3を1パックにした『アンチャーテッド コレクション』が発売されると言うことで、今回から3回に渡り、アンチャーテッドシリーズの魅力を語る大役を引き受けることになったのでお付き合いいただきたい。
衝撃的!……とはいかなかったアンチャーテッドとの出会い
アンチャーテッドシリーズの第1弾『アンチャーテッド エル・ドラドの秘宝』が発売されたのは、Playstation 3が発売された2006年の翌年、2007年12月。
その発売直前の2007年9月の東京ゲームショウにも出展された同作だったが、正直なところ、日本のユーザーからは「待望の!」という感じでは捉えられていなかったように思う。今でもよく覚えているが、東京ゲームショウ2007年で展示されていた体験版デモは城壁をよじ登って要塞に忍び込んでからの銃撃戦にスポットがあてられた内容で、当時の多くの日本のゲームファンは「洋物の三人称シューティングゲームのひとつ」という認識程度だったようだ。
↑東京ゲームショウ2007でプレイアブル出展されていた。 |
競合プラットフォームのゲームで“物陰に隠れながら撃つ”という“カバーアクション付きSFシューティング”が成功したことを受けてのフォロワータイトルという認識をする人も少なくなかった。
正直言うと、ボクも当時は似たような印象を抱いていたように思う。開発元のノーティドッグ社は『クラッシュ・バンディクー』シリーズを手がけてきたゲームスタジオ……という印象が強く、それまでのノーティドッグの作風とは180度違ったリアル志向のアンチャーテッドを“見くびっていた”のかもしれない。
↑開発元のノーティドッグ。アンチャーテッドのほかにも、圧倒的な映像美を誇った『The Last of Us』は記憶に新しいところ。 |
そんなわけで発売時は華麗にスルーしてしまったのだが、翌年、2008年のゲーム開発者会議(GDC。近年は毎年サンフランシスコで開催)に参加していたときのこと、毎年恒例の『Game Developers Choice Awards』イベントで “Best Visual Arts賞(最優秀視覚芸術賞)”にノミネートされていることに気がつき、興味がそそられたのであった。
GDCの『Game Developers Choice Awards』は、過去1年間にリリースされた優秀なゲーム作品を表彰する賞レースだ。商業的な成功などは度外視し、ゲーム開発者コミュニティが賞対象タイトルを選出し、投票もゲーム開発者達で行なう、ゲーム業界のアカデミー賞とも言われる賞である。そこにノミネートされるだけでも相当凄いことなので、「おや?東京ゲームショウでみたあの作品か」と思ったのだ。
ゲームグラフィックスはボクの取材テーマでもあったため、最優秀視覚芸術賞ノミネート作品を放っておくワケにはいかない。東京ゲームショウのときにはなかった興味が沸々と湧いてきたのだが、そこにきて同業者から「善司さん、アンチャーテッドってもしかしたら隠れた名作かも。やったほうがいいです。」というだめ押し的アドバイスもあり、サンフランシスコから帰国するなりすぐに入手してプレイしてみたのであった。
その後のハマリようは冒頭で述べたとおりである。
アンチャーテッドとはなにか?
ゲームタイトルの“アンチャーテッド(uncharted)”は“未知の領域”という意味。実はこれ、本シリーズのゲームタイトルであると同時に、このゲーム世界で放映されているケーブルテレビの架空のテレビ番組名でもある。
我々の住む現実世界でも、考古学と神話伝承を題材にしたどこまでが真実かわからないようなCS放送のドキュメント番組があるが、あのテイストだ。
このテレビ番組の“アンチャーテッド”で突撃レポーターを務めるのが本作のヒロイン、エレナ・フィッシャーである。可憐な見かけによらず男勝りの彼女は、絵に描いたような視聴率命のテレビ業界人で、番組存続のためならば手段を選ばない。
そんな彼女が第1作で追っていたのは“幻の黄金郷(エルドラド)伝承”。怖いもの知らずの彼女はこのテーマのアドバイザー的な人物として、うさんくさいトレジャーハンターのネイサン・ドレイクに接近する。
で、このネイサン・ドレイクは“アンチャーテッド”シリーズを通しての主人公。自身を、16世紀・大航海時代の貿易商人にして海賊、冒険家でもある歴史上の人物フランシス・ドレイク卿の子孫と信じて止まないお調子者の男だ。彼が本当にフランシス・ドレイクの子孫であるかどうかは、第2作以降をプレイしていくことで段々と明らかになるのでここでは詳細は触れない。
念のためにいっておくと、ネイサンは、こうした冒険活劇の主人公としては珍しく、けっこう……いやかなり“ヘタレ”な性格である。“不屈の挑戦心”……がないわけではないが、基本「危険なことはイヤだ」と思っている。実際、第1作では「早く帰りたい」、「こんなところに来たくなかった」と弱音を漏らすシーンが多い。
しかし、“危険”のほうが彼を好いているかのように、彼が危険から遠ざかろうとすればするほど冒険に巻き込まれてしまうのである。この辺り、映画『ダイハード』のマクレーン刑事と似ているかも知れない。そんな“ヘタレ”ネイサンも作を改めるごとにヒロイン、エレナとの関係が深まり、これに伴ってたくましさを身に付けつつある。彼の成長していく姿も本シリーズの魅力のひとつといえよう。
さて、ネイサンをサポートするのは無類の女好きのスケベじじい、詐欺師のビクター・サリバンだ。サリバンもシリーズを通して登場する名脇役で、ネイサンとダブルボケの漫才コンビで世界を股に掛けている。第1作の冒険では、自身の借金の一括返済を試みるために、ネイサンとエレナに協力をしている様子。
“雲を掴むような話”の黄金郷伝説だったが、ネイサンご一行が、海底から“ドレイク卿直筆の冒険手帳”を引き上げたときから事態が動き出す。なんと、その手帳に“黄金郷に関わる秘密”が、太平洋沖の名もなき無人島に隠されていることが記載されていたのだ!
さっそくその島に上陸するご一行。大航海時代当時のスペインが占領していた島で、そこかしこに16世紀前後の遺跡が。しかし、彼らがそこで最初に目の当たりにしたのは、川の浅瀬に打ち上げられた第二次世界対戦時の赤さびたナチスドイツ軍の潜水艦だった!
なぜ、400年前の大航海時代の遺跡島に第二次世界大戦の遺物が? 意味分かんない!? どうやら、ナチスドイツも黄金郷伝説を求めた結果、この島の存在を突き止めていたようなのだ。
どうだろう? 序盤のストーリーだけでも段々と興味がそそられないだろうか。“ナチスドイツが出てくる考古学アドベンチャー”と聞いてあのテーマ曲が脳内に流れ始めた人もいるのではなかろうか。
それはさておき、黄金郷伝説に真実味を実感してきたころ、サリバンは自分の借金の債権者、武器商人のガブリエル・ローマンとなぜかこの島で遭遇してしまう。サリバンに「金を返すか、ドレイク卿の手帳を渡すか、選べ」と迫るローマン。ローマンは、地元の海賊エディー・ラジャたちを雇い従え、黄金郷発掘に盤石の体制でこの島に上陸していたのだ。
結論を出せないサリバンに対してローマンは・・・・・・衝撃の瞬間を目の前にして呆然とするネイサン。ええぇぇっ!?
それにしても、なぜ武器商人の借金取りのローマンは、この島の存在を知っていたのか。いや、“この島の価値”をどうやって知ったのか。落ち着きを取り戻すネイサンの脳裏に、徐々に疑念が宿り始める。“その疑念”は、サリバンが島の別の場所でぴんぴんしている姿を目の当たりにして確信へと変わっていく。
そういえばエレナもなにか様子がおかしい。こんな危険な島から脱出をしようともいわず、ネイサンを執拗に冒険にそそのかす。そして、一方の海賊エディー・ラジャは、ローマンの“お宝独り占め”を懸念し、ローマンを出し抜く機会を虎視眈々と狙っている様子。
誰が敵で誰が味方なのか。
ちなみに、ここまでの内容は第1作のストーリーのほんの序盤の序盤である。ここまでの深い人間模様が展開し、登場人物各々の情念が交錯することで、プレイヤーの中の“アンチャーテッド”(未知の領域)がどんどんと拡大していくのだ。
アンチャーテッドの魅力は歴史ミステリーのSF的解釈にあり!
第1作『アンチャーテッド エル・ドラドの秘宝』のここで紹介した後の物語の顛末は、是非とも『アンチャーテッド・コレクション』を実際にプレイしてその目で確認して欲しい。
ここでひとつ補足しておきたいのは、この作品、ただの“お宝探しゲーム”、“銃撃戦ゲーム”で終わらないという点。この部分こそが、個人的には“アンチャーテッドならではの面白さであり最大の魅力”だと思っている。
どういうことか。
アンチャーテッドシリーズは、各作品で毎回最低でもひとつ、我々が住む現実世界に存在する不思議な歴史ミステリーを取り上げており、そこに、前述したような複雑な人間ドラマを展開した上で、独創の“SF的解釈(フィクション)”を盛り込んで、壮大なロマンをつくり上げているのである。
例えば第1作『アンチャーテッド エル・ドラドの秘宝』では、前述したように、歴史上、実在した大航海時代の冒険家、フランシス・ドレイク卿を取り上げている。
ドレイク卿は、実際、当時のイギリスの国家予算を超えるほどの金銀財宝をエリザベス女王に献上したことを賞賛されてナイト(卿)の称号を得ているのだが、どうしてそんな大量の財宝を得ることが出来たのか……。そこはちょっとした歴史ミステリーになっていて、世界中の歴史学者達が考察をしているわけだが、この部分に『アンチャーテッド エル・ドラドの秘宝』では、突拍子もないSF的解釈をもち込んでいるのである。
ネタバレになるのでここでは言えないが、ワクワクする物語とスリリングなゲームプレイを楽しみつつ、ラストに控える“SF”的どんでん返しを堪能するのがアンチャーテッド”の醍醐味となっているのだ。
第2作『アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団』のお題はマルコ・ポーロ伝説だ。
『東方見聞録』を記したベネチア人のマルコ・ポーロは、当時のモンゴルや中国などのアジアで20年滞在した後、600人、14隻の大船団で故郷を目指したが、18ヵ月後、ヨーロッパに辿り着いたのはわずか18人、1隻のみ。マルコ・ポーロは晩年「東方見聞録に記したことはほんの一部である」と語っており、失われた船団と乗組員の行方は歴史上のミステリーとなっているのである。
『アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団』では、女性冒険家クロエ・フレイザーを“裏”ヒロインに据えて、ネイト・エレナ・クロエの三角関係を演出。加えて腹黒い冒険家ハリー・フリンを登場させて気を抜けない人間関係を確立し、やはりラストには期待を裏切らない“とんでもSF的解釈”を盛り込んで物語を締めくくっている。
第3作『アンチャーテッド 砂漠に眠るアトランティス』のお題は20世紀初頭の英国軍人で考古学者のトーマス・E・ロレンスの不思議な人生に隠された歴史ミステリーだ。
トーマス・E・ロレンスは、当時のオスマン帝国に対して決起したアラブ人を、英国人でありながら様々なゲリラ戦術で支援した人物と知られ、その希有な生涯は映画『アラビアのロレンス』にもなったほど。ネイサンと今カノ・エレン、元カノ・クロエとの三角関係、プラススケベ爺さんサリバンはそのまま今作にも持ち越され、頼れるスキンヘッドマッチョのチャーリー・カッターがいつものご一行に加わり、チームネイトは賑やかさを増す。
少年時代のネイサンと若かりし頃のサリバンとの出会いも描かれ、人間ドラマは“特盛り”状態。トーマス・E・ロレンスの謎の行動の動機は一体なんなだったのか……この作品でも「そうきたか」という、SF的解釈で歴史ミステリーに独自の結論を打ち出している。
2016年には、PS4の性能をフルに引き出して制作されている第4作『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』も登場する。
今から『アンチャーテッド・コレクション』をプレイすれば全然『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』の発売には間に合うはず。そして、PS3で一度プレイしたことがある旧来ファンも、これまでシリーズを復習する意味でプレイするのもいいかもしれない。
■製品情報
タイトル : アンチャーテッド コレクション
対応フォーマット : PlayStation 4
ジャンル : アクションアドベンチャー
発売日 : 2015年10月8日(木)予定
希望小売価格 : Blu-ray Disc版 6900円(税別)
販売価格 : ダウンロード版 5,900円(税別)
CERO : C(15歳以上対象)
開発/監修 : Bluepoint Games / ノーティードッグ
※本作はシングルプレイモード(ストーリー)のみを収録しております。PS3『アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団』および『アンチャーテッド -砂漠に眠るアトランティス-』に収録されていたマルチプレイモードは含まれておりません。
■関連サイト
アンチャーテッド コレクション
(c)2007-2015 Sony Computer Entertainment America LLC
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6,046円
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7,452円
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