みなさん、こんにちは。いまは週刊アスキーの吉田でございます。さてワタクシは、8月上旬に東京ビックサイトで開催された「賃貸住宅フェア2015」で、NinjaLockというスマートロックを見て感動してしまいました。そこで、さっそく開発・販売元である(株)ライナフの滝沢社長に会ってきましたよ。
NinjaLockの開発元であるライナフは不動産に特化したシステム開発企業。滝沢社長は24歳から不動産投資を始めていたそうで、現在は数棟のビルのオーナーだそうです。 |
週刊アスキーでは、Qrio Smart LockやAkerunなどのスマートロックを紹介してきましたが、個人的にはこのNinjaLockを見逃していたことをかなり後悔しています。というのも、ほかのスマートロックにはない機能が満載だからです。
「スマートロックって何?」という方にざっくり説明しますと、ドアのサムターン(指で回す錠前)のところに専用のデバイスを取り付け、このデバイスと、iPhoneやAndroid端末などのスマホが無線通信することにより、サムターンの施錠や解錠ができるというシロモノです。後付けのオートロックとして使うこともできます。
スマートロックの基本的な機能については、ライナフのウェブサイトで詳しく紹介されています。 |
国内唯一のWi-Fi内蔵スマートロック
基本機能は競合製品と同様ですが、NinjaLockは本体価格が2万円程度でありながら、Wi-Fiモジュールを内蔵している点に注目です。他社の製品では、オプションで用意されていたり、そもそも対応していなかったりするので、これは大きなアドバンテージですね。
ライナフオフィスのドアに取り付けられていたNinjaLock。よく見るとわかりますが、底上げ用のアタッチメントが装着されています。 |
NinjaLockのパッケージ。バッテリーは別売りですが、単三電池×4本なので入手しやすいですね。 |
Wi-Fiモジュールを搭載することで実際に何ができるのかというと、Wi-Fi(インターネット)につながっているNinjaLockがあれば、ウェブブラウザーを経由して遠隔操作でロック解除が可能になります。
ウェブサイトの管理画面にIDとパスワードを使ってログインします。PCはもちろん、スマホからでもログインできます。 |
ウェブブラウザーの画面では、複数のNinjaLockを一元管理できます。 |
「遠隔操作」をクリックすると該当するNinjaLockをウェブ経由で施錠、解錠できます。 |
施錠、解錠のログは、使用者や日時のほか、操作方法も記録されます。TELになっている場合は、自動音声+プッシュボタンでの施錠もしくは解錠となります。 |
もちろん、ウェブブラウザー経由でユーザーも管理も可能です。ここからユーザーを招待することもできます。 |
BLEを使った解錠・施錠方法
まずは、スマートロックの基本機能である、BLEを使ったロック解除方法を紹介しておきましょう。利用できるのは、スマホもしくはタブレット端末です。まずは、スマホやウェブブラウザー経由で鍵を送る必要があります。鍵を共有されたスマホなどにはSMSで通知が届きます。
鍵を送られたスマホにはSMSで通知がきます。 |
ここで「NinjaLock」アプリをインストールしているスマホなら、そのままアプリの画面でロックの解錠や施錠が可能です。
「NinjaLock」の専用アプリ。使用するにはログインが必要です。 |
専用アプリでは、複数のNinjaLockを管理することができます。それぞれのログも参照できます。 |
解錠と施錠は、画面に大きく表示されるスライドボタンを操作するだけです。 |
プッシュボタン操作で解錠と施錠が可能
ガラケーや専用アプリをインストールしていないスマホでは、指定された電話番号に電話すると自動音声でメッセージが流れたあとプッシュボタンの1で解錠、2で施錠ができます。これは、NinjaLockをネット経由でコントロールしており、Wi-Fiモジュールを内蔵していないと実現できない機能です。なお、このサービスは利用者が通話料を負担するだけで使えます。
音声通話+プッシュ操作で解錠するには認証番号による承認が必要です。 |
専用の電話番号に電話をかけると自動応答のメッセージが流れて、プッシュボタンで施錠や解錠が可能になります。電話をかけた際にスマホ側の認証番号をチェックするので、この電話番号を他人も漏れても問題ありません。 |
ノック動作を組み合わせて高度なセキュリティーを確保
スマートロックは、省電力の無線通信技術であるBluetooth Low Energyが登場したことで一気に実用化に向けて動き出したプロダクトなので、Wi-Fi内蔵だとバッテリー消費が心配です。NinjaLockは大容量のバッテリーを積んでいるわけでなく単三電池×4本で動きます。しかしNinjaLockは、このあたりの懸念を斜め上のアイデアで払拭していることに正直驚きました。遠隔からのプッシュボタン操作で施錠と解除が可能と書きましたが、実はドアの前にいないと遠隔操作できないのです。タネ明かしをすると、BluetoothとWi-Fiのモジュールは通常はスリープした状態で、ドアをノックした際の振動で電源が入る仕組みになっているんです。アナログとデジタルをうまくミックスした方法ですね。
滝沢社長によると「ドアをノックしないとBluetoothとWi-Fiが起動しないことで、遠隔地での誤操作によるロックやロック解除が防げる以外にもセキュリティー面のメリットがあります」と教えてくれました。具体的は、「Wi-FiやBluetoothはオンの状態だと電波を出し続けているため、アプリケーションや専用機器を使うことでモジュールの所在を特定できてしまいます。特定されてもスマートロックが乗っ取られる心配はまずないのですが、常時モニターされることでハッキングの糸口を見つけられてしまう可能性もあります」とのこと。
MacやWindowsのBluetooth設定画面などでも周辺のBluetooth機器の名称やそのIDを取得できてしまいます。 |
すぐに剥がせる強力粘着テープにも注目
続けて、NinjaLockをドアに取り付ける粘着テープの秘密についても教えてくれました。「スマートロックは一度取り付けるとそうそう取り外さないとは思いますが、NinjaLockが採用している粘着テープは、高い粘着強度を備えながら簡単に剥がせるうえ、剥がした際に跡が残りにくいものを使っています」とのこと。実際に、滝沢社長がオフィスにあった冷蔵庫にNinjaLockを取り付けたり、取り外したりしてテープの性能を実演してくれました。
強力な粘着力がありながら、簡単に剥がせて跡が残らないテープを採用。 |
各種アタッチメントにより多くのサムターンに対応
スマートロックは、オフィスなどで使われているロックを前提に設計されているため、自宅などのドアには合わないという問題が発生しがちですが、滝沢社長によると「NinjaLockは市場の6~7割程度のロックには対応している」とのことでした。具体的には、MIWA(美和ロック(株))は4種類、GOAL((株)ゴール)は1種類、TOSTEM((株)LIXILのトステムブランド)は1種類のサムターンに対応しています。また、MIWAの1種類については今後対応する予定とのこと。
代表的なサムターン。ツマミの部分が多種多様で、中にはロック部分が盛り上がっているものもあります。NinjaLockでは写真左端のツマミ部分が四角いロックにも今後対応する予定とのこと。 |
サムターンの形状はさまざまなうえ、なかにはロックの部分だけが盛り上がっているものもあります。NinjaLockでは、別売りでアタッチメントを用意することで、各種形状のサムターンに取り付けられるのです。
ライナフのウェブページでは、サムターンの対応表が用意されています。購入前に必ずチェックしましょう。 |
アタッチメントも販売されています。サムターンの形状に合わせるための「サムターンギア」と底上げ用のアタッチメントを購入可能で、いずれも価格は500円と低価格。3Dプリンター用のデータが無償配布されているので自分でも作れます。 |
開発には3Dプリンターが大活躍
実は滝沢社長と話している間、隣で3Dプリンターがアタッチメントを作っていました。アタッチメントは1個500円とリーズナブルなほか、3Dプリンター用のデータを無償配布しているので、自宅や近所に3Dプリンターがある場合は自分で作ることも可能です。
取材中にずっと動いていた3Dプリンター。一度に6個のアタッチメントを作っているそうです。 |
滝沢社長によると、ウェブサイトでサムターンの互換性については詳しく紹介しているので、NinjaLockの発売後にサポートにかかってきた電話で取り付けられないという苦情はほとんどなかった」とのこと。一方で、「それよりも、Wi-Fiの設定ができない、スマホのBluetoothをオンにできないなど、スマートロックとは関係のない質問のほうが多い」そうです。
ちなみに、NinjaLockの開発でも3Dプリンターは大活躍したそうで、試作品のモックアップも見せてもらいました。
3Dプリンターで作られたNinjyaLockのモックアップ。 |
カスタマイズも可能
そのほか、オンラインショップでは、NinjaLockをカスタマイズするステッカーも販売されています。本体正面の部分に貼り付けるもので、現在は6種類が用意されています。価格は300円です。
前面にステッカーを貼ることも可能です。 |
ステッカーもオンラインストアで購入可能です。価格は300円。 |
ドアに近づくと自動的にロック解除する機能も搭載
低価格ながらWi-Fiを内蔵している点、標準機能でガラケーに対応している点、ノックしないとロックを解除できないというアナログ要素を取り入れつつセキュリティーを高めている点など、競合製品にはない特徴を備えたNinjaLock。8月に入り、Andorid版の専用アプリでは、鍵をシェアされたスマホを持ってドアに近づいただけでロックを解除する機能(オートオープン機能)も利用可能になるなど、さらに進化を続けていますね。なお、iOS版のオートオープン機能については、OSのBluetooth制御の制約などで動作が安定しないため、現在のところ公開を見送っているそうです。
NinjaLockの製品紹介動画はYouTubeで公開されていますよ。
(2015.08.23 19:00追記)ウェブブラウザーでの操作図版を追加しました。オートオープン機能についての詳細を追記しました。
■関連サイト
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