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スマートロック3社の社長が賃貸住宅フェアでガチ対決!いちばんオススメの製品はどれ?

2015年08月10日 17時00分更新

 みなさん、おはようございます。いまは週刊アスキーの吉田でございます。さて、8月4日と5日に、東京ビックサイトで「賃貸住宅フェア2015」という展示会が開催されました。イベント名のとおり、賃貸住宅に関する展示ブースやセミナーで構成されており、ブースでは賃貸住宅のリノベーションや住宅設備、建材などの企業の出展がメインでした。

スマートロック
「賃貸住宅フェア2015」はこのあと、10月15日、16日に大阪、11月25日、26日に名古屋でも開催されます。

 セミナーについても、不動産トラブル対策、相続・税務、不動産投資などの専門的なものが多かったのですが、ワタクシはその中で「スマートロックが引き起こす鍵管理革命」というセミナーに参加してきました。スマートロックを追いかけている人間にとって、実はこのセミナーはかなり興味深かったからです。

スマートロック
ワタクシが見た限りではここまで行列ができていたセミナーはありませんでした。スマートロックの注目度の高さがうかがえます。

 というのも、ゲストに呼ばれていたのが、Qrio(株)の西條社長、(株)ライナフの滝沢社長、フォトシンス(株)の河瀨社長。これら3社は、国内でスマートロックを開発・販売しており、その社長が一堂に会するのはおそらく初めてだったのではないでしょうか。

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Qrio(株)の西條社長。
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(株)ライナフの滝沢社長。
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フォトシンス(株)の河瀨社長。

 セミナーではまず、フォトンシンスの河瀨社長がスマートロックの概要を紹介しました。セミナー参加者は、賃貸不動産を運営している法人や個人の方が多く、スマートロックについてあまり詳しくないと思われることから、解説は基礎的なものでした。

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イチバンの若手ということでフォトンシンスの河瀨社長がスマートロックを解説。

 この記事では、フォトンシンスのウェブサイトで公開されているスマートロックロボット「Akerun」の製品紹介ページを使って、スマートロックの概要を紹介します。スマートロックとは、スマホの専用アプリからスマートロックを取り付けた扉のロックを開閉できるという製品です。スマートロックとスマホとの間は、Bluetooth Low Energyで通信します。

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サムターン錠の開閉をスマホでできるようになります。

 スマートロックでは、ネット経由で鍵をシェアできます。鍵には有効期限を時間単位で設定可能なので、不特定多数が出入りするような場所での利用に便利です。

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スマホで使える電子鍵は家族や友人などとネット経由でシェアできます。

 入退出の履歴を残すことも可能です。コワーキングスペースの利用時間やホテルのチェックイン・チェックアウトの時間を把握できるわけです。

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コワーキングスペースやホテルなどに取り付ければ、入退室のログ管理にも使えます。もちろん、鍵を持っている人単位でログを記録可能です。

 セミナーの内容は基本的なスマートロックの紹介だったのですが、これまでいまひとつハッキリしなかった各社の製品の特徴が明らかになりました。

Qrio Smart Lock

 まずQrio Smart Lockですが、販売台数は5000台を超えており、おそらく3社の中で最も売れている製品だと思われます。購入者は、一般が6割、法人が4割とのこと。すでに、アスキーストアやAmazonでの予約を受け付けていますが、まだ市場には製品が出ていません。クラウドファンディング「Makuake」で出資したユーザーには8月下旬に製品が発送される予定で、一般の購入者には9月以降の発送になります。アスキーストアでの販売価格は1万9440円です。

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ソニー(株)が協業していることでも有名なQrioの「Qrio Smart Lock」。
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Qrioのウェブサイトのほか、アスキーストアやAmazonなどで購入可能です。

NinjaLock

 NinjaLockは、今年5月から販売を開始しており「賃貸住宅フェア2015」でも出展ブースで即売を実施していました。NinjaLockの特徴としては、QrioやAkerunとは異なり、Wi-Fiモジュールを内蔵しているところ。これにより、音声通話とプッシュボタンを使って遠隔でロックやロック解除が可能です。また、各種サムターンに適合させるためのアタッチメントやNinja Lockに貼るステッカーなども販売しています。本体価格は2万1384円です。

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5月から発売を開始しているNinjaLock。
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5月発売の初期ロットは完売し一時的に在庫がない状態でしたが、現在は在庫が復活しています。ライナフのウェブサイトから購入できます。
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セミナー中に、ライナフの滝沢社長が音声通話によるロック解除のデモ実演。Wi-Fiを内蔵しているNinjaLockだからこそできる芸当です。なお、この機能を利用するには宅内や事務所内にWi-Fi環境を構築しておく必要があります。
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NinjaLockは、「賃貸住宅フェア2015」にブースを出展して即売会も実施していました。
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各種サムターンの形状に合わせたアタッチメントも揃っています。現在、サムターンギア3種類、底上げ用アタッチメント2種類、ステッカー4種類をラインアップ。

Akerun

 Akerunは、今年4月から販売を開始しており、AppBank Storeでも店頭販売しています。サムターンを完全に覆い隠すスマートロックで、室内から鍵を開けるにはAkerun本体を押すだけという点が他社の製品とは異なります。Wi-Fiは内蔵していないものの、Akerun Remoteというオプション品を組み合わせることで、ウェブブラウザーやガラケーからのロック/ロック解除やが可能になります。このAkerun Remoteは、ドコモやソフトバンクのデータ通信用SIMを搭載可能で、ネット環境がない場所にも設置できるのが強みです。

 Akerunは、(株)NTTドコモ・ベンチャーズと組んでホテルチェーンであるドーミーインでフロントスルーのチェックイン、不動産情報サイトのHOME'Sと組んだ空き不動産物件のスマート内覧、三井不動産などと組んだコワーキングスペースでの活用など、多くの実証実験が明らかになっており、最も実績がある製品と言えるでしょう。価格は3万8800円です。

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国内でいち早く製品化にこぎ着けたAkerun。
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オプション品のAkerun Remoteもすでに販売中で、スマホやガラケー、ウェブサイトからのロックの開閉に対応しています。
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Akerunは、室内からでもサムターンを回すことなくロックを解除できるのが他社とは異なるポイント。
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SIMカード内蔵のAkerun Remote。

結局どの製品がいい?

 スマートロックはオートロックのマンションのエントランスに取り付けるのは難しいため、個人的には法人向けが主戦場だと思います。もちろん一軒家で活用することは可能ですが、各社ともオフィスなどで利用できるサムターンを想定しているため、取り付けられないドアも多いようです。また、特定の人間が何度も出入りする自宅よりも、不特定多数が一時的に利用するホテルや時間貸しのオフィスなどへの導入が有効ですね。法人向けの大量導入となると極端な話、価格はあってないようなものなので導入コストは3社とも実際は横並びかもしれません。

 それを踏まえると、小売り価格的にはQrio Smart Lock、機能的にはWi-Fiを内蔵しているNinjaLock、トータルのソリューションとしてはSIM内蔵のAkrun Remoteで遠隔制御が可能なAkerunという感じでしょうか。

参加者との質疑応答

 セミナーの最後には質疑応答の時間が設けられ、参加者の大半を占める賃貸不動産のオーナーさんからの質問に三氏が答えるかたちとなりました。

 「オートロックのマンションのエントランスには取り付けられないのか?」という質問に対しては、3社とも現在は対応できない問題としたうえで、Qrioの西條社長は、オートロックを作っている会社にスマートロックの仕組みを組み込めないか働きかけているとのことでした。

 オートロックのエントランスの多くは鍵を直接差し込むタイプが多いため、後付けするのは難しいのが現状です。オートロックのシステム自体にスマートロックを組み込むのもかなりハードルが高いと思いました。

 「スマートロックを使えば、後付けのオートロックになるのか?」という質問には、やはり3社とも難しいと答えたうえで、Qrioの西條社長からは、通常であれば数百万円かかるが、スマートロックを利用すれば安価に提供できる可能性はある。クリアすべき問題としては、安定した電波の確保やインターフォンとの連動とのことでした。

 可能性はあるとはいえ、やはりオートロックのマンションのエントランスに導入するのはかなり先になりそうです。しかし、マンションのエントランスは無理でも、ゴミ置き場や勝手口のドアなどに取り付けて不法侵入や不法投棄を防止するという役割にはぴったりかもしれませんね。

 「機能のアップデートはどうやるのか?」という質問では、河瀨社長はAkerunではネット経由でファームウェアのアップデートが可能とのこと。滝沢社長は、NinjaLockについては自宅に近づいたら自動的にロックが解除されるといったソフトウェアレベルで実現できる機能については、スマートロック本体はそのままでソフトウェアやファームウェアの更新で追加できるとのこと。

 「スマートロックの仕様はずっと変わらないのか?」という質問については、3社とも現在スマートロックとスマートフォンの通信に使われてるBluetooth 4.0のBLE通信のサポートがなくならい限りは大丈夫とのこと。スマホ側でこの通信規格をサポートしなくなると、使えなくなるリスクはあるということでした。

 スマホ自体が普及したのはここ5年程度なので確かなことは言えませんが、Bluetooth 4.0ではiBeaconなどのビーコン通信にも使われているので、すぐになくなる可能性は低いと思われます。とはいえ、賃貸住宅は20年、30年などの長期運用が基本なので、5年や10年程度でのスマートロックの入れ替えというのは検討すべきかもしれませんね。

 「ログが見えてしまうのはセキュリティー上問題では?」という質問に対しては、Akerunはオーナー、管理者、ゲストという3種類の権限があり、権限を適切に運用すれば問題ないと、河瀨社長が答えました。具体的には、オーナーはサムターンの回転方向などの初期設定から鍵の発行まで、管理者は与えられた鍵のシェア、ゲストは共有された鍵を使える――という権限に分かれているとのこと。ほかの2製品についてもほぼ同じような運用が可能です。

 入居者が決まった場合、スマートロックを初期化することでオーナー権限を入居者に移譲すれば、不動産オーナーや管理会社が入居者の入退出ログを知ることはできないとのこと。一方で、スマートロックは家賃滞納者との交渉にも使えそうという意見も出ました。家賃滞納者は連絡がつかないことが多いが、スマートロックを活用することで遠隔でのロックやロック解除が可能になるため、オーナーや管理会社に連絡させるきっかけを作れるわけですね。

 そのほか、既存の賃貸不動産にスマートロックを採用するのはコスト高で敬遠される可能性が高いが、リフォーム時に物件の付加価値を高めるために取り付けるという需要はありそうだという意見も出ました。

 海外ではAirbnbなどのサービスとセットで使わること多いスマートロックですが、国内3社の製品が出そろう9月以降、さまざまな活用事例が生まれることでしょう。

■関連サイト
賃貸住宅フェア2015
Qrio Smart Lock
NinjaLock
Akerun

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