みなさん、おはようございます。いまは週刊アスキーの吉田でございます。さて先週土曜日に東京・大崎のゲートシティ大崎にあるゲートシティホールで開催された「アドビLINEスタンプセミナー」に参加してきました。
開始30分前に到着したのですが、プレス受け付けがどこかわからないほどの混雑ぶりで、結局一般の方の列に一緒に並んで受け付けを済ませました。参加者は女性が多く、ざっと400人程度。参加率が高かったようで、追加席を急遽設けるほどの混雑ぶりでした。
あとで知りましたが、この混雑ぶりにも納得。LINEクリエイターズスタンプは、売上上位10位までの平均収入が1億円を突破するなど、数年前のiPhoneアプリブームを超えるバブル状態なんです。しかも、売上1位を獲得したこともあるクリエイターの話が直接聞けるということで、女性が多いにもかかわらずねっとりした熱気に包まれていました。
LINEクリエイターズスタンプ市場とは?
最初に登壇したのは、LINE(株)の渡辺尚誠氏。「LINE Creators Market」の驚くべき実態を明かしてくれました。
LINE Creators Marketは、プロアマも年齢の制限もなく誰でも参加可能で、スタンプの売上の50%がクリエイターの収入になり、ワールドワイドでスタンプを販売できることが紹介されました。
iOSのApp Storeでは開発者の取り分は70%、Appleは30%なので、正直なところ売上をLINEと折半というのはちょっとLINEに有利かと思いますが、プラットフォームの普及度やスタンプの購入しやすさなどを考えると、クリエイターにとってそれほど悪い利率ではないのかもしれません。ただし、2015年2月1日以降に審査申請を行ったスタンプについては、スタンプ売上総額よりApp Store/Google Playなどの手数料(30%)を除いた50%(売上総額の35%)がクリエイターへの収益分配額へと変更になっています。
2015年5月現在、LINEスタンプクリエイターは40万人を突破し、総売上額は89億4600万円とのこと。
販売されているLINEスタンプのセット(1セット40スタンプ)は、15万セットを超えているそうです。
ワタクシはもちろん会場が最もどよめいたのが、LINEクリエイターズスタンプのサービス開始1年の売上実績が発表されたタイミングです。クリエイター別の販売額で、上位10位までを平均すると、なんと1億900万円。上位10位に入っているクリエイターには、スタンプセットを量産している人もいれば、数十セットしか作っていない人もいるので、スタンプ1セットだけで1億円というわけではありませんが、これはかなりスゴイ数字です。LINEスタンプの一攫千金感は半端ないですね。
渡辺氏は、来場者のモチベーションをさらに上げるデータも示してくれました。なんと、LINEスタンプクリエイターの半数以上はプロのデザイナーやイラストレーターではないということ。絵心がないと嘆いているアナタにもチャンスがあります。
さらに追い打ちをかけるようなデータも公開されました。LINEスタンプの制作ツールについて聞いたところ、なんと3割強のクリエイターが手描き(手書き)だそうです。最終的にはPNGファイルに変換する必要があるためパソコンは必要になりますが、パソコンで絵を描くくことに慣れていなくても、LINEスタンプを作成できるわけです。
LINEスタンプを実際に販売するには、クリエイターとして登録→スタンプ制作→テキスト情報とスタンプ画像の登録→審査→販売開始――という5ステップになります。渡辺氏によると、これまでは審査に3~6カ月程度かかっていたところ、現在では数週間、最短では1日というスピードで審査が下りるとのこと。
スタンプのフォーマットとして注意すべき点としては、画像の解像度があります。クリエイターから送られてきたスタンプ画像はiPhoneやAndroidなどの端末向けに拡縮するそうですが、解像度が奇数サイズの場合は画像が粗くなってしまうことがあるとのこと。また、解像度は72dpi以上のRGBカラーのPNGファイルでの制作が必須だそうです。
LINEとしては、日常会話でコミュニケーションに使いやすいもの、表情やメッセージ、イラストがわかりやすくシンプルなものを推奨しているそうです。
審査で却下されるスタンプの例も教えてくれました。
まずは、背景の透過。PNGでアルファチャンネルを保ったまま保存する必要があります。渡辺氏は、スタンプシミュレーターの使用を推奨していました。
文字だけのスタンプも却下されるそうです。
ものだけのスタンプも却下対象とのこと。とはいえ、必ずしも文字を入れる必要はなく、表情や手のサインで内容が伝わるものであればOKだそうです。
LINEスタンプの最強作成ツール!?Adobe Shape+Adobe Illustrator CC
次の登壇者は、アドビシステムズ(株)の岩本 崇氏と名久井舞子氏。スマホアプリの「Adobe Shape」と、PCアプリの「Adobe Illustrator CC」を利用したLINEスタンプの作成方法の紹介がありました。Adobe Shapeは、iPhoneやAndroid端末で利用できるアプリで、スマホの内蔵カメラで撮影した絵や文字をベクター素材に変換してくれるというもの。
Adobe Shapeを利用することで、紙に手描きで書いたイラストをパスが付いたベクター画像になるので、パソコンで絵を描くのが苦手という人でもLINEスタンプ作成に取り組めますね。
Adobe Shapeで取り込んだ画像は、Adobe Creative Cloudのオンラインストレージにアップロードできるので、Adobe Illustrator CCから直接参照可能です。つまり、下絵を使い慣れたペンで手描きして、iPhoneでそれを撮影すれば、Adobe Illustrator CCでベクター画像化されたデータを開けるわけです。もうなんか、LINEスタンプを作成するために開発されたツールのようです。
使い方は簡単で、Adobe Shapeが備えるカメラ機能で下絵を撮影するだけ。ベクター画像として生成される部分は、黄緑で表示されます。
下部のスライダーで、ベクター化する部分のしきい値も調整できます。
画像で取り込んだあと、不要な部分は指でなぞるだけで消すことが可能です。
もうこの時点で、絵心のないワタクシでさえLINEスタンプを作る気マンマンでしたが、岩本氏からダメ押しのひと言が。「本日、参加者の皆さんにお配りした資料に記載されているURLから、『LINEスタンプ作成用 Illustatorテンプレート』がダウンロードできます」とのこと。このテンプレートを使えばLINEスタンプ作成の作業効率が飛躍的に高まるんです。
ベクター画像ですので、Adobe Illustrator CCでの色塗りも簡単です。パスを調整してカーブの角度を変えるなどイラストの微調整も可能です。
手描き画像では、線と線がきちんとつながっていないケースもあり、塗りつぶし時に色がはみ出してしまうこともありますが、Adobe Illustrator CCではそのあたりの制御も可能なんです。線がつながっていない部分を自動検出可能で、2つの領域を区切るか区切らないかまで設定可能です。ゆるふわ系のイラストでは、それぞれの線がきっちりつながっていると、逆にイメージが崩れてしまうこともあります。この機能を使えば、ゆるふわを維持しながらも塗りつぶし領域はきっちり線引きできるわけです。
LINEスタンプは、1セットは40個、そのほか代表画像とLINEのスタンプ選択画面に使われるアイコン画像の合計42個の画像が必要です。テンプレートを利用することで、Adobe Shapeから42個の画像をAdobe Illustrator CCを取り込んで編集可能です。完成したら42個の別ファイルとして書き出せます。
具体的には、書き出し時に「アートボードごとに作成」を選べばOK。
実は、今回のプレゼンで紹介されていた岩本氏をモチーフにしたイラストは、すでにLINEスタンプとして販売されています。
その発表の途端、岩本氏がスタンプがプリントされたTシャツ姿に。
1億円クリエイターが伝授するLINEスタンプ成功の秘訣
講演のあとは、LINEの渡辺氏とLINEスタンプクリエイターのお二人とのQ&Aセッションとなりました。また、ワタクシはそのあと、クリエイターのお二人に直接取材することもできましたので、その内容をまとめてお伝えします。
Miho Kurosuさんは「メッセージにゃんこ」や「敬語くまさん」で有名なクリエイター。LINEの渡辺氏によると、「文字を多用したスタンプは国を超えていかないので、LINEではあまり作っていない」とのことでしたが、Kurosuさんによると「敬語くまさん」は最高で3位にランクインしたとのこと。
Kurosuさんは、これまで16セットほどのスタンプを制作しています。もともと広告などのデザイナーの仕事をしているので写真やイラストをレイアウトする経験は豊富だったものの、イラストを描くのはLINEスタンプが初めてだったそうです。しかも、自宅にパソコンを持っていなかったそうで、機材の準備とともにイラストの書き方から勉強したとのこと。制作環境は、MacBook Airとワコムのペンタブレット。
スタンプの制作期間は、1セットあたり2週間程度とのこと。まずは、スタンプに入れ込むセリフを決めて、それに併せたイラストを描いていくというスタイルだそうです。本業の合間に少しずつ制作するとのこと。
リリース後の宣伝方法についは、意外にも「特に何もしていない」そうです。「Twitterのフォロワーも少ないので、積極的に告知はしていない」とのこと。ただし、スタンプ作成時には「文字を読みやすくする」ことに気をつけているそうです。LINEクリエイタースタンプは15万セットを超える数がリリースされているので、告知・宣伝も重要ですがやはりキャラクターに魅力があるかどうかが重要のようですね。
なお、代表作である「メッセージにゃんこ」は、iOS/Android版のアプリもリリースされています。
JellyFishDesignOfficeの西川さんは「毒舌スタンプ」などで有名なクリエイター。キュートなアザラシがパンチの効いた毒舌を吐きます。毒舌自体は、自分で考えたもののほかに、Twitterでフォロアーに調査したり、ネット上に上がっているLINEのトーク履歴のキャプチャーなどを参考にしたそうです。実際に毒舌を書いているのは若い女性が多いそうで、スタンプの利用者も若い女性が多いとのこと。「毒舌スタンプ」のセットで最も使われているのが「ばかなの?」というスタンプだったそうです。
西川さんは、これまでに150セットのスタンプを制作しており、制作ペースは半日で1セット。まずは、あざらしなどのキャラクターのイラストを描いて、それに当てはまる言葉を後付けするそうです。もともとイラストを描く仕事をしていたこともあり、下絵を描かずにAdobe Illustratorに直接描いていくそうです。スタンプの制作環境は、Windows Vista搭載マシンとAdobe Illustratorとのこと。LINEスタンプの制作にはそれほどのマシンパワーは必要としないので、自宅に眠っているパソコンを再利用するのもアリかもしれません。
リリース後の宣伝方法についは、スタンプの審査が通ってリリースするとクリエイターズマーケットには数時間後に登録されるそうで、そのタイミングを狙ってTwitterなどで告知するそうです。
多くのスタンプセットを制作している西川さんですが、シリーズものは最低でも1カ月程度のリリース期間を空けるそうです。「中高生のユーザーが多いので、例えばシリーズ3を出したあとに、すぐにシリーズ4を出したりすると批判されることもある」とのこと。中高生のユーザーは、コインをこつこつ貯めてスタンプを購入していることが多く、自分が購入する前に新シリーズが出てしまうと購買意欲の低下につながるそうです。
なお、LINEの渡辺氏からは国境を越えるスタンプの事例として、うら氏が制作した「透明くん」が紹介されました。文字のないシンプルというか、かなりユニークなスタンプですが、台湾で爆発的に売れているとのこと。スタンプの制作はなんと、Windowsに付属する「ペイント」アプリを使って仕事の合間にマウスで描いているそうです。渡辺氏によると、絵の上手い、下手でLINEの審査に落ちることはないそうです。
日本以外でLINEのユーザーが多いのがスペイン語圏で欧州や中南米を含めて2000万人を突破しているとのこと。これからスタンプを作るのであれば、スペイン語圏を狙うのもアリとのことでした。ただし、JellyFishDesignOfficeの西川さんは「LINEのユーザーはやはり日本人が多いので、いまのところは日本人に向けたスタンプを制作していきたい」とのことでした。
渡辺氏によると、スタンプをリリースするタイミングとしてお勧めなのは火曜と木曜日とのこと。この2日に、企業などがリリースするスポンサードスタンプの新作が配信されるため、クリエイターズスタンプの売上も上がるそうです。
LINEスタンプの全クリエイターの平均収益は6万円ほど。Kurosuさん、西川さんによると、1つのキャラクターに注力するのではなく、まずは気軽にいろいろなイラストを描いてみるのがいいそうです。お二人ともランキング上位の人気クリエイターでありながら、現在も本業をこなしつつ息抜きや空いた時間でスタンプ制作を進めているとのこと。
これからスタンプ制作を始めるのであれば、まずはパート感覚で空き時間に取り組んでみるのがいいようです。Adobe Illustratorは月額980円で始められるプランも用意されており、制作環境を整えるハードルも低いです。
(2015.08.03 14:30追記)2015年2月1日以降に申請したスタンプの収益分配率について加筆しました。
■関連サイト
Adobe Illustrator CC
Adobe Shape(iOS/Android)
LINEクリエイターズスタンプ
メッセージにゃんこ
敬語くまさん
毒舌あざらし
ツンデレあざらし3
はたらく、岩本さんの一日
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