ネット上のコミュニケーションは誤解が生じやすい
考えてみてください。
「まじめだね」
「おとなしいね」
「おもしろいね」
「個性的だね」
「マイペースだね」
どれも褒め言葉ともとれますが、人によっては揶揄されているように感じるかもしれません。例えばあなたは、言われてイヤだなと思う言葉はありませんか?
大人三人で、自分が言われて場合によってはイヤだとなと感じるだろう言葉を選択して同時にあげたところ、それぞれが違う言葉をチョイスしていました。
記者は、何も考えてないと思われているようで「マイペースだね」と言う言葉。ほかの人はそれぞれ、馬鹿にされているようで「まじめだね」、疲れているように思われていそうで「おとなしいね」を選んでいました。
このように、言われてイヤだと思う言葉は人によって異なります。
もちろん、同じ言葉でも話すニュアンス、相手との関係性やその時のシチュエーションによって、受けるものは変わってきますが、それがネットによる対面しないコミュニケーションの場合、どういうことが起こるでしょう?
相手の顔が見えないぶん、発した人が意図しなくても、悪意ある言葉とし受け止めてしまうことも有り得ます。それがネットのいじめといったトラブルにつながってくることがあるわけです。
これは、LINEが静岡大学と協同開発した、ワークショップでの活用を目的にした小中学生向け情報モラル教材の改定版で、ネット上での「意図しないトラブルに巻き込まれることを防止する」こと意図してつくられたものです。
ネットを利用する上で「イヤなこと」は人によって異なる
教材ではほかにも、以下の内容がありました。
「すぐに返信がない」
「なかなか会話が終わらない」
「知らないところで自分の話題が出ている」
「話をしているときにケータイ・スマホを触っている」
「自分が一緒の写真を公開される」
これらの事柄から、自分が友だちにされてイヤだと思うことの順位をつけてみてください。
一概にはどれがイヤとは言い切れない面もありますが、あえて順位づけするなら記者の場合、「なかなか会話が終わらない」を一番イヤなことに、反対に「知らないところで自分の話題が出ている」は全然構わない、というふうに並べました。
これに関してもおもしろいことに、説明会に参加した人の回答を見ると三者三様に順位がバラバラになっていました。ネットの利用に関して、何をイヤだと思っているかも、人それぞれで異なってくるようです。
例えば、一緒に映った写真を勝手にネットにあげられたという被害があった場合、写真をあげた人は必ずしも相手を傷つけようとしていたわけではなく、相手が「イヤだ」と思っていることを理解していないというケースもあります。
つまりは、ネットでの誤解をなくすこと。
「相手にとって何が悪口か」、「どういうことがイヤだと思うのか」を考えて理解しようとすることこそが、当たり前のようではありますがLINEやネットでのトラブルの予防につながるわけです。
ネットのトラブルを防ぐためのLINEの啓蒙活動とは
国立大学法人 静岡大学 教育学部 学校教育講座 准教授 塩田真吾氏 |
LINEの月間アクティブユーザー数は世界で約2億500万人に上り、日本では、ひとつのコミュニケーションツールというよりも、あって当たり前のコミュニケーションインフラとして確立しつつあります。
一方で、ネットリテラシーが高くない若年層も多く利用しているため、例えば“LINEいじめ”という言葉をきくように、LINEを介したトラブルが発生する事例もあります。もどかしいことに、LINEいじめやネットのトラブルは、対面しないコミュニケーションだからこそ、意図せずに誤解やコミュニケーションの齟齬から生じことも多々あるわけです。
LINEでは、このようなLINEのトラブル含む、ネットコミュニケーション全般のトラブルを防止するため、2013年1月よりネットリテラシーの啓発活動を行う専門部署を設立して以来、学校や教育機関で年間300回以上の講演活動や、静岡大学との共同による情報モラル教材の開発・ワークショップなどを行っています。
テキストでは、ネットでトラブルがあったときにどう対処するかを考える内容も。 |
今回発表した教材は昨年のものの改訂版で「自分と他人の価値観の違いに再度気づく」というテーマで作成しています。教材は8月末より提供が開始され、費用は無料です。教材やワークショップ授業・講演の申し込みに関してはLINEの特設ページに掲載されています。
よくあるネットリテラシー講座ではトラブルの事例を挙げるだけで終わってしまうところ、LINEの教材では「相手にとって何が悪口か」、「どういうことがイヤだと思うのか」を考え、人それぞれで感じ方が違うということを知り、なぜ違うのかディスカッションをしていくことを目的としているのが特徴です。
されに実際に、ネットのトラブルがあったときにどのように対処するか、といったことも考える実践的な内容になっています。
教材はほかにも、カードとテキストのセットのものから、物語の設定や状況を理解しやすいマンガ形式の物も準備されています。こちらは9月提供予定。
ネット利用実態把握のための10万人規模の全国調査を実施予定
LINEでは、上記のテキストを配布し、ワークショップ、講演活動を継続すると共に、啓発活動の更なる強化およびネットトラブル防止に向けた研究を目的として、東京大学大学院教育学研究科臨床心理学コース下山晴彦研究室と共同で、青少年におけるネット利用実態把握を目的とした10万人規模の全国調査を2015年9月より実施をします。
調査結果は研究者・教育関係者に公開し、今後の様々な青少年のネット利用に関する安心安全な環境整備に関する研究や対策に役立てもらうことを想定しているとのこと。
まずは若者がどのようにLINEやネットを利用しているか、それを把握することがトラブル防止策を打つ第一手としています。
(左から)LINE株式会社 代表取締役社長 出澤剛氏、LINE株式会社 政策企画室 室長 江口清貴氏 |
関連サイト
LINE 安心安全ガイド - LINE ワークショップ
LINE、青少年のネット利用実態把握を目的とした10万人規模の全国調査を実施 | LINE Corporation | ニュース
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