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プライベートクラウドが失敗する理由とは

2015年06月29日 07時00分更新

投資はインフラ構築のためか、それともアプリ開発のためか?(ReadWrite Japan提供記事)

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あなたが作っているのはクラウドだろうか、それともクラウドで動くアプリだろうか?

これは大事な質問であり、多くの企業が過ちを犯している。他所のインフラの上に何かを作るのではなくインフラの構築自体に多くの時間が費やされており、IT部門のインフラを管理しようと試みは企業の足を引っ張るものとなっている。

アジャイルな開発環境はクラウドへの移行の主な理由だが、多くの企業がプライベートクラウド(つまり自社内で保有しているクラウド)を構築するほど、それを利用する時間は減少する事がGartnerのデータにより分かった。

なぜパブリッククラウドに移行するのか

ほとんどの企業でクラウドの価値は認知されているが、CIOの83%は非認可のクラウドの導入に歯止めをかけるのに苦労しているという結果がBrocadeのアンケートにより明らかになっている。ここでいう「非認可の」クラウドというのは、パブリッククラウドの事であり、アマゾンやマイクロソフトなどが提供しているサービスを指す。企業は必要なインフラを全て備えたプライベートクラウドを運営する事が出来ないからだ。

そしてこれら非認可(パブリック)クラウドの普及はあることも意味する。古典的なデータセンターであれ、プライベートクラウドであれ、それらを用いてアジャイルなインフラを構築するという試みは成功を収めていないということだ。

パブリッククラウドの成長(20倍)がプライベートクラウド(3倍)と比べてずっと早いのは驚くことではない。

しかしパブリッククラウドが全て同じような状況にあるわけでもなく、また全てが成長したというわけでもない。Gartnerのアナリスト、リディア・レオンは次の様に指摘する。「幅広いIaaS市場において競争力を維持するために資金源を確保できているプロバイダーは多くない」。Redmonkのアナリスト、ステファン・オグラディがいうように、この様にスケールが大きい市場では大きなプロバイダが小さなプロバイダに好まれるのみならず、大きなプロバイダも別の大きなプロバイダに競り負けることがある。。

例えばアマゾンなどはネットワーク機器も含めて自前のハードウェアを構築している。グーグルやマイクロソフトがそうしているように、自分たちも同じようにしなければ競争に勝ち残れないからだ。

Gartnerによると、2014年は「Infrastructure As A Service」(IaaS)パブリッククラウドの稼動の伸びが、(あらゆる種類の)自社内インフラの稼動の伸びを初めて上回った年になったという。Garterが2015年に行ったCIO向けのアンケートでも、彼らのうち83%がインフラの選択肢としてIaaSクラウドを考えているおり、10%は既にクラウドありきの考えで、IaaSクラウドはインフラ選択肢のデフォルトになっているという。

いったい何を作りたいのか

今現在、いい意味でも(かなり)悪い意味でも、システム処理をプライベートクラウドで行おうとしている動きがある。

中には成功するものもあるだろう。プライベートクラウドは決して無理な選択肢ではない。

しかしその労力のほとんどはクラウド上で何かを実現する為のアプリケーションではなく、クラウドを構築すること自体に費やされる事になる。OpenStackの場合、Gartnerが言うところの「プライベートクラウドが超えなければならない地獄の九圏」を克服するために、とてつもないリソースを費やす事になる。

Gartnerのアナリスト、アラン・ワイトは、最近行われたシドニーの講演で「オープンスタックは科学的なプロジェクトであり、動くものは作れるが成功する為には技術的リソースが必要になる」と説いた。

GarnerがOpenStackの商用的導入例が740しか見当たらないといっている理由はこれによるものなのかもしれない。もしこれが真実ではないとしても、プライベートクラウドのイメージに対する手厳しい批判といえる。

あるコメンテーターはこれについて「OpenStackに対するこういった批判は、プロプライエタリー、オープンソースに限らずどのようなプライベートクラウドソフトについても当てはまる。これらプラットフォームで成功例がほとんどないのは、設計する人間が実際のユースケースの事を考えておらず、結局エンドユーザーにとって何の価値も持たないものを作り上げてしまうためだ。」と述べる。

言い訳としてはなんとも微妙だ。

また同様に「アベレージユーザーにとって、OpenStackも含む全てのクラウドは、誰かが用意してくれるものであり、いわば次の段階のOSのようなものだ」と述べる人もいる。自分のOS環境とプライベートクラウドがごちゃ混ぜになることを喜ぶ人はいないだろう。そこでプライベートクラウド、それも大抵の場合OpenStackを利用するケースを歓迎する人々は、RedHatの様なディストリビューションを好むわけだ。

しかしこの場合でも、AWSほど事は簡単にはいかない。

必要とされるものを提供するべきだ

AWSが勝利を収めてきたのは、まず開発者に焦点を絞った点による。AWSのチーフ、アンディ・ジャシーによれば、この事によりAWSは驚くべき出だしの7年を切ることが出来た。

マイクロソフトやグーグルも同じく開発者に重きを置き、その恩恵にあずかってきた。しかしその他多くは未だにCIOを第一の顧客だと思っており、見当はずれなことをしては失敗している。

OpenStackのコミュニティメンバーは3万人を数えるになった。それはすばらしいことだ。しかし実際に必要にされているのは開発者が容易にアプリケーションを作るためのプロダクトであり、インフラを作るためのものではない。

トップ画像提供:George Thomas

Matt Asay
[原文]


 

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※本記事はReadWrite Japanからの転載です。
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