ドコモ2015年夏モデルは、CPUにオクタコアを採用する製品ばかりでトレンドのひとつになった。よく見てみるともうひとつキーワードが存在する。それは“生体認証”だ。メジャーなものでは指紋センサーがあり、多くのメーカーがロック解除やパスワード入力用に採用している。
だが、指紋センサー搭載スマホの先駆である富士通は、世界で初めて虹彩認証、つまり瞳孔の周りの薄い膜で認証を行なう“Iris Passport”を採用した『ARROWS NX F-04G』を発売した。『ARROWS NX F-04G』の概要については既報の通り。特徴的な部分を後述するとして、まずは虹彩認証機能“Iris Passport”から見ていこう。
↑本体上部にあるアイリスグリーンの赤外線カメラで虹彩認証を実現している。 |
“Iris Passport”は、おもにロック解除やドコモサイト内での認証時に使用する。パターンやパスワードを入力する必要がなく、また生体認証であるため、ショルダーハックの心配もないというわけだ。いくつかテストしてみたところ、裸眼の場合30センチほど離した状態で、極端に明るい場所でなければ認証は非常に高速だ。
感覚としては電源・スリープボタンを押して、画面を見たらロックが解除されるといったものになる。メガネを装着している場合はというと、やや環境光やメガネのレンズコーティングの影響を受けるものの、裸眼のときよりもスマホを近づける形では実用範囲の認識精度だった。
複数の虹彩を登録することが可能なため、裸眼時とメガネ時、ちょっと明るいところといったように、複数登録することで認証精度が上がる。そういった状況下での虹彩を登録してみてのテストが以下の動画だ。
太陽光下、日陰、室内の3パターンで虹彩を登録した状態でのロック解除の様子。メガネについては、屋外の場合レンズの反射があるため動画よりも時間がかかってしまうが、日陰や室内だと裸眼時と大差のない認証速度だった。
↑裸眼のときは、よくスマホを操作する距離、約30センチほど離れた状態か、40センチほど離れていても意外にもあっさりと虹彩を認証する。 |
↑メガネの場合は、なるべく近づけて目を見開く感じのほうが認識率は高め。メガネのレンズに施されたコーティングもあるため、愛用メガネとの相性はどうしても生じてしまう。写真の場合はUVコーティングがある状態だ。 |
虹彩認証はセキュリティー部分にも設定可能で、ロック画面だけでなくセキュリティー設定を行なう部分でのアンロッカーとしても使用できるほか、電話やメール、画像など任意の項目を非表示にできる“プライバシーモード”の設定・解除時にも適用可能。ビジネスとプライベートで使い分けたい場合にもいい。
また“パスワードマネージャー”を使用する場合も、登録したIDとパスワードを使用する前に虹彩認証を適用することができるため、IDとパスワードの入力を一切しないで済む環境も実現可能だ。よりセキュアな状態を考えているのであれば、虹彩認証は優れモノといえるだろう。
↑プライバシーモードをオンにすると、隠す設定にした項目が非表示になる。 |
↑パスワードマネージャーは『Super ATOK ULTIAS(ウルティアス)』の場合、自動で呼び出されます。 |
↑“引用アプリ”で“パスワードマネージャー”を選択すると、虹彩認証と紐付けるIDとパスワードを選択できる。 |
カメラ性能はスマホ選びの指標のひとつになっている。アウトカメラはドコモ2015年夏スマホで最高スペックとなる約2150万画素で、5群5枚レンズ+1/2.4型『Exmor RS for mobile』に加えて、富士通の画像処理エンジン『GRANVU(グランビュー)』といった構成だ。
細かい設定はほとんどなく、構えるだけでオーケーな仕様で写りも上々だ。また、高速オートフォーカスにより、カメラを向けた時点でフォーカスが合っているのも使い勝手がいい。もうひとつ、カメラを構えたときの姿勢を検知するクイックフォーカス機能もあり、よりお手軽に確実に撮影できるようになっている。このあたりは店頭で試してみるとよくわかるはずだ。
↑約2150万画素のアウトカメラ。暖色が強めのLEDフラッシュを採用しており、室内で使用しても雰囲気重視になる。 |
↑800万画素カメラの『iPhone 6 Plus』(左)と約2150万画素の『ARROWS NX F-04G』(右)の撮影データ比較。ディテールの細かさだけでなく、階調の差もよくわかるハズ。特に『ARROWS NX F-04G』はネジのアタマの金属のぬめぬめ感もしっかりと出ている。 |
出先での使い勝手を見ていくと、液晶ディスプレーの輝度が高く解像度もWQHD(2560×1440ピクセル、564ppi)なので、場所を問わず美麗な表示を楽しめる。また、出先となると気になるのが通信速度だ。『ARROWS NX F-04G』はキャリアアグリゲーションだけでなくWi-Fi MIMO(マイモ)にも対応しているほか、WiFiとモバイル通信のマルチコネクションにも対応する。
マルチコネクションはモバイル通信量の削減や通信の高速化に貢献するが、それよりもうれしいのが通信待機が少なくなること。たとえば、接続が不安定なフリーWiFiスポットへの自動接続をオンにしていても、モバイルデータ通信にすぐ切り替わるためハンドシェイクで待たされたり、切断状態になることが少ない。
地味な機能ではあるが、WiFiスポットは接続している利用者が多いと通信速度が論外レベルに遅いことが多々あるので、ふだん使いの視点からすると重要な機能だ。
↑マルチコネクションのイメージ図。電波強度の低いWiFiスポットに接続したり、もしくは接続状況が悪くなった場合は、自動的にモバイルデータ通信に切り替えてくれる。 |
↑マルチコネクションの設定は、オンにするだけでいい。利用頻度の高いアクセスポイントの設定や適用するアプリケーションも設定できる。 |
↑地味に重要な屋外での画面の見やすさ。画像は薄い曇り空で輝度最大の状態。晴天下でも自動的にコントラストを調整してくれるため視認性は良好。 |
↑そのほかの機能を見てみると、フルセグやFMトランスミッター、ハイレゾ音源対応、“Dolby Processing”などにも対応し、いわゆる“全部入り”だ。 |
『ARROWS NX F-04G』は、何かと無骨だった過去の『ARROWS NX』シリーズから脱却し、性能や機能だけでなく、デザインにも気をつかったリフレッシュモデルになったといえる。
目玉である虹彩認証機能“Iris Passport”がことのほか便利でそればかりを見てしまうが、細部のデザインや極まってきた“ヒューマンセントリックエンジン”などの細かい変化は、特に使い勝手の向上に直結している。通信面などは実際に持ち歩かないとわからない部分もあるが、その使い勝手は店頭でのハンズオンで体感できるのでチェックしてほしい。
●おもなスペック
OS Android5.0
CPU MSM8994(オクタコア、2GHz+1.5GHz)
メモリー 3GB
ストレージ 32GB(マイクロSDXC対応)
ディスプレー 5.2インチ液晶(2560×1440ピクセル、564ppi)
カメラ 約2150万画素(インカメラ 約240万画素)
バッテリー 3120mAh
通信 LTE、3G、Bluetooth4.1、FeliCaほか
サイズ/重量 約70(W)×8.8(D)×146(H)mm/約155g
『ARROWS NX F-04G』
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